中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

第4回染織実習ー織る

2019年11月10日 | 紬きもの塾’17~’20
第4回「染織実習ー織る」を3名の方で行ないました。
織りは全く初めての方2名と、以前の紬塾で染織実習を体験した方1名でした。
今回もとても良い布が織り上がり、ホッとしています。
いつものように私が織るのと同じレベルのことをしてもらいました。

基礎コースを終えた方(終える方)で、来年度の染織コースを検討中の方は、私の方へお申し出ください。初めての方が優先ですが、2回目の方も席があれば可能です。


まず1番目の方は、繊細な微妙な色遣いで織り上げました。
初めてとは思えない完成度です。織り方も指示通りに織っていました。
布端の耳もきれいです。3人ともきれいですが、杼の置き方を気を付けるようアドバイスしています。耳端は織り物の柱のような大事な部分だからです。
簡単なテキトーな講習をしても意味のない事ですから、本格的に指導します。


機に座る姿勢も素晴らしいです!

以下はご本人の感想文です。↓
[先日は貴重な経験をさせていただきました、
経糸を毛羽立たせない、緯糸の太さから緯糸を入れる傾斜を判断する、足の踏み込み、作業は効率良く、緯糸の入れ方も片手で完結させるなど、気をつけるべきことがたくさんありました。
しかし、自分の糸のことや布のデザインに気を取られ、それらは二の次…いや、頭の外側に吹っ飛んでいました。
風合いとデザイン、どちらも満たしている先生の紬、出来上がるまでの多くの心遣いは、想像する以上の、そのまた上のものでした。
それでも、集中し、織っていく二時間はあっという間で、とても楽しく幸せな時間でした。
もっと、真綿を紡いでいたかったですし、織っていたかったです。ありがとうございました。 N.T ]



↑ 2番めの方は、太さがとても安定したよい糸をつむぎました。織り上がりもしっかりしています。普段はモノトーンの服や着物を着てらっしゃいますが、色糸選びではピンク系の濃淡を選ばれ、間にグレーとブルーの寒色系を配しました。
華やかな布になりました。思いがけないご本人の内面を見るような気もしました。

以下はご本人の感想文です。↓
[自分で真綿から糸をつむぎ、自然の草木の温さのある色を染めて、布を織る。
という貴重な経験をさせていただきました。

一枚の美しい布にはたくさんの愛情とたくさんの手間がかけられているのだということに改めて気づきました。
そして、そんな愛情を掛けて織られた着物は、次世代へ引き継がれ、着物で着られなくなれば、布になり、紐になり、最後は土に還る。その様に永く循環させていく事が大切と中野先生から教えて頂きました。
これから先は、そのことを思って着物を選び、着ていきたいです。

私が実習させて頂いて、一番大変だったのが、木を切り細かくして糸を染めるという工程がとても大変でした。織るという作業はデザイン含めてとても楽しく、ずっとやっていたいと思いました。

糸をつむぐ方や草木染めをする方がどんどん減ってしまうというのもこんなに大変な工程があるからだとつくづく感じましたが、なんとか、自然の恩恵、手作業の工程を次の世代に継承していかれるようにしていきたいです。
今回余った糸は持ち帰らせていただいたのですが糸も愛おしく感じました。 M.M ]


↑ 3番目の方は、織りは2回目です。以前もよく織れていましたが、今回はお祖母さまの羽裏を裂いたものと、自分でつむいだ糸も混ぜながら設計をしました。
筬打ちもしっかり中央を持ち、程よい音で打ち込んでいました。
トップの画像のものですが、色のチョイスも明確です。
柔らかな羽裏を裂いた端っこの毛羽も面白い景色を醸しています。ハサミで切るのとは違います。また、裂き糸だけで織るのとは違う糸の質感のギャップも生きています。
そして、2回目ということで、経糸を見る余裕が生まれたのでしょうか、しきりに経糸と緯糸の重なりによって生まれてくる色や陰影を語っていました。
織り物ならではの醍醐味の気付きがありました。さすが!と思いました。

以下はご本人の感想文です。↓
[実習は今回で二度目でしたが、前回からだいぶ月日が経っていたので、機に座るときはとにかく緊張していました。
真綿から紡ぎ、染めた自分の糸一色と先生の糸二色、祖母の羽裏を裂き糸にしたもの、全部で4種類を使いました。
経糸が濃い色だったので紡ぎ糸と裂き糸と交わってどんな表情になるのか、不安と期待が入り混じりつつ織り進めました。
糸の思いがけない太さにより設計した通りにいかないながら、臨機応変に緯糸を入れていくのもまた楽しいものでした。たった三寸五分の長さでしたが、とにかく集中。拙いながらシャトルのカラカラと滑る音、筬をトントンと打ち込む音。とても贅沢な時間でした。
織りあがった布はとても気に入っています。同色系でまとめたこと、裂き糸に乗った経糸の色。想像以上の表情が生まれました。
箪笥に眠っていた祖母の羽織りがこうして美しい布に生まれ変わった事もとても嬉しくてなりません。
経糸の整経など大変な作業のない、いいとこ取りの実習でしたが、帯一本着尺一枚を織ることがどれだけ体力、精神力を使って成されるかを再確認しました。
身近にある布が大量生産なのかそうでないのかに拘らず、どんな過程を経てきたのか、どんな意味があるのかという事に思いを馳せるきっかけとなりました。
ありがとうございました。 H.J ]





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