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久しぶりに、創作をしました。愚作ですが、お読み頂ければ幸いです。。。
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初夏の日差しの中、
さっきから、白い野球帽の少年が、
象舎の手すりにしがみついています。
「踏みつぶしてよ!やつらを踏みつぶしてよ…」
ヨシオはつぶやきました。
眼は真っ赤に潤んでいます。
ヨシオの服は泥まみれです。
背中が痛みます。お腹も蹴られました。
四つんばいにさせられ、這いつくばいにさせられ、
おもしろがる子供達に踏みつけられました。
気がつくと
ヨシオは、人気のない動物園に来ていたのです。
おうちに帰れば、お母さんに汚した服の事を聞かれるでしょう。。。
でも、本当の事は言えない……
もっとひどいことをされるから。
大きな象の姿がかすんでいます。
白い雲が流れています。風が止みました…
ふと、ヨシオは気がつきました。
「象がボクを見ている…」
確かに、象の眼はヨシオをとらえているようです。
象の力強い、足、胴、鼻を、見ていたヨシオですが、
少しだけほっとした声を漏らしました。
「ほんとにちっちゃな眼だ…」
象の眼は、小さくて頼りのない眼だと思っていました。
でも、よく見ると、
身体以上に力のこもった優しい眼です。
ヨシオは深呼吸をしました。
「ごほっ…」
ぞうさんの臭いを感じて、ちょっとむせてしまいました。
頬がゆるんでいるのを感じます。
「分かってくれないかもしれない、
もっといじめられるかもしれない。
でも…、
帰ったら…お母さんに話そう。」
ヨシオの口から、こんな言葉が自然に出てきました。
空の白い雲が赤みがかっています。
夕焼けになりかけの空…。
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先日、砥部動物園の象の花子が亡くなりました。
享年33才、多くの子供達を見つめていたのでしょうね。
ささやかですが、こんなお話を思い浮かびました。
花子にこの話を捧げます。
安らかに。。。
教えて下さった、のら子さん、ありがとうございます。
とべ動物園