羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

うしおととら 1

2015-08-29 23:09:00 | 日記
「止めるんだ十郎!」「うるさいっ、人間どもが憎いんだ!!」夜の森の中を2匹の大きな獣が1匹の大きな獣を追っていた。森の切り株の傍には首を落とされた人間達の死体が転がっていた。「故郷を奪った人間どもがッ!」「ダメだ十郎!」十郎と呼ばれた追われる獣は森を抜け、車道に出ると対向車に突進してゆく! ぶつかる寸前、飛び上がり頭の辺りから出した『鎌』で車の上辺諸ともドライバーと助手席に乗っていた者の首を刈り取る十郎! 車はガードレールにぶつかり炎上し、十郎は駆け去った。燃える車を二本足で立った十郎を追っていた2匹の獣は見ていた。「あいつは危険だ。人間どもにも俺達にも」「どうやって止めるの?」十郎に呼び掛けていた雄の獣に、もう1匹の雌の獣が問うていた。
「無い! 親父から貰ったお金落っことしちまったぁ!!」金を落とした潮が仙台の公衆トイレで騒ぎ、とらに警察に行けと存外普通にアドバイスされていると、その様子を物陰から伺う若い男女がいた。と、風が吹き街ゆく人々のストッキングや鞄の持ち手の紐、ジャケット等が次々と切れ騒ぎになった。「どうした?」戸惑う潮は前方につむじ風を見た!「風じゃねぇ、鎌鼬だ」とらが警告すると同時につむじ風から斬撃が潮に飛んだ!「うおっ?!」槍が自動で防ぐ! 頭に憑いてたとらは離れた。「妖怪?! うわあぁああっ」状況を把握できないまま、突進してきた冒頭の十郎に呼び掛けていた方の獣の『鎌』で全身を浅く切られた! 変化する潮! 交錯様に相手の鎌を槍で叩き斬った! 折れた鎌の根元を打ち払い、相手の人と同じくらいの大きさの体を地に叩き付ける潮!「何で俺を襲うんだよ!!」槍を打ち込もうとする潮!
「待って下さい!」先程様子を伺っていた男女の女の方が潮に土下座をしてきた。
     2に続く

うしおととら 2

2015-08-29 23:08:52 | 日記
やや懐かしいパッツンパッツンの服を着ている!「申し訳ありません。お怒りはごもっともです。ですが、どうか話を聞いて下さい」意味がわからない潮。「鈍いな、コイツらはお前が槍の使い手か確かめたのよ」「ええ?」潮は相手のはっきりとした意図のわからないが、最初に様子を伺っていた男の方の姿に変化した雄の鎌鼬と、鎌鼬らしいボディコンの女が言葉少なに促すまま、とらと鉄道に乗り、とある山中にたどり着いた。
「山奥に連れてこられちまったな」「やけに落ち着いてるな」「こういうのに慣れちまったのかもなぁ。それに悪い奴らじゃないような気がするんだ」などととらと話しながら山奥の古風な屋敷の一室で待っていると、襖が独りでに開き、蝋燭の灯を1本立てて、和服に着替えた? 鎌鼬の男女が現れた。「獣の槍の使い手であらせられます御身に、折り入ってお願いしたいことがあります」男の方が話す。「何だ?」「お願いでございます。悪戯に殺戮、破壊に走る我らが兄弟、十郎を殺して下さいませ」「どうか」手をつく女の鎌鼬。「お願い致しします」頭を下げる鎌鼬の男女。
「ば、馬鹿野郎! 兄弟を殺すだと藪から棒にっ。俺は殺し屋じゃねーぞ! たくっ、ついてきた俺が馬鹿だったよ!!」帰ろうとすると、鎌鼬は血の染みた布で包まれたモノを潮の手前に投げ置いた。「殺された村人のモノです。放っておけば、人間の御仲間が十郎に倒されるでしょう」鎌鼬の男は頭を下げたまま、潮に対応を迫った。一方、とらは女の鎌鼬に外に連れ出されていた。「何だよ? ワシだけ」「あの話は獣の槍の使い手にだけ必要でアンタには関係無い」「ふんっ、ここはどの辺りだ?」「栗駒山中って言ってもわからないでしょう?! 人間に取り憑いてる程度の下らない妖怪が、400年も生きてるあたしに気安く話し掛けないで!」(400年だぁ? まだガキじゃねーか)
     3に続く

うしおととら 3

2015-08-29 23:08:43 | 日記
「ふうっ」息を吐いて一先ず怒るのを止めたとら。「お前達はもっと南の方に居たんじゃねーのか?」手から鎌を出し、とらの髪を斬りつける女の鎌鼬。「追い出されたのよ、人間にっ」怒りの形相でとらを睨む女の鎌鼬。「人間何て大嫌いよ、だからあんな子供に力を借りるのも嫌なの」潮は男の鎌鼬から話を聞いていた。鎌鼬は3匹で行動し、1匹目が人間を転ばし、次が軽く斬りつけ、最後の者が傷付けた人間に薬を塗る。こうして脅すことで、鎌鼬は縄張りを守ってきた。「しかし十郎は」人間を大量に殺し始めた。「人間と対立することは、鎌鼬の全滅に繋がる」男の鎌鼬は十郎の処分をやむなしと考えていた。
とらも女の鎌鼬と引き続き話していた。「おかしくなった兄さんとやらはどこにいる?」「まさか手伝うっていうの? 獣の槍怖さに尻尾振ってペット同様の地位に甘んじている妖怪がっ」余りの言い様に一瞬唖然となるとら!「な、何ぃ? 取り消せ、テメェらの腐れ血縁者何か知るかよボケ!」構えるとら。「十郎兄さんを侮辱したわね?」再び鎌を出す女の鎌鼬!「死ね!」飛び上がる女の鎌鼬!「さっきの言葉取り消せぇ!」と、気配を感じたとら。「ちょっと待った」「問答無用ッ!」とらは後ろを振り返っていたが、女の鎌鼬は止まらない!「変だ」様子を伺うとらだったが、女の鎌鼬はとらの左腕を切り落としてしまった!「どぅわぁああ?!」叫ぶとら、ここで女の鎌鼬も気配を察し、獣の槍も鳴り出し潮を驚かせた。「来たかっ」男の鎌鼬は障子の向こうを見た!
障子は斬り払われ、枠の壁も崩された!「十郎っ」部屋の外には長髪の先を鎌に変化させた男が立っていた。「兄貴、最後の別れに来たぜ」「最後?」「兄さん!」女の鎌鼬も駆け付けた。「兄貴、俺はこれから人間どもを殺す。殺しまくってやる! うんざり何だよっ」形相が獣じみてくる十郎!
     4に続く

