昔観た映画で、何かがきっかけでふと思い出す。そんな作品、誰にでもきっとあると思います。細かいことまでは覚えていないけれど、何とも言えない不気味さと、納得いかない結末・・。
主人公は湖で全裸で泳いだ後、ボートに乗った女にオールで強打され、湖底に沈む夢を毎晩みる。ただの夢なのか何なのか・・・。記憶にない女、記憶にない湖岸のホテル、記憶にない建造物・・・。そんなある日、TVの歴史紀行番組を偶然見ていた彼は、夢で見た通りの建造物を見る。TV局に取材場所を問い合わせ、車を走らせ現地に向かい、遂に夢で見た建造物を発見する。「ここだ・・ここで自分は殺されたんだ・・」
そういうはじまりの映画「リーインカーネーション」、1975年の作品です。今ではTVで観る機会もありませんが、「月曜ロードショー」というメジャー枠でも放送された作品です。
公開時のチラシですが、怖そうでしょう?この映画、マニアックなスリラーと片付けるにはちょっと違う。何せ監督が「ナバロンの要塞」のJ・リー・トンプソン。原作・脚本が「赤ちゃんよ永遠に」のマックス・エーリッヒ。音楽が「パットン大戦車軍団」「パピヨン」「スタートレック」等のジェリー・ゴールドスミス!
キャストも「おもいでの夏」で美しき未亡人を演じ、一躍ハリウッドのスターになったジェニファー・オニール。そして主役が最初は「帰って来たウルトラマン」に変身する郷秀樹を演じた団時朗さんか?と思った「ひとりぼっちの青春」のマイケル・サラザン。
豪華スタッフとジェニファー・オニール目当てに、ついつい映画館に足を運んでしまいました。鑑賞後の感想は何とも言えないものを観た・・の一言。
僕は当時大学では英語を専攻していて、リーインカーネーション “reincarnation =転生(輪廻)という意味” なんていう単語、一生使わないだろうと思っていたのですが、お金を出して観た映画のタイトル単語・・忘れようにも忘れられず覚えてしまいました。ところがアメリカで生活中、この単語をよく耳にしました。日本人=仏教と思われるのか、「リーインカーネーションを信じるの?」というような質問をされることが多かったのです。ちなみに僕は「神道」なので、そういうことは信じていません。
2年前にDVDで45年ぶりに鑑賞した感想は・・・ジェニファー・オニールが魅力的で、何とも言えないストーリー。でも、ラストには今回も納得出来ませんでした(笑)
僕の学生時代は、レンタルビデオやレンタルレコードの商売が始まる以前。だから大好きな映画は映画館かテレビで観る、もしくは大学祭での16ミリフィルムの上映会で観ました。1本でも多くの名作を観るには、今のように観たい時に見れる配信も、レンタルも、販売DVDも無かったので、情報誌(Lマガジン)を調べて、ロードショー館だけではなく、2番館や3番館で2本立て、4本立て、果ては5本立てに足を運んだものです。テレビもそうですが、原則こちらの都合で好きな時に観ることは出来ず、映画館での興行日程、テレビの放送日時に僕が合わせないといけない。不便なようですが、今思うと懐かしい時代だし、だからこそ余計に楽しめたのでしょう。
本で紹介される名作映画だけではなく、大好きなジョン・ウェインの作品、皆が知らないマイナー作品などを年間100本以上、劇場及び試写会で片っ端から観ていました。1980年の「13日の日曜日」を皮切りとして、ホラー映画ブームに火がつく前のある日、映画専門誌「スクリーン」の公開映画紹介を見ていると、何とも言えない題名の映画に目が留まりました。「ザ・ダーク」と「悪魔の狂暴パニック」の2本立てです。
観に行ったのは1980年のことだと思います。足を運んだ劇場についてはもう記録が残っていないのですが、大阪・梅田の東映会館の劇場だったような・・・。この2作品は、どちらも専門誌「ロードジョー」には全く載っていない!ここで見逃すと恐らく2度と観ることが出来ない。映画評論家の末席を汚す者としては見逃せない!後に映画&CMプロデューサーとなった映画友達のOと一緒に、楽しみに劇場に足を運びました。ザ・ダークは映画のチラシも作られており、こちらが79年アメリカ公開映画でメイン。もう1本の悪魔の狂暴パニックは76年アメリカ公開の後、日本ではお蔵入りしていた作品でした。
この2本、後に誰に訊いても案の定「知らない」という返事ばかり。ザ・ダークの方は関西ローカルの「サンテレビ」で1度だけ放送されたことがありますが、悪魔の・・の方は二度と目にすることはありませんでした。
ザ・ダークの方は正直言って面白くなかった。ホラーのように宣伝していたのに、変質者の猟奇犯罪かと思いきや、エイリアンの仕業だったという、余りにも唐突な展開の凡作SF映画?でした。
ザ・ダークで半端ない失望感を味わい、トイレ休憩の後にサブの扱いであった悪魔の・・を観たのですが、こちらの方が不気味で面白かった。ブルーサンシャインと呼ばれる麻薬の後遺症が使用数年後に現れ、元ヒッピー達の頭髪が抜け落ちて気が狂って人々を襲うという映画でしたが、払ったお金の元を取り返さないと・・という思いからか、友人Oと「意外と面白かったな~」と鑑賞後に語った記憶があります。
当時、劇場で観た人もほとんどいないであろう2作品が、現在DVDで入手可能であるということが、本日のブログの結論で(笑)流石に驚きます。以前にもDVD化されていましたが、今度は特典が山ほど付いた上にブルーレイ化ですから。カルト作品と言うのはこうやって誕生すると言うか(笑)
友人と2人だけで観たという珍作が、今や値段の高価なカルト作品となり、ブルーレイで観ることが出来る。面白い世の中になったものだと思います。今買わないと、一生観ることが出来ませんよ!
