書名:どうすれば「人」を創れるか
著者:石黒 浩
発行所:新潮社
ケータイOSのアンドロイドではなく、人間酷似型ロボットのアンドロイドの話である。
阪大基礎工の教授である筆者が、自分をモデル(自分に生き写し)にしたロボットを作ったり、若い女性のロボットを作ったりしている。なぜ人間酷似型ロボットを開発するかと言うと、(勿論本物の)人間は、人間にかかわる能力を本質的に持っていて、今前にいるのが人間であれば安心すると特性を持っているから、ということらしい。その意味でこの本はロボット工学の本ではなく、人間はアンドロイドにあった時にどういう反応をするのか、アンドロイドを恋することができるのか、自分そっくりのアンドロイドが存在した場合そのアンドロイドにどういう感情を持つのか、などがテーマとなっている。従って筆者が研究しているのはロボット工学ではなく、ロボット学であると表明されている。
ではそのアンドロイドは本当に実現されているかというと、技術的に精緻にロボットの外側(皮膚や姿かたち)は出来上がっているが、動きは上半身のみであり、サーボモータや空気コンプレッサーで動かしている。最大の特徴は音声認識や音声合成は使わずに、人間が質問すると、それを答えるのは人間である点。要はアンドロイドに携帯電話を埋め込み、質問されたら携帯to携帯で遠隔に声が飛び、答えも本物の人間が携帯to携帯で、アンドロイドの中の携帯から音声(答え)が出てくる仕掛けである。実際にはコントロールセンター側にはパソコンがあり、顔の動きや上半身の動きをコマンドで動作させつつ、パソコンのマイクに向かって受け答えをする形になっている。そこには工学的な割り切りもあるが、人間が人間として認めてもらうためには、音声認識や音声合成ではなく、実際の人間が受け答えをしないと「不気味さ」が生じ、親しみを感じてもらえないということであった。こうなるとTV電話などとあまり変わりがないが、遠隔の人間がTVという枠画面の中をみるか、アンドロイドを遠方に派遣しそれをこちらからコントロールして、遠方に本人がいるようにごまかすかの違いになる。それをオーストリアに自分自身のアンドロイドを送り、日本からコントロールして本人の肉声で受け答えして実験を行ったりしている。
この本を読んでいると、アンドロイドを創ることと、人間の心理面を理解することが密接に関係していることに気づかされる。そういう意味では、人間型ロボットを実用化できる企業は、商品面から人間を理解しようと努力してきた会社ではないだろうか。例えば使いやすい家電製品をとことん追求した会社とか、化粧品という側面から人間心理を勉強してきた会社ではないだろうか。
著者:石黒 浩
発行所:新潮社
ケータイOSのアンドロイドではなく、人間酷似型ロボットのアンドロイドの話である。
阪大基礎工の教授である筆者が、自分をモデル(自分に生き写し)にしたロボットを作ったり、若い女性のロボットを作ったりしている。なぜ人間酷似型ロボットを開発するかと言うと、(勿論本物の)人間は、人間にかかわる能力を本質的に持っていて、今前にいるのが人間であれば安心すると特性を持っているから、ということらしい。その意味でこの本はロボット工学の本ではなく、人間はアンドロイドにあった時にどういう反応をするのか、アンドロイドを恋することができるのか、自分そっくりのアンドロイドが存在した場合そのアンドロイドにどういう感情を持つのか、などがテーマとなっている。従って筆者が研究しているのはロボット工学ではなく、ロボット学であると表明されている。
ではそのアンドロイドは本当に実現されているかというと、技術的に精緻にロボットの外側(皮膚や姿かたち)は出来上がっているが、動きは上半身のみであり、サーボモータや空気コンプレッサーで動かしている。最大の特徴は音声認識や音声合成は使わずに、人間が質問すると、それを答えるのは人間である点。要はアンドロイドに携帯電話を埋め込み、質問されたら携帯to携帯で遠隔に声が飛び、答えも本物の人間が携帯to携帯で、アンドロイドの中の携帯から音声(答え)が出てくる仕掛けである。実際にはコントロールセンター側にはパソコンがあり、顔の動きや上半身の動きをコマンドで動作させつつ、パソコンのマイクに向かって受け答えをする形になっている。そこには工学的な割り切りもあるが、人間が人間として認めてもらうためには、音声認識や音声合成ではなく、実際の人間が受け答えをしないと「不気味さ」が生じ、親しみを感じてもらえないということであった。こうなるとTV電話などとあまり変わりがないが、遠隔の人間がTVという枠画面の中をみるか、アンドロイドを遠方に派遣しそれをこちらからコントロールして、遠方に本人がいるようにごまかすかの違いになる。それをオーストリアに自分自身のアンドロイドを送り、日本からコントロールして本人の肉声で受け答えして実験を行ったりしている。
この本を読んでいると、アンドロイドを創ることと、人間の心理面を理解することが密接に関係していることに気づかされる。そういう意味では、人間型ロボットを実用化できる企業は、商品面から人間を理解しようと努力してきた会社ではないだろうか。例えば使いやすい家電製品をとことん追求した会社とか、化粧品という側面から人間心理を勉強してきた会社ではないだろうか。