弁護士任官どどいつ集

弁護士から裁判官になった竹内浩史のどどいつ集

少数意見の ようにも見える「刑事判決 引用」罪

2023年11月21日 18時40分44秒 | 裁判
明日の証言に備えて、岡口基一裁判官に対する2件の最高裁大法廷決定を読み直すことにした。
どの投稿を戒告処分の対象とされたのか、誤解している人も多いので、私自身の頭の整理を兼ねて、要約してみる。

まず、1件目の戒告決定(平成30年10月17日)。
これは飽くまで、飼主が放置した犬の所有権を巡る民事裁判の顛末を報道した朝日の記事を引用したTwitterの投稿に対する処分である。
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88055

次に、2件目の戒告決定(令和2年8月26日)は、裁判所サイトに誤って掲載された性犯罪の刑事判決を引用した投稿に抗議してきた遺族が当局に「洗脳」されている旨記載したFacebookの投稿に対する処分である。
刑事判決を引用した投稿(これは2回目の(書面による)厳重注意(平成30年3月15日)の対象とされていた。)それ自体が対象とされたわけではない。もし、それをも対象とすれば、誤って判決を掲載した裁判官も同様に処分しなければならなかったであろう。

注目されるのは、1件目の戒告決定で、3人の裁判官が、むしろ刑事判決を引用した投稿こそを戒告の対象とすべきであった旨の補足意見を付していることである。逆に言えば、多数意見はそれは戒告には値しないと考えていたことになろう。

ちなみに、1回目の(口頭による)厳重注意(平成28年6月21日)の対象が、有名になった、半裸での白ブリーフ姿や縄で縛られた写真等の投稿であった。

最高裁は、裁判官の懲戒に当たり、分限裁判では足りないと考えれば、罷免訴追請求をすべき義務がある。
そして、2件の戒告決定によっても、民事裁判・刑事裁判のいずれに関する投稿についても、罷免には値しないと判断していたことになる。
それでも、裁判官弾劾裁判所は罷免判決をできるのであろうか。三権分立の観点からしても疑問は深まるばかりだ。

(参照条文)裁判官弾劾法15条3項
最高裁判所は、裁判官について、弾劾による罷免の事由があると思料するときは、訴追委員会に対し罷免の訴追をすべきことを求めなければならない。