風録blog

風のごとく過ぎ去る日々を録したい

ダントツ経営

2011-05-21 16:40:55 | Weblog
書名:ダントツ経営
著者:坂根正弘
発行所:日本経済新聞出版社
コマツの会長が書いた本である。
書名からは何しろ競争相手が追い付けないような商品を開発しろ、と檄を飛ばしているという感じがあるが内容は多岐にわたっている。
①建設機械の売れ行きを見ていると次の世界の図式がわかる
②基幹部品は日本で作り、それ以外は大幅に現地に製造、販売を任せる
③自前主義を排し、ソフトでもパッケージで間に合うものはパッケージにし、差異化のためのソフトだけは自前で作る。
④建設機械にGPS受信装置を取り付け、なおかつ機械の稼働状態もロギングして、それをセンターに送るようにすることにより、防犯、使用地域特定、稼働率、部品補給予測などに役立てている。
⑤変動費と固定費を見抜き、固定費の削減に努める。
⑥コマツウエイを策定し、気持ちを合わせてゆく
⑦やはり業界の1位、2位をとれる商品を目指す。その場合でも、環境、安全、ICTを盛り込む。

特に④のGPSの話は有名な話ではあるが、機械のライフログを取得することにより、マーケティング情報にも役立たせていることがわかる。たとえば、リーマンショック後、建設機械の稼働率を見ているとビル建設業界などの復旧状況がわかるらしい。また建設機械の代理店が持つ在庫の把握にもこのログを活用している。ライフログというのは、機械でも人間でもいろんなものに活用できる。
⑦のダントツ経営では、著者が「社長が持つ大きな権限と責任は、犠牲にするところをトップダウンで指示できることです。どこを犠牲にしていいのかを言わないと、投資資源が生まれてきません」と書いている。私はこの文言がこの本の中では一番素晴らしいと思った。
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日本の国家債務

2011-05-06 11:33:29 | Weblog
ジャック・アタリの本を読んだ。
書名:国家債務危機
著者:ジャック・アタリ
発行所:作品社

やっぱり、ヨーロッパにはこういう人、すなわち、歴史家であり、思想家であり、経済学者であり、戦略家であるような一種の天才がいるんだなあ、と思った。
彼自身はフランス人であり、サルコジ仏大統領に依頼されて、諮問委員会(アタリ政策委員会)でフランスの採るべき道について答申している。この本はその答申の前に書かれた種本であるが、国家債務(公的債務)の歴史から、未来に至るまでが書かれている。
当たり前であるが、戦争が国家債務に大きなダメージを与えること、特に近年の戦利品の薄い戦争では勝ったほうまでも債務が膨張することがわかる。
この本の最大のポイントは、国家債務が悪いわけではなく、またGDPの何パーセント以下なら良いということもなく、国家債務が未来の(次世代の)発展に寄与する投資なら、将来は国の成長によって投資が回収されるから問題はない、ということだろう。では今、各国が抱えている国家債務がそういう健全な債務かどうか、今をキープするだけで未来につながらない債務ではないか、ということである。
アタリに言わせれば、日本はGDP比で200%の国家債務を持ち、世界最悪に近い状態にあるが、現時点は悪いポイントで均衡している。それは、長期金利が低く、国債の95%が国内で消費されているため、自国内で国家債務がファイナンスされているためであるとしている。しかし、今のような少子高齢化では、早晩日本の貯蓄量に限界が来て自国内でファイナンスできなくなる。その時点で海外にファイナンス先を見つけようとしても高い金利をつけないと買ってくれない可能性があるということのようだ。
そういう意味では、私はアタリが言うように日本の国家債務が未来の投資につながるものになっているかが最大課題だと思う。現時点では自信が全くない。
アタリの言っていることはすばらしいが、若干強引なところもある。たとえば、ギリシャなどの債務を救うためには、EU全体の強さ/豊かさを背景にして、EUとして借金をし、EUとギリシャとの間で中期的に解決してゆくというバッファ方式を提案しているが、それはEU自身がさらにもっとひとつの国に近づくということであり、とことん行くことになるからである。
あと、やはりアタリはヨーロッパ人であり、フランス人だ。米国と日本に対しては、対立意識?、競争意識?がにじみ出ている。これほど知的な人でもそうなってしまっている。これは文化だろうか、個性だろうか。
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