オークランド通信

のんびりしたお国柄が気に入りニュージーランド在住27年。仕事、子育て、生活全版にわたって語ります。

その69 シドニーでの草月いけばなイベント 22-06-10

2010-06-29 03:44:29 | 第61回ー70回
シドニーでの草月いけばなイベント

5月18-22日までシドニーにいけばな草月流のイベントに行ってきました。
オーストラリア、ニュージーランドに草月流が創始されてから50年たち、その
記念として50 Golden Years of Sogetsu, Australia and New Zealandが行
われました。
ニュージーランド、オークランドからは私の先生の社中を中心に10名、クライ
ストチャーチから5名、ウェリングトンから10名の参加でした。
地元オーストラリアは、80名ほどの圧倒的に多く、なかにはインド、モスクワ
からの参加者もいました。

草月流の公式サイトのお家元の報告記”おもいでの花束“に、シドニーのイベン
トのことが載っています。

http://www.sogetsu.or.jp/english/index.html


オーストラリア、ニュージーランドの草月流は、50年前、Norman Spanon氏に
よって始められました。
Spanon氏は、池坊も同時にオーストラリアに紹介しました。
草月流の創始者、勅使河原蒼風氏の友人であったSpanon氏は、日本で伝統的な
池坊とモダンな草月流を学び、オーストラリアに戻り日本のいけばなの普及に努
めました。
今私の手元に、Norman Spanon氏の著書“A Guide to Japanese Flower
Arrangement”1964年発行の本があります。
花のサークルのガレージセールで買ったものです。いけばなのテキストとして使
われていたらしく、書き込みがあります。
少し古ぼけているけれど、Spanon氏のいけばなは、明快でとてもわかりやすく、
英語で解説されています。

現在、オーストラリア、ニュージーランドの草月流のグループは、Spanon氏から
直接習った人達や、其の弟子が中心になっています。
当初のメンバーは、80歳を超える人がほとんで、今は世代交代の時期にありま
す。
うちの社中のValも、草月立ち上げのメンバーであることを、最後のディナーの
スライドショウで知りました。


今回は、久しぶりに旦那との旅行でした。
到着のあくる日、5月16日(月)、この日だけは私の予定のない日でした。
あいにくの雨だし、自分達で動き回るのは億劫なので、hop-on &offバスに乗り
ました。シドニーに歴史などが、テープで流されるので車窓から眺めながら、だ
いたいのシドニーのイメージがつかめました。
残りの日は、旦那は、私がでかけている間、友人に会ったりショッピングを楽し
んだようでした。


5月18日(火)はいけばな展でした。
私の先生やニュージーランドからの出展者は2-3日前に到着し、準備されたよ
うです。
オーストラリア地元の方の作品は、みみずくのような大きなバンクシャ、ストレ
ッチア、大きなやしの葉を使ったものが目にとまりました。
お隣の国ながら、ニュージーランドとは生態系がちがうので、新鮮に映ります。
同じオーストラリアでも、州が違うと植物の持ち込みができす、アデレーからの
出展者の方は、自分のイメージにあう材料集めに苦労したと話しておられました。


5月19日(水)午後1時半から2時間にわたり、お家元勅使河原茜氏のデモ
ンストレーションがありました。
入場料OZ$55にもかかわらず、700人収容のホールは満員でした。
国際的なイベントとはいえ、シドニーの花の芸術に興味を持つ層の厚さを感じま
した。ニュージーランドではとてもこんなには集まらないと思います。
シドニーはオセアニアの東京、都会ですね。

デモは20人ほどのスタッフにお家元が指示をだし、ステージいっぱいに立体の
オブジェを構築し、お家元が花を活けていきます。
音楽にあわせ、ブルーとオレンジの板の立体が組まれていきました。
赤みがかったオレンジ色はオーストラリアをイメージしたものだそうです。
デモの間にステージ上、客席の上方でも中型のいけばなのデモもありました。
このようなショウ化されたデモを見るのは初めてで、大変感激しました。

