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新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「コロナ・ショック」。その経済損失は、自動車を中心に対米輸出は60%減少、不況はあらゆる産業分野に広がって倒産件数は1万5646件(2008年)にのぼったリーマン・ショック時を超えるとまでいわれている。
政権中枢から消費税引き下げ論が出るなか、安倍晋三・首相のかつての経済ブレーンは「引き下げではなくゼロにすべき」と提言する。
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安倍首相は「経済をV字回復させなければならない」と緊急経済対策の取りまとめを指示したが、すでに表明された公共料金の支払い猶予に加え、検討されているのは5万円以上の現金給付、ポイント還元の拡大、中小企業の納税猶予などのメニューだ。
そうした対策より、与野党から要求が高まっているのが「消費税減税」だ。日本維新の会の柴田巧・参院議員は「消費税率8%に減税」を提案し、国民民主党や共産党などの野党は「5%」を主張、自民党でも若手議員が参加する「日本の未来を考える勉強会」が消費税減税を含む30兆円の景気対策の提言書を政府と自民党執行部に提出した。
実は、官邸も経済危機回避の切り札として消費税減税を検討しはじめた。
安倍首相は3月13日に自民党税制調査会長の甘利明氏を官邸に呼んで協議し、その動きに呼応するように安倍側近の世耕弘成・参院幹事長が「(消費税)減税も選択肢の一つだ」とぶち上げた。官邸関係者が語る。
「総理は昨年10月に消費税を上げたのはタイミングが悪かったという意識が強い。そこで全品目に軽減税率を適用して消費税8%に戻すことで消費の落ち込みをカバーし、それに給付金や所得税減税などを組み合わせる案などが検討されている。
消費税減税を発表すれば買い控えを招くので、できるだけ早く実施するスケジュールになるのではないか」
否、消費税減税はいいが、この期に及んでは「税率8%」に戻すだけでは全然足りない。
V字回復のシナリオ
「日本経済をV字回復させるには税率8%でも5%でもなく『「消費税ゼロ』しかない」と断言するのは内閣官房参与として安倍首相のブレーンを務めた藤井聡・京都 大学大学院教授(社会工学)だ。
「感染の拡大が止まり、収束宣言が出されれば、間違いなく世界経済は急速に回復に向かう。
しかし、日本だけは消費税10%で実質賃金が下がっているため、いまのままでは回復に乗り遅れてしまう。
そこで消費税を10%減税(税率0%)すれば、実質賃金が10%上がったのと同じですから、国民は感染の収束宣言と同時に我慢していた消費を思い切って増やし、日本経済は力強く回復に向かうはずです」
産経新聞特別記者兼編集委員の田村秀男氏もこう言う。
「いま必要なのは個人消費を促し、企業が生産や設備投資を増やすような対策です。
国民にお金を配るだけでは一過性の効果しか生まないが、不況の元凶である消費税の税率を0%にすれば家計は10%分の負担軽減になり、効果は持続する。
消費税0%というと税収が減ることを心配する人もいるが、それは近視眼的な見方です。
税率10%のままでは景気が悪化して消費税も所得税も法人税も税収が減っていく。
逆に税率0%にしても消費が増え、景気が上向けば法人税や所得税の税収が増えていきます」
新型コロナの感染はいずれ収束に向かう。
そのとき、期限付きで「消費税ゼロ」になれば、この間我慢していた分と、「税率が戻る前に買っておこう」という駆け込み需要が重なって消費が過熱し、日本経済はV字回復の道を辿るだろう。
リーマン・ショックの後、世界で最も回復が遅かったのは危機対応に失敗した日本だった。
新興国は2年弱、米国は3年弱、欧州は4年弱で経済が回復したが、日本は消費がリーマン前の水準に回復するまでに5年、輸出数量が回復するまでにはなんと10年もかかった。
その責任を負うべき麻生太郎・財務相は、今回も「消費税を直ちにゼロにする発想はない」と税率0%論を完全否定している。
安倍首相がこの人物の言を用いたら、あの失敗を再び繰り返し、国民の犠牲を増やすことになりかねない。
※週刊ポスト2020年4月3日号