舞い上がる。

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ちひろBLUESこと熊谷千尋のブログです。

シアターTRIBE『機甲街』観て来ました!

2012-05-28 23:39:02 | Weblog
シアターTRIBE『機甲街』の話。




今更ながら、4/29(日)に見た、シアターTRIBE『機甲街』の感想です。
会場は、松本市のピカデリーホールでした。









ガッツリ書いて行きます!
まずはストーリーの説明。


この物語は人類が戦争を(恐らく地球規模で)行っている、非常に絶望的な世界が舞台。
戦地で地図を消失した三人の兵士が、機甲街と呼ばれる街に迷い込む。

彼らはそこで街の秘密を知る女性と出会うのだが、彼女は今すぐ立ち去れと言う。
実は、機甲街は、「毒奇」と呼ばれる、古い人類が作り出した遺物が保管されているのだった。

「毒奇」は、永遠に毒の光を放ち続け、消えることはない。
今となってはそれが作られた理由は誰も知らず、消滅させる方法も知らない。

機甲街は、そんな毒奇を封じ込めるために作られた武装都市であった。
しかし、この戦争を指揮する司令官は、毒奇を軍事利用しようと企んでいた・・・



・・・といストーリーで、要するにこれは未来を舞台にしたSF作品です
そして、この物語の鍵である「毒奇」という物質ですが、設定からこれは放射能廃棄物であるということが分かると思います。

つまり、現代の文明が一度滅び、未来の人類に残された放射能廃棄物を巡る物語です。
現在、大きな問題となっている放射能廃棄物に対する問いかけを全面に押し出した物語と言えるでしょう。



脚本・演出を手掛けた永高氏は、東日本大震災と原発事故のニュースを見て、この物語を書こうと思ったそうです。
ストーリーの中に、原発・放射能廃棄物の恐ろしさを上手く表現したと思わせる点が多く出て来ます。

例えば、現代の文明が滅んだ後でも、放射性廃棄物の存在理由を知る者が誰もいなくなった後でも、放射性廃棄物は残っているという点。
そして、誰もそれを消し去る方法を知らず、人類に残された唯一の手段はそれを保管すること以外にないということ。

制御することが出来なくなった放射性物質の恐ろしさは、昨年の東日本大震災で多くの人が体感したでしょう。
現代の科学でさえも、それを100%制御できていないという実態があると思います。

でももし今後、放射性廃棄物に関する知識を持った人間が一人もいなくなってしまったら、人類はどうすればいいのか。
現代の科学を以てしても放射性廃棄物の処理には数万年以上をかけて保管する以外の技術を人類は持っていない。

もしかして現代の人類に出来ることは、放射性物質の利用を停止して廃棄物を厳重に保管し、その恐ろしさを語り伝えることだけなのではないか?
そのような発想は決してSFの世界だけのものではなく、非常に現実的な選択肢の一つだと思います。

これは機甲街の物語ではなく、現代の人類に突き付けられている問題です。
機甲街という物語が、現実の原発問題・放射性廃棄物問題に即して作られた設定の上に成り立っているSFであることが分かると思います。



そのような問題を観客に突き付ける、非常にメッセージ性の強い舞台だったと思います。
という訳で、僕は『機甲街』すごく良い舞台だったと思います。



しかし、その理由は決して放射性廃棄物の問題を扱っているからだけではない。
それは・・・単純にエンターテインメントとして面白いということ。

そもそも僕はあまりメッセージ性を全面に押し出した作品というのが苦手で、寧ろ面白ければメッセージは何もなくていいとすら思います。
が、この作品はメッセージ性を全面に押し出しながらも、エンターテインメントとしても楽しめる、非常に完成度の高い作品だったと思います。



この作品の良かったと思う一つ目の点は、この物語はSFとして非常に完成度が高い。
SFは所詮フィクションなわけですが、全てが空想ではなく、現実の科学の問題の中に、空想の要素を入れることで面白いSF作品になると僕は思っています。

要するに、有り得ない世界なんんだけどリアリティも感じられるということ。
そういう点で、先程も言った、現実のリアルな原発問題を元にしたストーリーは、まさにそういうSF作品と言えるのではないでしょうか。



良かった二つ目は、登場人物が魅力的だったところ。
登場人物は、兵士三人と、奇甲街の秘密を知る女性と、謎の少女、そして敵の司令官と、その部下達。

これらの登場人物の演技、描かれ方が、非常に素晴らしい!
上手いなと思うことの一つが、正義/悪の描き方。

例えば、機甲街で出会った少女を軍の司令官に差し出せと命令され、差し出す兵士二人。
しかしその直後、やはりそれは間違っていたと気付き、自ら助けに行く。

これって、普通に考えたら「自分でやっといて何やってんだよ!」って感じですが、現実人間の決断ってこんなもんじゃないでしょうか?
こういう人間らしさを描いたストーリーがリアリティ物語を生む。

それは同時に、人間に完全な正義/悪はなく、立場・行動によって変わっていくということでもある。
また、そういう立場によって変わる人間の在り方は、軍の司令部の人間などにも描かれる。

例えば、軍の女性科学者は、異常なまでに人体実験を行う残虐な一面と、司令官に利用される元愛人であるという悲劇の一面が描かれる。
女性の少佐も、軍人としての冷酷な一面と同時に、故郷を失った人間の悲しみも描かれる。

しかし、そんな中、唯一の絶対悪として描かれているのは、軍の司令官。
そんな悪の親玉を演じるのは作・演出の永高氏!マジで楽しそうに演じていました。

また、役者が素晴らしかったシーンは、少し知能の足りない軍人ドヤと、機甲街で出会った言葉を話せない少女のシーン。
悲劇的な物語の中で、このドヤという人物は驚くほどの優しさに溢れていました。

そんなドヤを演じていたのは、松本で一番の若手アウトロー俳優・クサママサキ!
まさかあのクサマから泣かされる日が来ようとは・・・間違いなく俺の中のベストアクト!



そして良かったと思う三つ目は、SF好きの人間のがハマるツボを押さえていること。
現代文明が滅んだ後のディストピアな世界とか、残された旧人類の遺物とか、もはや理由の分からなくなってしまった戦争とか、過去を知る唯一の老婆(ちんさんごめんなさい!あの役は僕の中で老婆なんです!)とか、秘密を握るしゃべれない少女とか、少女は実は不死身とか、美人のマッドサイエンティストとか、世界を牛耳ろうとする強烈な悪役とか・・・

なんかもう、SF好きを喜ばせるポイントを押さえまくりでしょ!
永高さんの脚本はかなり人を選ぶものだから、過去の作品ではダメだなこれはってのもあったけど、今回に関してはグッジョブ!と言いたい!

ナウシカが好きな人はハマるかもね。
てか今気付いた、この話ちょっとナウシカに似てない?





そんな訳で、皆さんお疲れ様でした!






出演していた兵士の皆さん!
(撮影きのこきりん)



あ、言い忘れたけど、衣装も良かったです。
それから舞台美術。



舞台美術に関しては、次で触れます。




つづく。







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