お家元のお手伝いをされていた私の先生によると、前日は、デザインどうりに時
間内にタイミングよく、スタッフが動けるまで何度もリハーサルをされたようで
す。
デモの中で、竹を掛け声をかけて割ると、中からコバルトブルーが竹のふちの白
に映え、会場からはワッという歓声があがりました。
竹の節を抜いて、事前に着色してあったのです。


5月20、21日はいけばなワークショップに参加しました。
80人ほどの参加者の内、日本人は10人ぐらいでした。

午前、午後一つずつの課題で、2日間で4つの課題を学びました。
20日、午前“With Leaves only”、午後は“With Flowers only”でした。
お家元のデモ2点のあと、45分で参加者各自が活けます。
全員が活け終わったところで、お家元が一点づつコメント、アドバイスをして下
さいました。

“With Leaves only”は、葉ものを2種以上使って、いけばなを活けます。
午後の、“With Flowers only”は、花もの2種類以上使い活けます。
普通、いけばなでは花と枝物の組み合わせが多いのですが、これは花だけでいけ
ます。

21日の午前中は、“Simplified Arrangement”(単純化の極)でした。
植物の究極の形を追求して活けます。

午後は、“Colours in the Same Tonal or Colours in Contract”(色をい
ける、対比または同系色)でした。

参加者は、まだテキストも終了していない生徒から、日本、外国で先生としての
経験を積まれた、いわばプロの教師もいて、レベルもさまざまでした。

お家元は、一点づつ丁寧に批評され、自ら手を加えて直して下さいました。
私の作品も直して下さったので、Before、Afterの写真を撮りました。
日本では、お家元から直接指導を受けることはまずないだろうし、きっと前にも
後にもこれっきりの貴重な体験でした。

草月流では、2007年に新しいカリキュラムになり、新しい課題が加わりまし
た。お花をたくさん使い、いろどりも豊かで、現在のお家元の華やかな影響がで
ていると思います。


いけばなという日本の芸術を伝えていくためには、おのおのが研鑽に励むことも
大切ですが、組織を運営し、展覧会をして一般人の感動を伝え、継続していくこ
とが非常に重要です。
芸術は、形や音を表現するものですが、観客、それをささえていく組織の維持は
大変なことだなと思いました。

シドニー草月支部の尽力のおかげで、今回のイベントは参加した私達にも実り多
いものでした。
今月はシドニーで見たこと、ワークショックの他の方のまねなどおけいこでやっ
てます。
こうやってでていくと触発され、イメージがどんどんふくらんで、活けて形にし
なえではいられない気持ちになり、しばらくは楽しめそうです。
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その68 6人目誕生 10-05-10

2010-06-01 10:53:42 | 第61回ー70回
その68      10-05-10

6人目誕生


我が家のお隣に6人目の子供が生まれました。
お隣は、15歳、13歳、11歳の男の子、かなり間が空いて2歳の男の子、1歳
女の子、新生児の男の子です。

これ見て一般の発想は、「ベネフィット(生活保護)、週いくらもらえるんだ
ろう」
お父ちゃんは昼間も家にいて、働いている様子がない。たぶんbenefitもらって
るだろう。
たぶん、週NZ$1000くらいは、政府からもらっていると思います。
月にして$4000.生活感覚で言うと、NZ$1が100円だとして、月40万
円の収入になります。
そしたらまともに働くより、ベネフィット貰ってるほうが得だよね。


日本で生活保護を受けれいたらかなり肩身の狭い思いをするだろうけど、ここの
人達は堂々と暮らしてます。


最近お隣は、免許を取った長男のために中古車を買ったし、車3台になりました。
上の男の子3人は柔道を習っているらしく、夕方胴衣を来てでかけていきます。
音楽好きでドラムとかもあるし。
結構豊かな暮らしぶりです。

次々に子供を作って、ベネフィットを増やしているという感じ。
ちなみに、ニュージーランドでは出産にかかる費用、検査、定期健診も含めて
無料です。
子供が18歳になるまで、子供分のベネフィットを受け取ることができます。


オークランドで子供二人の家庭のD.P.B(Domestic Purposes Benefit)は、
平均週$580です.
2009年の平均収入は一人あたり週$538.
この数字見てもわかるように、まともに働くほうが収入が少ないのです。

