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ちひろBLUESこと熊谷千尋のブログです。

シネ・ウインドで『セブン・シスターズ』を観て来ました。

2018-01-10 17:52:34 | Weblog


1/5(金)、シネ・ウインドで『セブン・シスターズ』を観て来ました。日にだけ観に行けました。



ひとまず予告編はこんな感じです。





ノルウェー出身のトニー・ウィルコラ監督によるSF映画です。
「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」「プロメテウス」のノオミ・ラパスが、7つ子の姉妹を1人7役で演じています。



と言う訳で、「セブン・シスターズ」の感想を書いていこうと思いますが、まず、ディストピアSFとしての設定がすごく良く出来ていたと思います。
ひとまず、公式サイトに載っているストーリーの一部を引用させていただきます。



そう遠くない未来。世界規模の人口爆発と干ばつによる食糧不足に対処すべく、収穫量の多い遺伝子組み換え作物が開発されるが、その作物が人体に与える影響で多生児の出生率が急増する。さらなる危機に直面した欧州連邦は、一家族につき子供1人のみを認める「児童分配法」を施行、違法に生まれた二人目以降の子供は地球の資源が回復する時まで「クライオスリープ」と呼ばれる機械で冷凍保存する政策を強行した。



この設定が本当に見事です!
現実ではないけど、もしかしたら起こるかもしれないな…そして、本当に起こりそうで怖いな…と思わせてしまうような世界設定、ディストピアSFとして素晴らしい着眼点だと思います!



続いて、登場人物たちの設定が描かれていくのですが…
これも、公式サイトのストーリーを引用します。



至るところに検問所が設けられ、人々の生活や行動が厳しく管理される中、とある病院で七つ子の姉妹が誕生する。母親は出産と同時に死亡し、姉妹は唯一の身寄りである祖父に引き取られた。祖父は7人を月曜、火曜、水曜、木曜、金曜、土曜、日曜と名付け、「児童分配局」に見つからずに生き延びるための方法を教え込む。その方法とは、それぞれ週1日、自分の名前の曜日にだけ外出し、カレン・セットマンという共通の人格を演じることだった。



どうですか!この世界設定ならではの、このキャラクター設定!
一人っ子政策が国家規模で完全徹底された世界で極秘に育てられ一週間に一人ずつ外出することで一人の人間を演じ続ける七つ子の姉妹…この時点で物凄く色んな想像力が刺激されるし、引き込まれる設定ですよね!

しかも何がすごいって、映画が始まって物語が動き出す前に、ここまでに書いてきたような物凄い情報量の世界設定、キャラクター設定が、一気にスピーディーに、かつ分かりやすく的確に、しかもディティールもしっかり作り込んだ上で、冒頭の5分か10分くらいで展開していく…そして、そこまでしっかり物語の設定を説明しておいてからの…タイトル登場!いや、完璧な流れだと思います!

ちなみに、現代は「WHAT HAPPENED TO MONDAY」直訳すると「月曜に何が起こったのか」
これも映画の内容を見て行くとダブルミーニングになっていて非常に優れたタイトルだと思います。



物語は、そんな七つ子が生まれてから30年後の物語なんですが、彼女たちは祖父の遺した普通のアパートの一室みたいなところにある「隠れ家」で、相変わらず30年間、一週間に順番に入れ替わりながら一人の人間を演じ続けながら暮らしています。
上手いなあと思ったのは、7人が1人の人間として隠れて生きていく難しさを表現するために、現在と過去の物語を交互に展開させた話運びです。

中でも、1人が怪我をしたら7人全員が同じ怪我をしないといけないというシーンは、本当に見ているのがつらくなってしまうくらい、痛々しくてトラウマシーンでしたが…
でも、そんなトラウマシーンを含む幼少期の出来事が、実はその後の7人の物語を描く上での伏線としてもしっかり機能していて、しかもちゃんと回収される話運びも鮮やかでした。



そんな彼女たちですが、ある日、「月曜」が日付が変わっても帰って来ない…そんなことは初めてだったので戸惑う6人でしたが、実はそれはここから始まる悲劇の始まりに過ぎなかった…
やがて、七つ子の存在を許さない政府の刺客たちが襲い掛かり、死闘が始まる…果たして七つ子の運命は?政府の隠している秘密とは?そして、月曜に何が起こったのか…?