うしおととら 4

2015-08-29 23:08:32 | 日記
「住んでた地を追われ、転々とし、ようやく落ち着こうと思ったらまたここも去らねばならないッ!」「高速道路の工事が始まったのです」潮に簡単に説明する長兄らしい鎌鼬。「もう嫌何だよ! 人間どもに気兼ねして生きるなんてよぉ! アイツらの格好して息を潜めるのはよぉ!!」十郎は人間体の『皮』を引き剥がし、鎌鼬の本性を表した!「だから俺の存在を教えてやる! 人間を殺して! 殺して! 殺して! 殺して!!」怒り始めている潮。「人間の心に、俺の名を刻んでやるんだぁッ!!!」自暴自棄とも取れる十郎は叫んだ。「止めろ! 人間を襲えば俺達は全滅する!」「全滅? このままでも滅びる! 人間のせいでなぁッ!」自身の殺意に呼応するように、総毛立つ異様な気配を感じる十郎。
(何だ? この感じ)十郎は潮の槍に気付いた!(獣の槍ッ!!)笑う十郎。(そうかよ、人間に頼んだか)「そんなに俺を殺りたいかよ、オメーらッ!!」牙を剥き出す十郎に、潮は変化した。「くたばりやがれッ!」激昂する十郎!「人殺す何て聞いて黙ってられるかぁ!!」潮は突進したが、かつて無い速度で額を斬り裂かれた! 笑う十郎。潮は倒れたが、槍は自動で十郎に飛び掛かり、弾かれた!「しゃらくせぇッ!」「伝説の槍も大したことねーじゃねぇかよぉ!」十郎は倒れた潮に鎌をムチのように放った! 潮の頭部に刃が直撃する寸前、ドスッ!! 十郎の胸板を後ろから、切り離されたとらの左手が貫いた!!「何だこりゃあ? のぁあッ!!」とらの手は十郎の傷口を握り締め引き千切りとらの足元まで飛んで戻ってきた。投げ付けた後、ある程度操れるらしい。
「たわけがっ、そいつはワシが喰うんだ」「何ぃ?」「来るのかよぉ!」放電し始めるとら! 傷と相性の悪そうな能力に後ずさる十郎。「今度殺してやるぅっ、兄貴! かがり!
     5に続く

うしおととら 5

2015-08-29 23:08:22 | 日記
あばよ!!」十郎は飛び去った。
「チッ、こんなめんどくせーことやってねぇで行こうぜ、北海道とやらにさっさとよぉ」とらは潮を掴み上げたが、潮は変化も解け、血塗れで動かない!「ん? ばっかやろう!! あれくらいでくたばっちまうヤツがあるかよぉッ!」動かない潮の胸ぐらを掴むとら!「主、この人間に訳あって憑いているようだが、このまま死んでは困るのだろう?」「ああ?! どういうことだ!」「鈍いね、ソイツを助ける方法があるっていうんだよ」とらは鎌鼬兄妹の周囲に電撃を放った!「その方法は?! 言え!」とらは凄んだ。潮の傷はかがりの薬で一瞬で治った。倒される直前から記憶の飛んでいた潮は戸惑っていたが、「とら! あいつどこ行った?!」ととらに迫り、だが出血のダメージは回復しきれていないらしく、また倒れそうになりとらに掴まれ髪で支えられた。「ばーか、動けねぇよ」「でも、止めなきゃ、追うぞ!」潮は直ぐに槍を持って追おうとしたが、とらの先の無い『左腕』を掴んだ為「痛ぇあっ!」とらが叫び潮は振り返った。「どうした? うわあああ?!」足元に転がってるとらの左手に仰天する潮!
「とら、大丈夫かよぉ?!」「うるせぇなぁ! こんなんくっ付けときゃ治るんだよっ」押し退けられる潮。「本当かぁ?! よぉしっ」「痛ぇててててッ!!!」潮はとらの左手をくっ付け、添え木で固定して布で縛った!「人間が腕折ったらこうすんのぉ!!」「ワシのは折れたんじゃねぇよ! 痛いわボケっ!」右手で潮を殴り付けるとら。何だかんだで首にも布を掛けられ、固定した左腕を本当に折れたように吊るされた。「いつも槍でぶっ叩くオメーが、何でいらん世話焼くんだよ?」「ええ? 何でかな? 人間だからかな?」潮は上手く説明できなかった。
長兄の案内で、
     6に続く