本日4月20日は、薬師寺東塔が建立された日で、ローマ・ラ・サピエンツァ大学が設立された日で、織田信長と石山本願寺の和議が成立して顕如が石山を退去した日で、豊臣秀吉が京都・醍醐寺でお花見を行った日で、オリバー・クロムウェルがクーデターを起こしてランプ議会を解散させた日で、ロシア使節プチャーチンが前年に続いて再び長崎に来航した日で、第7回夏季オリンピック・アントワープ大会が開幕した日で、国際連盟が解散した日で、韓国の大韓航空機が誤ってソ連の領空を侵犯したためにソ連防空軍機の攻撃を受けた日で、自然破壊と環境破壊に対するキャンペーン記事を掲載していた朝日新聞が夕刊に自分達でK・Yと傷をつけた珊瑚の写真を撮って「沖縄県西表島のサンゴに『K・Y』の落書きがされている」という捏造記事を掲載した日であります。
本日の倉敷は晴れでありました。
予想では最高気温は二十六度、最低気温は十度です。
明日も予報では倉敷は晴れなっております。
「では皆さん。さういふふうに又しても私達の御花見の宴を欠席した無礼な狐さんに如何なる制裁を与えるべきか何かご存知ですか?」
知人は卓上に置かれた映寫機で壁に映し出されている狐の姿を指さしながら皆に問ひをかけました。
一人の友人が手をあげました。
狐も手をあげやうとして急いで其の儘止めました。
さうか。今宵は私を糾弾する夜會であつたか。
知人は知人が主催する宴を狐に無視されて御怒りのやう。
狐は知人や友人達が自分をどのやうに責め立てるのかどきどきわくわくする氣持がするのでした。
ところが知人は早くも狐のその様子を見附けたのでした。
「狐さん。あなたは分かつてゐるのでせう?」
狐は勢いよく立ち上がりましたが、立つてみるとはつきりとそれを答へることができないのでした。
狐の友人のうちの一人がふりかへつて狐を見てくすつと嗤ひました。
狐はもうどぎまぎしてまつ赫になつてしまひました。
知人はまた云ひました。
「あなたは何か期待していますね? それは大體何でせう?」
そんなことは人前では云えないと狐は思ひ、今度も直ぐに答へることができませんでした。
知人はしばらく困つたやうすでしたが、目を狐の友人達に向けて「では貴方が答へなさい」と友人の一人を指名しました。
するとその狐の友人ももぢもぢ立ち上つたままやはり答へができませんでした。
知人は意外なやうにしばらくぢつと狐の友人を見てゐましたが、急いで「では。よし」と云ひながら、壁に映し出されている狐の姿を指しました。
「あなたは今夜、唯、責められたひ。狐さん、さうでせう?」
狐はまつ赫になって頷きました。
けれどもいつか狐の眼の中には涙がいつぱいになりました。
さうだ。私は今夜、惟、責められたひのだ。
それは狐が内緒にしてゐる心の中に潜んでゐるいやらしい願望なのだ。
いやらしい。
さう考へるとたまらないほど自分があはれなやうな氣がするのでした。
知人はまた云ひました。
「狐さん。あなたが今宵、責められたひのならばお仕置きとして放置し無視します」
放置……。無視……。
「皆さんも狐さんには触れてはいけません。今宵は狐さんは放置です。よいですね?」
ごめんなさいごめんなさい。いやらしいことを想像してしまってごめんなさい。宴を欠席してごめんなさい。もうしません。
「反省していますか?」
反省していますごめんなさい。お情けをどうかお情けを。
「却下します。あなたは放置です」
嗚呼。どうかお情けを。後生ですから。
「では今日の集会はここまでです」
知人のお宅の中はしばらく片付けの音がいつぱいでしたが、まもなく皆はきちんと禮をして知人のお家を出たのでありました。