水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

ユーモア時代小説 月影兵馬事件帖 [スペシャル]  (23)枉神{まがかみ} <再掲>

2022年11月19日 00時00分00秒 | #小説

 兵馬は一瞬、これは聞き覚えがある声だぞ…と思った。
「あなた様は…もしかすると?」
『ホッホッホッ…なかなか冴(さ)えるのう、そなたは。さよう、姉上のお叱(しか)りを頂戴し、天界から追放された須佐之男よっ!』
「哀れなお身の上なのでございますね?」
『ホッホッホッ…こやつ、言いよるわっ、ホッホッホッ…』
「するとやはり、あなた様が人変わりの一件に関わっておられるのでございますか?」
『人変わり? おお、伊豆屋の与之助のことか。それは儂(わし)の仕業(しわざ)ではない。これでも元天界の神じゃぞっ!』
 兵馬は自分で神と言うのもいかがなものか…とは思ったが、祟(たた)りを恐れてそうとも言えず、聞き流した。
「あなた様ではないということになりますと?」
『そなたには、以前からいろいろと関わりがある故(ゆえ)、助け舟を出してやろう。それは枉神(まがかみ)の仕業じゃ。…なんとか言っておったのう。そやつの仕業に相違ない』
「そやつ、とは?」
『ナントカ、カントカ申しておったが、…今は思い出せぬ。かなり出来の悪い神であることには相違ない。憑(つ)いて人変わりをさせる悪さをしおる故(ゆえ)にのう』
「お狐様でございますか?」
『いや、そうではない…。これも何かの縁(えにし)。この次、お前の前へ現れるよう、そやつに唾(つば)をつけておいてやろう。直(じか)に訊(たず)ねるがよい。おっ! もうこのような刻限か…』
「時刻までお分かりになるのでございますか?」
『むろんじゃ! 儂はこれでも神じゃぞっ!』
 自分を神、神とよく言うお方だ…とは思ったが、枉神とか言う得体の知れないモノには何としても会わねばならない…とまた思い返し、兵馬は言い返さず、ふたたび聞き流した。
「はあ、それはもう十分に分かっております。なんとか、その枉神とかに会えるよう、お取り計らいのほどを…」
『分かった! 後日、ふたたび現れ、会える期日などを伝えよう…』
 その後、荘厳な声は消え去り、何もなかったような静けさが戻った。兵馬は頻発(ひんぱつ)する事件ともつかぬ一件の足掛かりを、ようやく掴(つか)んだのである。

             続


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めげないユーモア短編集 (48)野党

2022年11月19日 00時00分00秒 | #小説

 家の前を○○党の選挙カーが通ったから・・ということでもないが、今日は野党という政治集団について少し語ることにしたい。例によって、語って欲しくない…とお思いの諸氏は、子供さんならソフトクリームとお菓子、大人のお方は冷酒と肴(さかな)などを食しながらオリンピック中継でも観ていただければ、それでいい。今日のお話はまあ、その程度の馬鹿話だ。^^
 二人の論客がテレビで政治討論をしている。
「いやいやいや、野党なんて呼べる政党が、我が国にありますかっ!」
「いろいろあるじゃないですかっ!」
「いろいろっ!? 野党がそんなにたくさんある訳がないっ! 野党というのは、いつでも与党に代わって政治を行える、政権担当能力を具備し、国民の負託に応(こた)えられる政党ですよっ!」
「と、いうことはですよっ! 我が国には政権与党しかないとっ!?」
「ええ、はっきり言わせてもらいますが、ありませんねっ! すべて政策集団化しています。自らの集団だけで政権をうち立てる議席がないっ! 政権を打ち立てる議席がないということは、すなわち、野党ではなく政策集団ということです。だいいち、政策集団は離合集散を繰り返しますが、デモクラシーが熟した党という組織は、決して分裂などしませんっ!!」
「…そういや、アメリカ、イギリスでは、そういう話、聞きませんね…」
「でしょ! あなた、よく分かってるじゃありませんかっ!」
「はい…」
「めげないで、そういう政党を作るのが、政治家に与えられた使命なんですよっ!」
「はい…」
 いつの間にか論客の一人は論客のもう一人を取り込み、統一会派を超越した野党を結成していた。
 野党の結成には、簡単には壊(こわ)れない、壊せない・・というめげない影の努力が必要なのです。^^

 ※ 考え方には個人差があります。^^

                   完


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