バンドのリズムが良くなっていく過程は意外に気づかない。
本人たちはそれほど気にしていないのだから。
ハワイ音楽の魅力は「ゆったり感」であると思う。
だからと言って全てが生あったかいぬるま湯のようかといえばそうでもない。
まだ若い頃ある方が、学生バンドのポジション決めの時、私をベースに推してくれた。
たった1日のライブを見て「リズム感がいいから」という理由からだ。
もともと高校の頃ウッドベースを弾いていた私にとってその評価は嬉しかった。
以来、大学でのレギュラーポジションは「ベース」ということになる。
音楽を始める方にしつこく申し上げるのは「リズムの勉強」だ。
いわゆるアマチュアの方がギターを始めて嫌気がさすのは「自己流で覚えたリズム」に起因している。
最初の8小節くらいは、自己流で自己満足できるのだが、2コーラス目くらいになると嫌になってしまう。
それは弾き始めたテンポを維持できない、走ってくる、リズムパターンの陳腐さに嫌気がさす、そのうち演奏するのが恥ずかしくなってくる、てな按配だ。
つまり一小節をきちんと弾く訓練ができていないこと、数十小節を最後までコンスタントに弾く訓練ができていないことに原因する。
次に「周囲の人の音を聴く訓練ができていない」人もいる。
自分の音に執着して周りの音まで神経が及ばない、初心の頃陥りやすい丁度「アガった時の状態」だ。
余裕がないということかもしれない。
譜面を前に置かないと安心できないという恐怖心を持った方もいる。
ほとんど譜面は見ないで弾けるし歌えるのにもかかわらず、前に置いてないと不安でしょうがないという習性だ。
「マカハ・サンズ・オブ・ニイハウ」が出てきた頃のアルバムは、牧歌的なリズムで取り立ててシャープさは感じられなかった。
「ウォッシュタブ・ベース」を前にしたアルバムジャケットから鮮烈なリズムは期待できなかった。
ところが年月を重ねた後で聴いたサウンドがとてつもなくパワフルでリズミカルなのに驚いた。
メンバーが変わったことも影響しているとして、ウッドベースの繰り出すグルーヴ、12弦ギターのリズムストローク、同調しているだけの様に聴こえる6弦ギターも実はバンドをコントロールしているし、何よりIZのウクレレが重要な役割を果たしていた。
晩年のIZが抜けて「マカハサンズ」となった時、IZの存在がいかに大きかったか、歴然とした印象を持った方は多いだろう。
声の質もそしてボーカルというものがどれだけ大きいことか、思い知った。
そしてウクレレで創出するリズムもそれなりの存在感があったのかと、再認識した。
それはソロ活動となった彼の演奏が、水を得た魚のようなイメージ、むしろ強化されたようであった。
バンドのリズムとは、一人で創出できるものではなく複数のミュージシャンが織りなす関係性で出来上がるものだ。
ベースが強化されればバンドのリズムが良くなると勘違いされている方が多いが、一人だけ頑張ってもダメなのがバンドの面白さ。
バンドのグルーヴに身を委ねるということができない人は、こと音楽に関しては向いていないのかもしれない。
ここに音楽の面白さがあると思う。
A Hawaiian Like Me - Performed by Israel "IZ" Kamakawiwo'ole
Rusty Old Steampipes
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