羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

恋仲 1

2015-08-19 22:34:49 | 日記
「おじさんのことが原因じゃないだろうな?」終わった、という翔太に葵は問うた。「お金渡したんだよ、2度とあかりに会うなって」「なんでそんなことしたんだよっ」「あんな父親が傍にいたんじゃ! あかりの為になんないだろ?」詳しくは話さない翔太。「お前言ったよな? もうあかりを一人にしないって、忘れたのかよ!」消耗している翔太。「何とか言えよ!」肩を掴む葵。目が合ったが、翔太は葵の手を払った。「帰ってくれ」「お前最低だな」葵は言い捨て、去って行った。
朝、この一件があり、葵は1日仕事に身が入らなかった。気を使った冴木は帰りに「コンクールの参考になるかな」と明日美術館にゆこうと誘ってきた。翌朝、美術館デート前に葵の建築事務所に仕事の資料を取りに行った冴木は、小谷から関連の建築現場で働いている父を探して『芹沢』という美女が訪ねてきたと知らされ、戸惑った。事務所で父の住所を知った当のあかりは千葉の館山行きの長距離バスに乗っていた。
それから冴木は黙ったまま葵と美術館に向かった。「光の使い方が凄いよなぁ」と冴木に話を合わせていたが、花火の絵の前に来ると、思わず見入ってしまう葵。ここで高梨から電話が入り、「あかりまだ帰ってないの?!」と思わず大声を出してしまう葵。電話の後で、冴木は「たぶんあかりちゃんだと思う」と朝、小谷から聞いたことを伝えた。これに「あかりの居場所がわかった。おじさんに会いに行ったんだと思う」葵は電話で翔太に伝えたが、「俺にはそんな資格ないんだ」と翔太は迎えにゆくことを拒否した。その後、カフェで話ながら冴木と休んでいると、翔太からメールがあり、内容に葵は少なからず動揺していた。
葵が冴木と共にマンションに戻ると時間差であかりの失踪を知った公平と七海達が騒いでおり、あかりが父に会いに行ったらしいことと、
     2に続く

恋仲 2

2015-08-19 22:34:41 | 日記
翔太と別れたらしいことを葵が教えると「なんでだよっ?」公平が食い付き、「またあんなことになったりしねぇよな?」とまで言い出すと「なる訳ねぇだろ? ガキじゃねーんだから」と冗談めかし、葵は一人で屋上に行ってしまった。事情がよくわからない冴木は公平達からこれまでの経緯を聞いた。「夜逃げしたんですよ。高三の夏、花火大会の次の日に」公平は語った。
「この間の返事、聞かせてほしいんだけど? って言おうと思ったんだけど」冴木は笑って、他に好きな人ができたと言った。「葵はさぁ、自分が無理して、人が幸せならそれでいいって思ってるのかもしれないけど。そんなの自己満足だよ? 葵が自分を犠牲にする度に、苦しくなる人だっているんだよ?」冴木はあかりの父の住所を書いたメモを差し出した。「ごめん、ありがとう」葵は走った。「瑠衣子さん」しばらくして七海が屋上に様子を見にきた。「自分より、他人が大事で。七海ちゃん、いいお兄ちゃん持ったね」屋上から見える橋を走ってゆく葵を眩しそうに見詰めながら、冴木は言った。
あかりは千葉館山で、表札の無い平屋の一軒家の前に来ていた。チャイムを鳴らすと、ドアを開けて出てきたのは、「どちら様ですか?」中年の女だった。父の名を出すと「主人は留守ですが?」と警戒して言われ、あかりは驚いた!「以前仕事でお世話になりまして、たまたま近くまで来まして、ご挨拶を」咄嗟にごまかすあかり。一方、葵はバス停まで走っていた。昼間カフェで受けた翔太からのメールにはあかりの父には新しい家族がおり、あかりはそのことを知らないと書かれていた。「富山名物ブラックラーメン!」公平に強引に葵のマンションに連れ出された翔太は富山から送られたブラックラーメンを出されていた。「懐かしいだろ? やっぱこれでしょう。今日はとことん俺が話聞いてやる!
     3に続く

