1/8(月)、T-YOY新潟万代で、『シンクロナイズド・モンスター』を観て来ました!
と言う訳で、感想を書いていこうと思います!
ひとまず、予告編はこんな感じです。
どんな映画かと言うと、アメリカに住んでいる無職で彼氏にもフラれた人生負け組な主人公の女性の動きが、何故か韓国のソウルに出現した巨大怪獣とシンクロしてしまう、という、異色の怪獣映画です。
まず、何はともあれ、この設定の時点でこの映画はすごいと思うんですよね。
ただの普通の女性と怪獣の動きが何故かシンクロしてしまう…そんな突飛な設定、どういう頭をしていたらどういう頭してたら思い付くんだよ!っていう。
僕自身、この映画の設定を知った時点で、ものすごく気になってしまったので是非観てみたい!って思いましたし、まさにアイディアの勝利だと思います。
で、実際に映画を観た感想ですが、確かにアイディアの勝利の映画なんですよね。
そしてそのアイディアを、そういう風に物語に活かしていくのかー!っていう発想も斬新だったなと思います。
と言うのも、僕はこの映画の予告編を観た時に、何かの理由で怪獣と動きがシンクロしてしまった主人公が、怪獣を操って世界を救う、みたいな物語になるのかなーって想像していたんです。
コミカルなタッチの怪獣映画、というか、巨大ヒーロー映画みたいなものをイメージしていたんです。
しかし、実際観た映画は僕の予想とは違って、基本的には主人公の女性の生活と、彼女を取り巻く人間関係を丁寧に描いた人間ドラマだったなあと思います。
怪獣とシンクロしてしまうという設定は、あくまでも彼女の生活という物語を盛り上げるために存在している感じでした。
映画の冒頭、主人公のグロリアは、アメリカの都会で暮らしているけれど、無職になってからというもの同棲している彼氏の部屋で毎日酒を飲みまくっている、という本当にダメ人間として描かれています。
そんなグロリアは彼氏からもフラれてしまい、生まれ故郷の田舎に帰り、今は空き家になっている実家に帰って暮らし始めるのですが、ひょんなことから、今ではバーを経営している幼馴染の男性と再会し、バーで働き始めます。
ここまでの下り、とにかくダメ人間なアン・ハサウェイがなんだかものすごく可愛いし、そんな彼女がダメ人間ながら頑張る物語なので、思わず応援したくなてしまうような魅力がありました。
そんな彼女の日常をあまりにじっくり描いていくから、途中で怪獣が出てくる映画だってことを忘れてしまうくらいなんですが、実際ちゃんと出てきます。
で、その怪獣が途中から物語に絡んでくるわけですけど、グロリアが自分の動きと怪獣の動きがシンクロしていることに気付くまでの下りが、とても丁寧に描かれていたと思います。
もっと言うと、グロリアが怪獣の存在を知る、そこから怪獣の動きと自分の動きがシンクロしていることに気付く、というまでの流れが実に鮮やかでした。
まず、最初にグロリアが怪獣の存在を知るきっかけが、たまたまテレビを点けたら映っていたニュースなのですが、その前に彼女の何気ない生活を丁寧に描いていることで、この映画が描いているのはあくまで普通の日常であり、そんな日常の中に突然怪獣が飛び込んでくるという驚きがしっかり表現されていたと思います。
驚きのあまり、思わず別れた元彼に電話をかけてしまうというのもリアルで良かったです。
そして、さらによく出来ているのが、この映画の最大の見せ場である、怪獣の動きとグロリアの動きがシンクロしていることに彼女が気付く下りです。
何が良かったって、怪獣が登場する以前の彼女の日常描写の中で、いくつか特徴的な彼女の動きを、ストーリー上とても自然な動きで観客に印象付けておいてあったことです。
彼女にとっては何気ない日常の延長戦として、そして観客にとってはまさかそれが物語の伏線になるとはとても思えないくらいの自然な動きが、まさか怪獣の伏線になっているとは!
