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フクロウの街 6

2016-03-17 12:21:07 | ヒューマン
山路はドライバーサ―ビスの仕事の方は、健康上の理由で長期休暇を提出しておいた。
とりあえず就職した場所なので、いつ辞めてもいい様熱心にはやらなかった。
だが啓子の紹介で行った会社は何処となく怪しげで、今一信用しきれない気がした為、暫く二股かけて状況をみようと考えていた。
「稔さん、探偵なんて知り合いいないでしょ」
啓子が唐突に話出した。
「いないけど、調べたいひとがいるの?」
「うん、ちょっとね、でも深刻な事じゃないから」
啓子は自分の子供にあまり執着していなかった。
結婚を早くしたかった結果で、離婚した後は母親に預けて遊び歩き、何人もの男友達と付き合ってきた。
だが、年を取るにつれ仕事も相手も遠のき、ハローワ-ク通いを続けるうちに山路と知り合ったわけだが、いつ生活保護を受けてもおかしくない2人では、なにも楽にはなっていない。

土曜日の午後、啓子は子供と出かけ、山路1人でいるとチャイムが鳴った。
仕方なくインターホンに出ると、警察の者ですと言ってきた。
ドアを開けた途端警察手帳を突きつけられ、目つきの鋭い太った男の方が話かけてきた。
「藤中啓子さんはいませんか?」
「出かけていて、帰りは夜になると思いますが」
「失礼ですが、あなたの名前と藤中さんとの関係をお聞かせください」
山路は自分の姓名と、友人関係である旨を伝えた。
「現住所もお願いします」
「何があったのですか?」
「一応関係のある皆さんに伺ってご協力をお願いしています」
背の低い痩せたもう1人の刑事が丁重に話して、足早に去っていった。
19時過ぎに啓子が1人で帰ってきた。
「昼間、刑事が来たよ」
「刑事、なんだって?」
「また来るっていってすぐに帰ったけど」
「そう」
翌日、啓子は用事があると言って朝早く出かけていった。
山路は予定もなかったので、ドライバー仲間の永瀬に連絡を取り、大手町のカフェで会う約束をした。

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