D.P.Bの世帯は家賃などの補助を受けられ、母親はただでポリテックなどの
コースを受講できます。


今の法律だと、D.P.B.貰っているシングルペアレントは、一番下の子供が
14歳になるまで働かなくてもいいことになってます。
ニュージーランドでは、14歳以下の子供を家でお留守番させるのは法律違反です。
つまり、学校とか行ってる時間以外はだれか大人がついていなければならないと
いう訳です。
それで末の子が14歳になるまでは、無理して働かなくてもいいよという感じで
す。


私達が日本にいたとき、娘は小学一年生からかぎっ子でした。
学童保育から帰り、私がもどるまでご飯たいて留守番してました。
最近、日本では子供だけで留守番してて火事やら事故にあうニュースを耳にしま
すよね。ここではそういうことはありません。


ちょっと話がそれましたが、最近Social Development & Employment
Minister(福祉と雇用大臣)の Paula Bennettは、D.P.Bの改革案を打ち
出しました。
彼女自身もソローマザーで、D.P.Bを受け取って時期もあったそうです。

それは一番下の子供が6歳、つまり小学校にあがったら、パートタイムなどの仕
事につきなさい、ということです。
これまでの14歳が6歳に引き上げられるのですから、福祉の大改革です。

しかし、学歴も技術もない女性が、パートタイムでかせげるお金はわずかです。
子供が学校へ行ってるあいだ、9時ー5時の仕事は限られてますしね。


離婚とかで困った女性を助けるためにはD.P.Bはいいけど、働き盛りを家
でのんびり暮らし、キャリアを積み上げる努力をおこたっている気がします。
親がD.P.Bの家庭は、子供もD.P.Dをもらうことになりやすいそうです。
今のナショナルの政府はこの悪循環を断ち切るため、改革を試みているのだと
思います。

D.P.B受給者の44%はマオリ(NZの先住民族)で、全体の90%は女性
です。

私達は、1985年にビルマから日本に帰った時に、子供二人を保育所に預けて
働き始めました。
その時、前年の日本の収入がないということで、保育料がほとんとただで助かり
ました。
日本の公立の保育料金は、世帯の収入に応じているし、片親が亡くなったりして
働かなくてはならなくなった場合、緊急で保育所は子供を受け入れてくれます。
学童保育も月5000円くらいで、土曜日、夏休みなどもずっと開所してました。


それに比べニュージーランドの保育環境はまだまだ立ち遅れていると思います。
孫の保育料は週$250、月$1000です。
学童保育は一時間$8、休み中のホリデープログラムは民営で日ごとにアクティ
ビティー選べるのはいいけど、高い日は一日$60もします。
低所得家庭は、週20時間まで保育料の免除が受けられ、ナニー、学童保育に支
払ったお金は税金の還付の対象になりますが、それでも高くつきます。
両親がある程度いいお給料もらってないと、保育所に入れられません。

そしたら頑張って働くより、ソローマザーになって家で子供を見て、ベネフィッ
トもらっているほうが、経済的にも恵まれ楽ということになります。

新改革についても、6年ごとに子供を生めばD.P.Bがもらえ続けではないか
と悪評する人もあります。


こんな小さな国でどこからそういった財源がでてくるのか、いつも不思議です。
ここは、まともに働いている人の税金は高く、平均33%、消費税は12.5%
と税金が高いのでそれでまかなえるのかもしれません。消費税も近々15%に値
上げされるようです。


日本の生活保護制度はあまりに厳しく、人道的にどうかと思われこともあります。
前日、Paula BennettとD.P.Bの母親達の対談をテレビでやってました。
ある母親曰く、子供が帰宅した時に家にいてあげたい、14歳までは家で子供をみ
たいと言ってました。

私は、子供達が小さい頃、土日も出勤、息子が熱をだしても休めなくて、友人に
面倒見てもらったこともありました。
今の日本の働くお母さんも、たいして私と状況はかわらないと思います。
こういった考えが体に染み付いているせいかもしれないけれど、ニュージーラン
ドの制度はなんとも生ぬるいです。


ちょっと今のやりかたはおかしいと言い始めた、ニュージーランド福祉の改革の
ゆくえを見守っていきたいと思います。


コメント (1)
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