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7/14(水)、T・ジョイ新潟万代で「アジアの天使」を観てきました。
予告編はこちら。
妻を亡くし仕事も失った主人公・青木剛(池松壮亮)は、韓国に移住した兄(オダギリジョー)を頼って、韓国を訪れる。
兄は韓国に来れば仕事があるというが、実際は兄ははぐらかすばかりで何の仕事もなく途方に暮れる。
一方、韓国では、社長から搾取されてばかりの歌手のチェ・ソル(チェ・ヒソ)は、両親を亡くし、貧しい兄と妹と暮らしていた。
そんな彼らがひょんなことから行動を共にするロードムービーが展開していきます。
まず印象的だったのは序盤、剛が息子を連れて韓国を訪れる場面。
言葉も分からず不安ばかりの韓国で「大事なのは相互理解だ」と自分に言い聞かせる剛であったが、案の定、トラブルに巻き込まれてしまいます。
そんな中、日本語と韓国語の両方を話せる兄に助けられ、なんとかピンチを切り抜けます。
やはり、言葉が通じない人間同士は分かり合えないのだろうか…
続く場面、チェ・ソルは久し振りの歌の仕事もまったく見向きもされず、絶望していた帰り道に一人で飲んでいると、たまたま剛と出会います。
剛は日本語、チェ・ソルは韓国語しか話せないのですが、言葉が違ってもどこかチェ・ソルをほっとけないものを感じた剛は通じないはずの日本語で話しかけてしまう。
伝わらない言葉で話しかけてもどうにもならないはずなのに、それでも分かり合おうとする気持ちが伝わってきました。
その時は気まずい状態のまま離れ離れになったものの、その後、ひょんなことから彼らは再会します。
チェ・ソルは兄と妹と共に、遠くにある家族の墓参りをするたびに旅に出ることになるわけですが、同じ電車にたまたま剛と兄、息子が乗っていました。
兄はチェ・ソルとその妹に一目惚れして、ただの下心から助けますよ!と軽々しく声をかけ、成り行きだけで行動を共にすることになるのです。
そもそも兄は、新しいビジネスを立ち上げる町へと移動すると言って剛とその息子を連れて旅に出たのですが、まったく行き当たりばったりな行動ばかりです。
そんな、剛の兄の下心から始まった思い付きで、彼らは行動をすることになってしまうわけですが、日本語と韓国語が両方話せるのは兄だけなので、とにかく行く先行く先トラブル続きの旅になっていきます。
彼ら6人が初めて食卓を囲む夜、日本を嫌う韓国人と韓国を嫌う日本人の話題になり、日韓の関係悪化が背景にあることが描かれていきます。
同時に、日本から韓国を訪れた剛達は無職という、韓国で暮らすチェ・ソルの一家は貧困という現実を描くことで、日本人も韓国人も貧困問題を抱えていることが日韓共にさらに背景にあることを表現していたのかなと思いました。
そんな彼らは旅をする中で、剛はずっと反発していた兄を受け入れ、ずっと虚勢を張っていた兄も最後には素直な気持ちを打ち明けます。
また、いつも喧嘩ばかりだったチェ・ソルと妹も次第に分かり合い、一番日本人に対する偏見が強かったであろうチェ・ソルの兄も日本人の3人を次第に受け入れていきます。
最初は一人の日本人の韓国人女性に対する下心から始まった行き当たりばったりのトラブル続きの旅の中で、次第にその出会いは6人にとって大きな体験になっていきます。
中でも、まだ幼い剛の息子にとっては、こうして国籍を超えて苦難を共にした体験はとても大きなものになったのではないかと思われます。
この映画のいいところは、彼ら6人が次第に分かり合う人間描写を丁寧に描きながらも、説明台詞はほとんど登場しないのです。
印象的に登場するのは、彼ら6人が同じ食卓を囲んだり、一緒にビールを飲んだりする場面です。
そして、最後に剛はチェ・ソルに言葉が通じないにも関わらず、旅の中で抱いた想いを打ち明けます。
言葉は通じなくても本気で分かり合おうとすること、そしてともに食卓を囲んで同じ体験を共有すること、それこそが人と人とが国を超えて分かり合えるための第一歩だよと、そんなことを静かに教えられた映画だなあと思いました。
全体的に静かな場面がゆっくり続いていく場面なんですが、見ていると一緒に旅をしているような気持ちになります。
まるで彼らと一緒に旅をしながら、彼らの心境の変化を疑似体験できる、そんな映画になっていたと思います。