気ままなZOO

行った場所、見たもの、感じた事、気ままにねぇ…… きままなZOOです。旅のお話、動物園、水族館のお話を…

象さんの眼… とべ動物園ハナ子に捧ぐ。。。

2006-07-12 | 創作…

久しぶりに、創作をしました。愚作ですが、お読み頂ければ幸いです。。。

        

初夏の日差しの中、
さっきから、白い野球帽の少年が、
象舎の手すりにしがみついています。


「踏みつぶしてよ!やつらを踏みつぶしてよ…」

ヨシオはつぶやきました。
眼は真っ赤に潤んでいます。

ヨシオの服は泥まみれです。
背中が痛みます。お腹も蹴られました。
四つんばいにさせられ、這いつくばいにさせられ、
おもしろがる子供達に踏みつけられました。


気がつくと
ヨシオは、人気のない動物園に来ていたのです。

おうちに帰れば、お母さんに汚した服の事を聞かれるでしょう。。。
でも、本当の事は言えない……
もっとひどいことをされるから。

大きな象の姿がかすんでいます。


白い雲が流れています。風が止みました…

ふと、ヨシオは気がつきました。
「象がボクを見ている…」

確かに、象の眼はヨシオをとらえているようです。

象の力強い、足、胴、鼻を、見ていたヨシオですが、
少しだけほっとした声を漏らしました。
「ほんとにちっちゃな眼だ…」


象の眼は、小さくて頼りのない眼だと思っていました。
でも、よく見ると、
身体以上に力のこもった優しい眼です。

ヨシオは深呼吸をしました。
「ごほっ…」
ぞうさんの臭いを感じて、ちょっとむせてしまいました。
頬がゆるんでいるのを感じます。


「分かってくれないかもしれない、
もっといじめられるかもしれない。
でも…、
帰ったら…お母さんに話そう。」

ヨシオの口から、こんな言葉が自然に出てきました。


空の白い雲が赤みがかっています。
夕焼けになりかけの空…。



    

先日、砥部動物園の象の花子が亡くなりました。
享年33才、多くの子供達を見つめていたのでしょうね。
ささやかですが、こんなお話を思い浮かびました。
花子にこの話を捧げます。
安らかに。。。

教えて下さった、のら子さん、ありがとうございます。

とべ動物園
コメント (16)
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