1/31(木)、イオンシネマ新潟南で『ガンジスに還る』を観て来ました。
新潟市内での上映はイオンシネマ新潟南でだけだったようです。
予告編はこんな感じです。
インドの映画なんですけど、主人公は仕事人間の中年サラリーマンで、その父がある日、自分の死期が近いことを悟ったと言い出し、家から遠く離れた聖地とされる土地「バラナシ」に行きたいと言い出します。
仕事人間の主人公は最初は当然反対するのですが、父に言われるがままに渋々二人でバラナシへと旅立つこととなり、そこで二人はガンジス河のほとりにある「解脱の家」という場所に入居し、そこで生活を共にすることになります。
「解脱の家」とは死期が近いと悟った人が暮らす施設ですが、15日間しか暮らすことが出来なかったり、そこで亡くなった方は「解脱した」とされたりという、不思議な施設です。
二人が訪ねると、「満室でしたがちょうど一人解脱されました」と言われ、入居が決まります。
「解脱の家」では裏手に流れる雄大なガンジス河の流れのようにゆったりと時間が流れ、父はそこに暮らす様々人達と交流しながら、のんびりと楽しい日々を過ごします。
一方、主人公は携帯を片時も手放さず食事中にも電話をしたりどこかせかせかしていて、そのせいで父とすれ違ってばかりいます。
ただ、すれ違うと言っても、殺伐としているという感じではなく、どこかコミカルに描かれているなあという印象を受けました。
そして、最初はすれ違っていた二人も、徐々にお互いの気持ちを打ち明けたりしながら、打ち解けていくというストーリーも、非常に温かいものだなあと感じました。
基本的に静かな映画なんですが、とは言えこの映画の中では、「解脱の家」で仲の良かった人が亡くなって葬式のシーンが描かれたり、結婚の決まっていた主人公の娘に心境の変化があったり、そして主人公と父が一度は離れ離れになるも最終的にとある結末を迎えたりと、結構色々な出来事が起こります。
しかし、それらの出来事をドラマティックに盛り上げる感じではなく、静かに淡々と「こういうことが起こりました」という描き方をしているんですが、それが冷淡な印象ではなく、妙に温かい感じもしたのが不思議だなと思いました。
そして、映画の中で生も死も含めて人間の人生がガンジス河のように淡々と流れていくこの感じこそ、もしかしたらインドの死生観、宗教観なのかも知れないなと思いました。
他にも、「どうして死期を悟ったの」「ただ、何となくそう思ったのだ」という親子の会話や、夫に先立たれてからずっと「解脱の家」で暮らし続けていると語る女性が亡くなる間際に書いたと思われる「私にはもう名前はない。私は魂である」という言葉など、映画の端々からインドの死生観、宗教観を感じられたのも、非常に興味深かったです。
また、そういう宗教観みたいな伝統的な文化と、スマホのような近代的な文化、その二つが同居しているあたりも、これがインドという国の今の光景なんだなあ…と感じられたのも面白かったですね。
こういう、風景や人間を丁寧に描写するような映画って、実はその国の社会的背景みたいなものも描き出しているのかも知れないですね。色んな国のこういう映画が観てみたいです。
そんな訳で、すごく面白い映画だったんですけど、新潟市内ではイオンシネマ新潟南で二週間だけの上映ってのが切なかったのですね。
まあそれは仕方ないとしても、僕が観た二週目は朝の9時15分からの上映だけだったってのがだいぶしんどかったですね…上映期間が短いならせめて一日二回くらい上映してくれればいいのに!