僕の1番大好きな「邦画」は、古いと言われるでしょうが黒澤明監督の「生きる」です。学生時代、黒澤明の作品を片っ端から観たことがあり、その面白さに夢中になりました。名作だらけの中でも、この「生きる」が僕のベスト1です。その気持ちは今も変わりません。
テレビから録画した「生きる」、市販VHSビデオの「生きる」、レーザー・ディスク、DVD、ブルーレイの「生きる」と全ての「生きる」に目を通して来ましたが、昨年2023年3月に発売になった4Kリマスター 4K Ultra HD の「生きる」は、画質・音声共に驚くほど綺麗になりました。
これは今年初めにNHKで放送された「生きる」を撮影したものです。これまでのDVD等の映像は、これと似たり寄ったりの画質でした。
そしてこちらが・・・
僕が今日購入した4Kリマスター 4K Ultra HD の映像です。雪の中、主人公が出来たばかりの公園でブランコをこぐ場面です。動画で観れば、もっと大きな差を感じます。4Kリマスター 4K Ultra HDの方では静かに雪が降っているとハッキリ分かりますが、TVでは雨?と言いたくなるほど暗いのです。
こちらがこれまでのソフト映像。
こちらが4Kリマスター 4K Ultra HDの映像です。
これまでのソフトでは画面の中心から端に行くほど暗くなり、フィルムの傷も多く、音声も聞き取り難かったのですが、今回、本当に家庭で鑑賞できる最高のソフトを手に入れることが出来ました。
「生きる」は1952年の映画。これだけ古い作品が、こんなに綺麗に修復されるとは凄い技術です。今後は「七人の侍」「椿三十郎」を購入し、今はまだ未発売の「赤ひげ」も発売されたら買いたいと思います。
ビル・ナイ主演、ノーベル賞作家カズオ・イシグロ脚本による「生きる」リメイク版「生きる LIVING」が、70年の時を経て2022年に英国で公開されましたが、とても黒澤版とは比較になりませんでした。老若男女を問わず、「生きる」は多くの人に観てもらいたい映画です。4Kリマスター 4K Ultra HDは、対応再生機でないと見ることが出来ませんので、ご注意下さい。ちなみに少し値段の安いブルーレイ版でも、映像の美しさはそんなに変わらないし、これまでで最高の映像美ですよ。
もうすぐ今年も終わり。昨今はそれほどでもありませんが、80年代までは年末年始になるとTVで放送される映画が、昼となく夜となく激増したものでした。TV局の人間の多くが休みを取れるように、生番組を減らすには映画は持って来いの素材だったのです。ノーカット字幕放送・・当時はありがたかったのですが、よく考えれば何の加工もなく放送出来て、局側には好都合!(笑)
普段は観れないB級映画から往年の名作、ヒット作の再放送と、いろんな作品が宝箱をひっくり返したように、この時期に放送されました。僕はそういう作品を録画するために、1本3,000円近いハイグレードのビデオテープを購入するために、アルバイトに精を出したものでした。
今頃になると、そろそろ書店には年末年始のTV番組が紹介される専門誌が並びます。それをチェックしてビデオテープの必要本数を数えたり、実にワクワクして放送が楽しみでした。写真のように当時の本を今見ても、今だからこそ観ることの叶わない作品が目白押しです。
僕はナスターシャ・キンスキーが大好きでしたが、この女優さん、何度も繰り返して観れるような娯楽作品には出演が少なかったのが残念でした。代表作「テス」と言えば、このシーンで決まりです。ノーカット、二か国語(英語+吹替え)での放送。最高でした。
専門誌に付いている、こういうラベルをテープに貼って、ライブラリーを充実させていたものでした。「テス」の日本語吹き替えが収録されたDVD、しかも画像が綺麗なブルーレイが発売されたのは、実に2021年1月。この映画が放送されて僕が録画したのが、1984年12月30日放送・日本テレビ「年忘れ映画劇場」。ブルーレイ発売まで、実に37年も待ったのです!
今は更にそのDVDが廉価版で発売されています。懐かしいな~と思った方は、ポチって年末にご鑑賞下さい。