そんな様々な謎が渦巻きながら、物凄い情報量の物語が、次々と目まぐるしく展開していく、ディストピアSfであり、サスペンスであり、アクション映画でもあるという、一つ一つの展開に興奮したりハラハラしたり、非常に色々な面白さに溢れた映画でした。
だから本当に見どころがたくさんある映画なんですが、SF設定も話運びもストーリーの豊かさもさることながら、何と言っても7人姉妹を一人七役で演じ分けるノオミ・ラパスが本当に素晴らしい!

何が素晴らしいって、同じ顔の7人なんですが、例えばこのキャラクターは格闘が得意、このキャラクターはメカやサイバーに強い、このキャラクターはお色気…などなど、7人それぞれのキャラクターそれぞれに異なった個性がしっかりあるのです。
だからこそ、その後のサスペンス展開でも、それぞれの個性が発揮されたアクションになるため、ある時は肉弾戦や銃撃戦、ある時は頭脳船や情報戦、またある時はお色気を使ってのスパイ風のサスペンス…などと、本当に様々なジャンルの面白さが詰め込まれた映画になっておいるんです。

分かりますか、7人姉妹の個性の豊かさが、そのままこの映画の見どころの豊かさに繋がっているんです。
しかも、一人一人にしっかり見せ場があり、一つ一つの見せ場がまったく中途半端ではなくしっかり丁寧に作り込まれていて面白く、さらに、そんな7人が連携プレイで戦うシーンなどは、本当に様々な映画のジャンルの面白さが同時並行で展開していくようで、ものすごく興奮しました。



他にも、SFとしての設定の素晴らしさもさることながら、様々なSF的ガジェットが、「ちょっと本当にありそう」って思わせてくれるようなSF心をくすぐるようなものになっていたことも本当に素晴らしかったと思います。
例えば、国民一人一人を管理するための個人情報を特定する特殊な腕輪(これがないと検問所を通れないし、七人姉妹の分は祖父がそれを捏造した)、二人目以上の子供を冷凍保存するための「クライオスリープ」と呼ばれる機械(実はこれにはとんでもない秘密が隠されていた…)、などなど、デザインとしても物語の中での役割としても、ディティールまで本当によく作り込まれていたと思います。

そして、そんなテクノロジーの発達した未来でありながら、どこか薄暗くくすんで荒廃したような街並みや、町中で頻繁に発生している「児童分配局」に対する反対運動や国民との抗争など、不安を煽るような風景描写も、これぞディストピアSFと言えるようなものだったと思います。
また、そんな近未来を舞台にしたSFでありながら、アクションは物凄く泥臭い死闘だったり、時に目を背けたくなるようなバイオレンス表現だったりするあたりも、この映画の見どころの一つだなあと思いました。



そう考えると、テクノロジーの発展した近未来を舞台にしたSFでありながら、どこか荒廃したような街並み、そこで繰り広げられるバイオレンスアクション、という物語は、「ブレードランナー」や「ターミネーター」などの往年の名作SF映画を思い起こさせるようなものだったなあと思いました。
特に、雨が降るの中で様々なビルの中、そして屋上で繰り広げられる逃走劇は、モロに「ブレードランナー」だと思いました。

また、そんなSFアクションを通じて「人間が生きることとは?」という深いテーマを考えさせられるような内容だったことも、この映画がSFアクション映画としてよく出来ていた証拠ではないかと思います。
と言う訳で、ディストピアSFとしても、バイオレンスアクションとしても、サスペンスとしても、そして7人姉妹の人間ドラマとしても、非常に見どころのある面白い映画でした!



…という訳で、非常に大満足な映画なんですが、何ヶ所か気になってしまったポイントもあるので、最後にそこだけ書いていきます。

まず、映画が進行するに従って、一日ごとに「SUNDAY」「MONDAY」と字幕が出ていくんですが…そのまま一週間の物語が展開するかと思いきや、そうじゃなくて、確か4日目か5日目くらいまでなんですよ。
いや、7人姉妹で、それぞれ日曜、月曜…と曜日の名前がついている物語なら、一週間分の物語になって「SATURDAY」もしくはもう一度「SUNDAY」で終わった方がカッコ良かったのでは…?

それともう一つ、これは映画そのものではなく字幕なんですが、「SUNDAY」、「MONDAY」という曜日からつけられた名前を、「日曜」「月曜」と和訳していたのは、さすがに直訳すぎでは…
それが名前ですって言われてもどうしても不自然だと思ってしまうし、そこはそのまま「サンデー」「マンデー」って名前にそのままカタカナで名前を表現した方が良かったのでは…



…まあ、気になったのはこの2点くらいです!
それ以外は、基本的に大満足な面白さでした!
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