舞い上がる。

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ちひろBLUESこと熊谷千尋のブログです。

「会田誠展 ま、Still Aliveってこーゆーこと」読みました。

2019-05-29 21:24:37 | Weblog
最近買った本を色々読んでいるので、順番に感想を書いています。





「会田誠展 ま、Still Aliveってこーゆーこと」



僕はこの本を5/11(土)、12(日)に開催された古町どんどんのフリーマーケットで購入しまして、そこらへんの経緯や、僕の会田誠さんへの気持ちは前に書きました。
「会田誠 展 ま、Still Aliveってこーゆーこと」の画集をゲットだぜ!



この本は、2015年に長岡の新潟県立近代美術館で開催された「会田誠展 ま、Still Aliveってこーゆーこと」の作品集です。
僕もこの作品展には2回も行ったので、もう一度作品を振り返るような気持ちで楽しく読むことができました。

また、展示会にも書かれていた、新潟県立近代美術館の徳永館長と、会田誠さんからのごあいさつの言葉も掲載されています。
徳永館長の言葉は、会田誠さんの作品の深い部分まで辿り着ける人が少なく、表面的な部分だけで批判が起こる現実などにも言及しています。

そして、会田誠さんの言葉には、新潟で生まれ育った会田さんが(家も近所だし高校の先輩でもあるので親近感が個人的にあります)、新潟の県民性(過剰に謙虚で主張が弱く長いものに巻かれやすいみたいなことだと思います)に反発して東京に出てきた経緯が書いてあり、同じ新潟県民として共感する部分がかなりありました。
ちなみに、会田さんがそういう複雑な想いを込めて作品展のタイトルを当初「越後の恥」にしたかったけれど、美術館との話し合いで却下されたという話には笑ってしまいました。

まあそんな訳で、理解が難しく、故に今の日本では美術館の中でさえ扱うのが難しい会田誠さんの作品展が、新潟で実現したということで、この本ではすべての作品と一緒に会田さんの解説や、作品を理解するためのヒントなどが書かれています。
また、それでも過激すぎると判断されたものは(代表例は「犬」など)展示されていないということですが、あらためて会田誠さんという美術家に対して理解を深めるためにすごくいい作品展だったんだなと思いました。

そして何より、この本の最大の特徴として、新潟県立近代美術館の学芸課長の蒔田さんの長い解説が載っていて、これが本当に、会田誠さんに対して、もっと言えば現代美術とは何か?について、その歴史的背景や他の作家との比較などから、非常に分かりやすく書いてあるのです。
その全部を自分が理解できているかどうか分かりませんが、概ね僕が会田さんに対して思っていたこと、もっと言うと、会田さんに対して誤解を持っている人達に対して言いたかったことが書いてあって、よく書いてくれました!という気持ちで読みました。

要は会田誠さんの作品というのは、見る人によって、また見る角度によってまったく異なる受け取り方をできるような、重層的なものであるわけです。
例えば、すごく雑に例えると、物凄く不謹慎な作品が、一見するとブラックなギャグに見えるけれど、よくよく見ていくと世の中を風刺していたり、さらに見ているとそういう作品を見て笑ったり嫌悪感を抱いてしまうような鑑賞者そのものを風刺しているようにも見えてくる…みたいな、どこまでいけば正解なのか分からないことが起こるのです。

その奥深さこそが会田誠さんの作品の優れた点であるにもかかわらず、同時に難解な点でもあり、だからこそ誤解されてしまう部分でもあるわけです。
例えば、会田さんはエログロや政治的などの強烈なネタを敢えて使ったりしますが、その表層的な部分だけを見て、不謹慎だと批判されてしまうところがあるわけです。

例えば少女が残酷な目に遭っているエログロ作品は、会田さんがそういう残虐趣味があって描いているわけではないし、そういう趣味の人の需要を満たすために描かれたポルノとは全然違うしわけです。(前に会田さんの絵が残酷だとっ叩かれていた時に、美大を出た知り合いが「もっとエグい鬼畜ポルノだってあるんだし」と言っていて、美大を出てもこの程度の理解の人もいるのかと思ったことがあります)
また、会田さんが政治家の格好をしている作品が、安倍首相をバカにしていると過剰に批判されたこともあるそうですが、今の総理大臣を批判するためだけという短絡的な理由で作られた作品ではないのです。

とは言え難しいのは、会田さんは基本的に絵をくのが異様に上手いので、会田さんを肯定的に受け取っている人の中でも、表層的な絵の上手さだけで感動して、分かった気になっている人もいるわけです。(正直、僕も最初はそうでした)
だからこそ、誤解を生みやすい一方で、分かった気になって感動している人が大勢いるからこそ、人気の作家でもあるという、すごく色々な矛盾を抱えた微妙なバランスの上にいるのが、会田誠さんという方なわけです。

これに対し、会田さんも、また同じ時代の現代美術家の村上隆さんも、日本のアートに対する理解のなさ、未成熟さを指摘していて、要は芸術作品を深く知ろうと努力して鑑賞する、ということ自体が、日本にはまだ浸透していないということだと思います。
こういった現状に、村上隆さんは日本よりも海外を中心として活動をしていくようになったようですが、会田誠さんはそれでも日本で作品を作ることにこだわっているところがまた、魅力だったりもするわけです。

僕自身、会田誠さんの絵が表現する日本っぽさがすごく好きなんですけど、それは桜や富士山のような広告のポスターのような「クールジャパン」「美しい日本」ではなくて、例えば地方都市の郊外のショッピングセンターや、歌舞伎町のネオン街に感じるタイプの日本です。
個人的に、そういう汚いものも含めて「ああ、これが日本のリアルだなあ…」と感じる風景が登場する邦画なんかが好きなんですけど、会田さんの作品にも僕はそれをすごく感じるんですよね。

そしてきっと、それは僕が会田誠さんと同じ新潟の西区という、地方都市のさらに郊外で生まれ育った部分とも、多分関係があるんだろうなと思います。
そんなわけでまとめると、僕はこの本を読んで、あらためて同じ時代に会田誠さんに出会えて良かったと思ったし、僕は会田さんと違って新潟を出て東京に行くことはしないけれど、会田さんの作品に対して理解を深めたりしながら生きていけることを幸せだなあと思いました。
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