「そうだね、休憩してくる」
寺井は隣室のベッドで横になると酔いが回ってきた。眠くはないのだが体が痺れている感じで、1時間程じっとしていると、
「修さん、お風呂に入ったら」
といって、バスローブ姿の春子が顔を見せた。去年9月に会った時と比べると本当に大人っぽくなり、薔薇の様な香りが漂ってくる。
「君はもう入ってきたの、じゃあ、すぐ入ってくるね」
「お背中お流し致しましょうか、旦那様」
「い、いやいいよ、ここ狭いから」
「あはは、ちょっと言ってみたかったの」
ホテルに入ってからの彼女は、抜けた様にすっきりと明るかった。
寺井がゆっくりシャワーを浴び、ぬるめのお湯でバスタブに浸かって酔いを醒まして出てくると、春子はもうベッドに入っていた。背中を見せているので眠っているかどうか分からない。一番弱くした照明が灯っているだけなので、そっと空いている方のベッドに潜り込んだ。
うとうとしかけた時、春子の泣いている気配を感じ目が覚めた。
「どうしたの、何かあったの?」
「・・・」
「春子さん、話してくれ、何でもいいから、どんな事でも聞くから話してくれよ」
寺井は春子の肩を掴み、こちらを向かせた。
「修さん、修さん」
春子は寺井の胸の中にとびこみ、頭を左右に振っている。
「どうしたの、一人で悩んでないで聞かせてよ」
「違うの、違うの」
「違うって、何が?」
「ううん、いいの、これでいいの」
「これでいいって言ったって、分からないよ、もっと話してよ、怒ったりしないから」
「私良かったのこれで、だからいいの」
寺井がさらに何か聞こうとするのを遮る様に、春子は唇を強く押し付けてきた。
何を迷い、悩んで我慢しているのだろう。
熱い抱擁が繰り返される中でも、頭の片隅に不安が同居し、その為却って最後の炎を燃え上がらせるかの様な行為を促した。
寺井は隣室のベッドで横になると酔いが回ってきた。眠くはないのだが体が痺れている感じで、1時間程じっとしていると、
「修さん、お風呂に入ったら」
といって、バスローブ姿の春子が顔を見せた。去年9月に会った時と比べると本当に大人っぽくなり、薔薇の様な香りが漂ってくる。
「君はもう入ってきたの、じゃあ、すぐ入ってくるね」
「お背中お流し致しましょうか、旦那様」
「い、いやいいよ、ここ狭いから」
「あはは、ちょっと言ってみたかったの」
ホテルに入ってからの彼女は、抜けた様にすっきりと明るかった。
寺井がゆっくりシャワーを浴び、ぬるめのお湯でバスタブに浸かって酔いを醒まして出てくると、春子はもうベッドに入っていた。背中を見せているので眠っているかどうか分からない。一番弱くした照明が灯っているだけなので、そっと空いている方のベッドに潜り込んだ。
うとうとしかけた時、春子の泣いている気配を感じ目が覚めた。
「どうしたの、何かあったの?」
「・・・」
「春子さん、話してくれ、何でもいいから、どんな事でも聞くから話してくれよ」
寺井は春子の肩を掴み、こちらを向かせた。
「修さん、修さん」
春子は寺井の胸の中にとびこみ、頭を左右に振っている。
「どうしたの、一人で悩んでないで聞かせてよ」
「違うの、違うの」
「違うって、何が?」
「ううん、いいの、これでいいの」
「これでいいって言ったって、分からないよ、もっと話してよ、怒ったりしないから」
「私良かったのこれで、だからいいの」
寺井がさらに何か聞こうとするのを遮る様に、春子は唇を強く押し付けてきた。
何を迷い、悩んで我慢しているのだろう。
熱い抱擁が繰り返される中でも、頭の片隅に不安が同居し、その為却って最後の炎を燃え上がらせるかの様な行為を促した。