怪獣の存在を知ってからというもの、家に帰ればテレビで怪獣のニュースをチェックしてしまうという彼女の行動もとても自然だったし、そんな中で、テレビのニュースに登場する怪獣の動きの中に少し前の彼女と同じ特徴的な動きを最初に発見してしまった時の彼女の驚きは、二つの物語がついに繋がってきたぞ!という観客の感動と、まさにシンクロするものだったと思います。
とは言え、最初は彼女もそんな馬鹿ながあるわけないか…と半信半疑なんですが、どうしても気になるあまり、自分の行動を振り返りながら、怪獣の事件の詳細を調べていくと、段々どういう条件下で怪獣が出現するかを調べていくという下りもまた、主人公と観客が「発見していく」驚きと感動がシンクロしていたと思います。
要するに、怪獣の出現には一定のルールがあって、彼女が自分の暮らす町の中にある、ある場所、ある時間に行くことで、ソウルに怪獣が出現する、というルールに彼女が気付くとともに、観客もそれを同時に知っていく、というシーンで、そこをすごく丁寧に描写していたことで、すごくわくわくしましたし、映画に引き込まれました。
この映画の最大の面白さである主人公と怪獣のシンクロという突飛なアイディアがここから動き出す、まさにこの映画の最初の大事なシーンをきっちり丁寧に描いていたことは、この映画のアイディアを大事にしている!面白さのポイントをしっかり分かってる!と思いました。
この面白さは、藤子F不二雄のSF(少し不思議)や、世にも奇妙な物語にも通じるような、まさしく不思議なアイディアの勝利だったと思いますし、やっぱりこういう優れたアイディアの物語は人を惹きつけるなあと思いました。
しかし、この映画が面白いのは、それだけで終わらず、そのアイディアを物語の中でさらに活かしていくという、もう一つのアイディアです。
先程も書きましたが、あくまでこの映画は怪獣がメインではなく、あくまで彼女の日常を基本としていて、その証拠にほとんどのシーンで怪獣はテレビやネットの画面を通してしか登場しないのですが、彼女の日常の物語を、そこと怪獣を連携させることで盛り上げていく、というやり方が上手いなあと思いました。
例えば、最初は怪獣と自分の動きがシンクロしていないことを「びっくりした」くらいにしか考えずにあまり重く受け止めていなかったグロリアが、ある出来事がきっかけで怪獣を暴れさせて街を大破させてしまうというエピソードをきっかけに考えを改め、彼女が自分の行動に責任を持つようになる、という成長に繋げていたのは、上手いなあと思いました。
予告にも登場しますが、彼女が頑張ってハングル語を覚えて、怪獣の体を使ってソウルの地面に謝罪文を書くという下りは、ギャグみたいなシーンだけど、彼女の成長をしっかりと表現していた名シーンだったと思います。
さらにここから物語は二転三転しいてくのですが、軽くネタバレをしますと、グロリアがバイトしているバーのマスターで幼馴染のオスカーとの仲が険悪になっていく、という人間ドラマを非常に丁寧に描いていくのですが、それと同時に怪獣だけではなく巨大ロボットもソウルに出現する、という、また新たな展開が映画に登場します。
しかも、そのロボットの動きが、今度はオスカーの動きとシンクロしていた、という新たな展開があり、しかも、オスカーは彼女に腹を立てるあまり自暴自棄になり、放っておくと彼とシンクロしたロボットが暴れてソウルの街が破壊しかねない!という、非常にスリリングな物語へと展開していくのです。
グロリアとオスカーの対立が、ソウルの平和を守れるかどうかに直結してしまうアイディアはちょっとセカイ系みたいでぶっ飛んでいるとも思いましたが、そのアイディアは素晴らしいと思います。
つまり、このアイディアによって、崩壊してしまった人間関係の中で彼女の行動力、正義感が試されていく展開を非常にスリリングに盛り上げていたし、何よりグロリアとオスカーの関係性や気持ちの変化の描写が非常に丁寧なので、自然に物語に入っていくことが出来ました。
そんな訳で、主人公と怪獣の動きがシンクロしてしまうという突飛なアイディアを、物語上に登場させるのも、そのアイディアによって物語を盛り上げていくのも、非常によく出来ている面白い映画だったと思います。
しかも最後には、いい意味でショートショートのどんでん返しみたいないいオチもついているのですが、それについては流石に書かないでおきます。
という訳で、基本的には面白かったこの映画なんですが、いくつか物足りない、と言うか、説明不足に感じる部分もありました。
一番それを感じたのは、どうして主人公の動きが怪獣とシンクロしてしまったのか、という点に関して、一応説明はあるのですが、それがあまり納得のいくものではなかったことです。
やっぱり、この映画の最大の見どころであり、面白さの肝である部分であるだけに、もっとあっと驚く、そして「なるほど!」と納得できるだけの、しっかりとした設定が欲しかったですし、それが無かったのは非常に残念だったと思います。
そこさえしっかりしていれば、少し不思議SF作品として、異色怪獣映画として、もっと名作になっただろうに…と思うと、非常に残念な気がします。
しかしこの映画、考えてみると、まず主人公と怪獣のシンクロという非常に斬新なアイディアがあり、さらにその怪獣を中心とした超派手な一大スペクタクルな怪獣映画、アクション映画ではなく、あくまでそのアイディアを活かしたことによる、主人公の成長という人間ドラマなのです。
そう考えると、映画の規模のわりには、他の怪獣映画に比べたら低予算なのかなあ…という気もしますし、何よりそういう斬新なアイディアを元にしつつも比較的小規模な物語を描いているあたり、どことなく自主制作映画のような雰囲気があったような気がするのです。
だから、確かにハリウッドの有名な俳優さんたちが出ているし、怪獣のビジュアルはCGを駆使した凝ったものにはなっていたけど、大規模な自主制作映画である、みたいなノリで見たら、そういう設定の穴も、何となく許せる気がしてきます。
と言うか、確かに思うところは色々あるけれど、何より主演のアン・ハサウェイが本当に最高に可愛くて魅力的だったので、何だかんだで観られて良かったなあと思える映画でした。