8/30(月)、イオンシネマ新潟南で「子供はわかってあげない」を観てきました。
水泳部の美波が、好きなアニメの話で書道部のもじくんと仲良くなり、色々あって実の父親を捜しに行く…という物語。
全体的に登場人物もストーリーもどこか飄々としていてとらえどころのない映画なのですが、登場人物の一人一人が個性的でありながらどこかにいそうという不思議な存在感があり、愛おしくて憎めない人達ばかりでほっこりする映画でした。
冒頭、いきなり謎のアニメが始まってなんじゃこりゃ?と思ったらそれは美波が見ているアニメで、その仕掛けにいきなり引き込まれました。
しかも、そのアニメの声優さんにちゃんとプロを起用したり、主題歌もちゃんとあったり、こういう小ネタの一つ一つの作り込みがしっかりしている。
そして、そしてアニメを見ている美波と、その周りの家族達の日常風景が、いかにも平和な家族って感じなのですが、例えばお父さんが美波と一緒にアニメの歌を歌って踊り出しちゃったり、どこか変わっている。
でも、それがただのギャグじゃなくて、こんな家族どこかにいそう、と思わせる存在感がちゃんとある感じも絶妙で、そういう何とも言えない面白さが最後までずっと続く映画でした。
で、そのアニメがきっかけで、美波は書道部のもじくんと仲良くなるから、冒頭のアニメもただのネタじゃなくて話はちゃんと繋がっているという、脚本もちゃんと作り込まれている。
プールで部活をしていた美波が、屋上にいた書道部のもじくんを見付ける、という流れなのですが、二人の自然な演技はもちろん、例えば卓球部が廊下で練習しているとか、屋上の手前の階段の踊り場が物置みたいななっているとか、学校の風景描写もすごく作り込まれていてリアルです。
ちなみに、ここでアニメの話で盛り上がる2人の会話の掛け合いが絶妙なリアルさで面白すぎたし、ああ、本当にこのアニメ好きなんだろうなあ~!という台詞の一つ一つがすごく楽しそうで見ていてほっこりしました。
そもそもこの映画、上白石萌歌さん演じる美波が、自分の気持ちや好きなものに素直に生きている感じや、コロコロ変わる表情の演技がすごく可愛いし、彼女が楽しそうなだけで嬉しくなる映画です。
そこからもじくんの家が書道家の家系とか、もじくんのお兄さんが古本屋で暮らす探偵とか、美波の実の父親が謎の新興宗教にいるとか、ちょっと不思議な展開を挟みつつも、後半からは美波が実の父親を捜して会いに行くという物語になっていきます。
美波の家庭は、離婚して母親が再婚したものの、その父親とも仲良いくて絵に描いたような平和な家庭なのですが、母親と離婚して10年以上も離れ離れになっていた実の父親も、美波のことが好きなんだなーというのが端々から伝わってきます。
豊川悦司さん演じる実の父親が、不器用ながらも美波のことが好きでたまらないのがとにかく伝わって来て、彼の立場を考えるとちょっと切なくはなりますが、やっぱりほっこりする。
途中で美波が帰ってこないから心配して会いに来てしまうもじくんとかも含めて(ちなみに、ここの「東京ラブストーリー」のパロディに笑ってしまった)、この映画の人達、みんな素直でちょっと不器用です。
で、まさにそんな美波が不器用ながらも素直な気持ちに気付いて行動するラストは、本当に人の気持ちが動く瞬間を目撃したような感動がありました。
典型的なザ・青春!な映画ではない、とらえどころのない変な映画なんですが、逆にそれが、夏休みという時間に、人が少しだけ成長する、少しだけ気持ちが動く、という姿をリアルに描いていて、心が動かされたなと思いました。