風録blog

風のごとく過ぎ去る日々を録したい

世界を知る力

2011-11-19 14:22:10 | Weblog
題名:世界を知る力
著者:寺島 実郎
発行所:PHP研究所

たまたま、この本を読んだ。
著者の言いたいことは本の最後に書いている以下に尽きるような気がする。
「世界を知れば知るほど、世界が不条理に満ちていることが見えてくるはずだ。その不条理に対する怒り、問題意識が、戦慄するがごとく胸に込み上げてくるようでなければ、人間としての知とは呼べない。」
そしてこの本では次のことを説いている。
日本人は戦後65年間に、世界に対して固定観念を持ってしまっている。戦後65年は、人間が生きたあるいは人間が作って来た世界の時間軸の中では一瞬に過ぎない。固定観念を捨てて、長時間にわたる歴史観を持ちつつ、大空から世界を見渡す「鳥の目」と、しっかり地面を見つめる「虫の目」の両方を持たねばならない。
そのためには、自らが「情報」を得る努力をすることと、その情報を出掛けて行って「フィールドワーク」で確認すことが必要だと書かれている。
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スマートパワー

2011-11-06 12:48:02 | Weblog
本「スマート・パワー」
著者:ジョゼフ・S・ナイ
翻訳:山岡洋一、藤島京子

あの有名なナイ教授が書いた最新書である。まず、世界政治の現状については、3層で考えている。
彼はこれを3次元のチェス盤と呼んでおり、最上位層は軍事力の層であり、力は米国に集中している。中層にあるのは経済力の層であり、これは多極構造になっていて、米国、EU、日本、BRICsに力が分散している。最下層は地球環境問題、犯罪、テロ、伝染病などで多国間関係の世界の中で力が分散している。これらの層を同時に見ながら「力」というものを考えて行こうということである。
力には、ハードパワーとソフトパワーがあると定義している。ハードパワーは押す力、ソフトパワーは引き寄せる力であり、具体的にはハードパワーは強制、脅し、ソフトパワーは国としての魅力、説得などである。今回の「スマートパワー」というのは、このハードパワーとソフトパワーをいかに組み合わせて、有効な力にするかということを議論している。
スマートパワー戦略では、国として以下の5つを順番に解いていくことが肝要であるらしい。
1.どのような目標や結果が好ましいか
2.どのような資源がどのような状況で利用できるか
3.影響力行使の標的である相手側はどのような立場にあり、何を好んでいるのか。
4.力の行動のうち成功の可能性がもっとも高いのはどの形態の行動なのか
5.成功の確率はどれだけあるか
また、彼の主張のポイントのひとつは、21世紀に入ってからは、力の移行と力の拡散が進んでいるという主張である。力の移行に関しては中国が強くなっているが、21世紀ちゅう、少なくとも21世紀前半は米国の力は揺るがない、問題は中国が中華思想として自信過剰になることである、と言っている。また力の分散については、金融危機、組織犯罪、大量移民、地球温暖化、伝染病、国際テロなどで無極状態になっており、これに対しては情報革命によりネットワーク型の組織で対応してゆく、としている。
彼の言っていることの中でおもしろいのは以下。
・サイバー防衛戦では、攻撃と防御の境界が曖昧になり、文民統制を規定した交戦規定の確立が難しくなる。
・アメリカでの移民の受け入れは、国内に多元的な文化を作り、他国との関係を深める道になっている。
・優秀な若者が政府機関への勤務を拒否するようになれば、政府の能力は低下し、政府に対する国民の不満がさらに高まるだろう。
・政府の信頼感がとりわけ重要になるのは、明るい未来のために犠牲を払うよう国民が求められる時である。
・小国はスマートパワー戦略に熟達していることが少なくない。例えばシンガポールやスイスやかたーるなど。
・国連気候変動枠組み条約締結国会議(UNFCCC)のように200近い国が参加する会議は収拾がつかない。これからは温室効果ガスの排出量で世界の80%を占める十か国ほどの会議になるだろう。要は一番関係する国々が集まって議論する「可変参加国方式」になるだろう。

いずれにせよ、これだけ米国の力を信じている学者もいないだろう。日本については、ソフトパワーを持っているが、排外主義の姿勢とその政策によって力が弱まっていると書いている。
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