羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

俺物語!! 2

2015-08-13 22:28:23 | 日記
砂川は母と話しながら雪の落ちた道をマンションまで歩いた。その日の昼間、猛男は公園で餅ワッフルなる食べ物を大和に貰いつつ、催促されたので帰ってから丸々と太ってなぜか相撲の化粧まわしを着けた赤ん坊の猛男の画像を送ると、大和は大喜びだった。
翌朝、母がついてゆくという猛男達を断って一人でウォーキングに出掛けると、父は猛男に同期入社の母との馴れ初めを語り出した。「その年の忘年会でね」母は同僚が溢した土瓶蒸しを庇って手を火傷したが、「平気平気、そっち、なんともなかったかい? 洗ってくるわ、大丈夫」母は一人、洗面所で手を冷やしに行った。追った父が「氷、貰って来ましょうか?」と声を掛けると「平気、ああいう可愛い子見ると守ってやらなきゃって」などと話す母が傍に置いていたポーチは猫の飾りで、添えたハンカチはハート柄だった。「その時、父さん生まれて初めてね、この人と一緒に! 人生の荒波を乗り越えてゆきたいと思ったんだよ!!」と力説する父だった。
当の母はウォーキング中、階段で知り合いの若い妊婦と会い、「お互いもうすぐだねぇ」と話して通り過ぎようとしたが、若い妊婦は貧血で一瞬立ち眩みを起こし、階段を踏み外してしまった!「うっ!!」母は身重の体で若い妊婦の体を受けた! 腹に鋭い痛みを感じる!!「大丈夫ですか?」「大丈夫大丈夫! あんた平気かい?」「はい」母は腹を気にしつつも、若い妊婦を気遣っていた。午後、猛男が帰宅すると母がソファの所でうずくまっていた!「た、タケ、タクシー、呼んで」猛男は動転し、マンションから飛び出し、辺りを見回す!(タクシー! タクシー無ぇ)タクシーは見当たらなかった。「猛男、なんかあった?」猛男がドアを結構な勢いで開ける音を聞き付け砂川もマンションから出てきた。「母ちゃんが」猛男は意外な程弱々しく訳を話した。
     3に続く

俺物語!! 3

2015-08-13 22:28:13 | 日記
砂川がタクシーを呼んでくれた後も、猛男は動転し過ぎて行き先も運転手に伝えられず、タクシー代も砂川に立て替えて貰い、病院に着いてからも動転したまま「落ち着けっ! 砂ぁ!!」と砂川に言って逆に「お前が落ち着け」と宥められる有り様だった。母はそのまま入院することになった。猛男は母からあれこれ言付かったが、茫然としたまま家に帰った。灯りの消えた家で(俺がしっかりしねーと)と思っていると、すぐに大和と砂川が家に来てくれた。
皆でカレーを作り、他の家事も手伝って貰い、一段落着けることができた。「困ったら呼んでね! すぐ来るからねっ」大和はそう言って帰り、砂川も父が帰ってくると、スッと大して何も言わず自分の家に戻って行った。「おや、カレーがある」父は意外がって喜んだ。仕事帰りに病院に寄った父は階段で若い妊婦を庇った話を聞き、「大丈夫だよ、君は両方守りたかったんだろ」と母に語り掛けていたのだった。
次の日、猛男が学校帰りに病院に寄ると水を買ってきてくれるよう頼まれた。(俺にはよくわからねーが、人から人が出て来るんだ、すげー大変なことじゃねーのか?)自販機で水を買いながら、これまで育ててくれた母のことを思い浮かべる猛男。「猛男君、お母さんどう?」大和が来ていた。「病室、2階だったよね」砂川も来ていた。「よしっ! ちょっと母ちゃん励ましてくる!!」猛男は気を取り直し、階段を駆け上がった。「母ちゃん!」病室へゆくと、母が呻いて苦しんでいた!!「タケ、ナースコールで看護師さん呼んで」また動転した猛男は電灯のスイッチを入れたり消したり連発し出し、砂川が代わりにナースコールを押し、車椅子の手配もした。
と、隣妊婦も産気付き車椅子を求めた。程なく看護師が車椅子を1台押して現れたが、母は「先に連れてってあげて」初産だという隣の妊婦に
     4に続く

俺物語!! 4

2015-08-13 22:27:47 | 日記
車椅子を譲ってしまった! 猛男は母を抱え上げた。「母ちゃんは俺が運ぶ!」猛男は看護師の先導で慎重に母を抱え、廊下を進んだ。「兄ちゃんの友達も、彼女も、みんな会いたがってるぞぉ! 皆いいヤツばっかりだぞぉ! 父ちゃんも母ちゃんも待ってるぞぉ! 安心して出てこい!」途中、昨日階段で母が救った若い妊婦とすれ違った。既に子供は生まれ、抱えていた。「生まれたら、この子と友達になって下さい!」「友達も、待ってるぞぉ!!」猛男は分娩室まで母を運んだ。母は大和から貰った御守りを手に「じゃ、いっちょ生んでくるわ、楽しみにしてな!」と出産に臨んだ!
『妹』はわずか1分で生まれた! 4000グラム越え! デカい!!「美人だねぇ」うっかり砂川が言うと、「お前にならやってもいいぞ」猛男に言われ、砂川は困惑した。猛男は改めて小さな妹を見て、「大和、俺はいつか人を助ける仕事がしてーなぁ」と呟いた。帰り道、大和も触発され保母か助産師
になりたいと言い出すと、「それ、文系と理系で全然違うけどねぇ」と砂川に突っ込まれ、「つまんねーこと言うな砂っ」と猛男は即、擁護した。「猛男君、妹さんになんて呼ばれるかな? お兄ちゃんかな?」「そうだなぁ、後は兄さんとか」「猛男でしょ? 皆そう呼んでるし」「猛男?! ま、いいけどよ」3人はそんなことを話ながら、夕暮れの川沿いの道を帰ってゆくのだった。
・・・無事出産、めでたい! うむ、後、5話くらいか。砂川の恋人候補の話をするだけじゃ余りそうだが、ここまでも非常に少ない材料で回してきたからなんとか埋めてくんだろな。