毎日新聞より転載
社説:辺野古工事中断 ポーズに終わらせるな
毎日新聞 2015年08月05日 02時31分
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設にかかわる全ての工事が、10日から9月9日までの1カ月間、中断されることになった。その間に政府と県が集中的に協議するという。両者の対立が決定的になるのを回避し、話し合いによる問題解決を目指すことを、ひとまず歓迎したい。政府はこれを政治的なパフォーマンスにせず、沖縄の声に真剣に耳を傾け、解決の糸口を探ってほしい。
政府と県が合意し、菅義偉官房長官と翁長雄志(おなが・たけし)知事が発表した。
これまで政府は、辺野古沖で進めている海底ボーリング調査が終わり次第、この夏にも本体工事に着手する方針だった。合意により、政府は期間中、ボーリング調査を停止し、調査用のスパット台船を撤去する。車両による資材の搬入や、実施設計の協議もやめる。
一方、県はこの間、辺野古埋め立て承認を取り消すなどの新たな法的・行政的手続きはとらない。県が、サンゴ礁の損傷を調べるため米軍に申請していた辺野古沖の臨時制限区域での潜水調査も認められる。
政府が従来のかたくなな姿勢を変え、県との協議に取り組むのは、一歩前進ではある。
だが、菅氏は「政府の考え方を負担軽減を含めて説明したい」と述べ、翁長氏も「辺野古移設は不可能だと申し上げたい」と語る。双方とも主張を曲げるつもりはなく、1カ月でどこまで協議が進展するか疑問だ。
今回の合意は、政府側が県に呼びかけ、水面下で調整を続けてきたという。1カ月に区切った政府の方針転換には、政治的な思惑もにじむ。
この夏は安倍政権にとって難しい政治課題が山積している。
参院では安全保障関連法案を審議中だ。安倍晋三首相が発表する戦後70年談話をめぐり、首相の歴史認識が内外の注目を集めている。鹿児島県の九州電力川内原発の再稼働も迫っている。
安保関連法案の衆院での強行採決などにより、各種世論調査で安倍内閣の支持率は下落し、不支持率が上回る傾向が出ている。
このうえ、辺野古移設問題で翁長氏が埋め立て承認を取り消し、政府が法的な対抗措置を繰り出したうえ本体工事を強行すれば、国と県の全面対立は避けられない。安保関連法案や内閣支持率にさらなる悪影響が出るのは必至だ。政権側にそういう判断が働いても不思議ではない。
政府は、今回の合意をそうした悪影響を回避するための政治的なポーズに終わらせてはならない。工事の中断期間を限定することなく、解決策を見いだすまで県側ととことん話し合うべきだ。
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だが、菅氏は「政府の考え方を負担軽減を含めて説明したい」と述べ、翁長氏も「辺野古移設は不可能だと申し上げたい」と語る。双方とも主張を曲げるつもりはなく、1カ月でどこまで協議が進展するか疑問だ。
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このうえ、辺野古移設問題で翁長氏が埋め立て承認を取り消し、政府が法的な対抗措置を繰り出したうえ本体工事を強行すれば、国と県の全面対立は避けられない。安保関連法案や内閣支持率にさらなる悪影響が出るのは必至だ。政権側にそういう判断が働いても不思議ではない。
政府は、今回の合意をそうした悪影響を回避するための政治的なポーズに終わらせてはならない。工事の中断期間を限定することなく、解決策を見いだすまで県側ととことん話し合うべきだ。
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