恋仲 3

2015-08-19 22:34:33 | 日記
食えよ」翔太はおずおずとブラックラーメンのスープを飲んだ。
あかりは高梨の名を名乗り、居間で父の帰りを待っていた。「ただいま」父が帰ると父の新しい妻は来客を伝えた。「高梨? 誰だっけな?」居間まできた父はあかりを見て固まった。黙って座ったまま父を見上げるあかり。「ああ、どうも、お疲れ様です」他人のフリをしてくる父! あかりはすぐには返せなかったが、「お疲れ様です」なんとか他人のフリに付き合った。「ただいま」小学生の娘も帰ってきた。自分と同じ、しかし真新しい手作りの船のキーホルダーを持っていた。「お父さん、このお姉ちゃん誰? こんにちは」「こんにちは」父は答えず、娘はランドセルを置きにいった。翔太が公平に、あかりの父があかりに金を貰いに来ていたことを打ち明ける中、父の妻はパートに出掛け、父は新しい娘のレイナにも小遣いを渡し菓子を買ってくるよう言って、あかりと二人になった。
父は正座した。「色々とすまなかった」頭を下げる父。新しい妻とは籍を入れるつもりで、レイナは連れ子、金が必要だったと弁明する父。「やっぱり海、好きなんだね」あかりの言葉に顔を上げる父。「よかったよ! 元気そうで。なんかもう死んじゃってるかもって思ってたし」「すまない。本当にすまない」また頭を下げる父。金は自分が返すと言って去ろうするあかり。「結婚するんだって?」「うん」「幸せにな」「お父さんもね」あかりは今の父の家を出た。昔、父から貰った船のキーホルダーを取り出していると、家の前でレイナに会った。「もう帰っちゃうの? はい、お姉ちゃんのぶん」レイナは買ってきたラムネを分けてくれた。「ありがとう」ラムネを口に運ぶあかり。「美味しい」笑うレイナ。「お揃いだね」自分のキーホルダーとあかりのキーホルダーを比べるレイナ。「お父さんのこと、好き?」
     4に続く

恋仲 4

2015-08-19 22:34:23 | 日記
「うん!」「そっか、じゃあね」「バイバイ!」あかりは笑ってレイナと別れた。角を曲がるまでは歩いていたが、曲がると走り出し、泣きそうなあかり。坂道を駆け降り、漁港まで来るとメモ片手に軽く迷ってるらしい葵と出会した。「葵」思わず呼び掛けるあかり。程なく二人は漁港から少し離れた海辺を歩いていた。あかりは少し落ち着いていた。「東京でお父さんに会ったんでしょ? 教えてくれなかったのは、お父さんがあたしに会いたがってなかったから」答えない葵。「やっぱそっか!」あっけらかんと言うあかり。続けてレイナが可愛かったなどというあかり、「一言言ってやったの? 文句、言ってやらないと気が済まないんだろ?」葵は問うてきた。あかりが父が謝るから「なーんも言えないよ」と答えると、葵は海に向かって叫び出した。「勝手にいなくなって心配かけんな!」「葵?!」「すっきりするよ。無理するなよ」再び海に向かう葵。「ここまで来るのにバス代2千500円もかかったんですけど?! 遠いし、暑ぃし」言うこと無くなってきた葵。「ダメ親父ぃッ!!」不意にあかりも叫び出した。「馬鹿野郎ッ!」叫ぶだけ、叫んで、あかりの気も晴れたようだった。
夕暮れの波止場で過ごすあかりと葵。「あたしもう少しここにいるからさ、無理に付き合ってくれなくていいよ?」「気が向いたら帰るよ」夜になっても葵は付き合い、コンビニ? でハンバーガーと花火を買ってきた。食べ終わると二人は花火を始めた。無邪気に花火で遊び、炭酸を回し飲みしたりもする二人。「翔太のこと、大丈夫なの?」「うん、まあ」途中で葵は聞いたが、あかりははぐらかした。翔太は公平と1日話し、多少気が張れたようで帰っていったが、最後まで隠した手紙ことまでは告白していなかった。
花火の後半、思い出話になり、子供の頃か隠れんぼで誰も見つけてくれないまま
     5に続く

恋仲 5

2015-08-19 22:34:14 | 日記
夜になった時、葵が見付けてくれた話になった。「なんであそこにいるってわかったの?」「俺、いつもあかりのこと見てたから。なんでもわかってるつもりだった。だから花火大会の時、なんで気付いてやれなかったんだろうって、ずっと謝りたかった。ごめん、何もしてやれなくて」「でも今、横にいてくれてる。ありがとね」少し黙った葵だったが、「俺、あかりが好きだったんだ。初恋だった」そう言ってあかりを真っ直ぐ見る葵。上手く反応できないあかり。「何びっくりしてんだよ? 普通気付くだろ?」笑ってしまう葵。「言われなきゃ、わかんないよ」「あの時の、あの関係が壊れんのが嫌で、言い出せなかった」「あたしもおんなじ。バーベキューの時、手紙の話したでしょう?」「俺の机に入れたってヤツ?」「本当は、葵が好きって書いた」息を飲む葵。「私も葵が初恋だった」「ええ?」動揺する葵。「何その顔? 普通気付くでしょ?」「言われなきゃわかんねぇだろ?」あたふたする葵。「手紙じゃなくってさぁ、ちゃんと言葉にして伝えればよかったんだよね」あかりはしみじみと言った。
一夜明け、翔太は奪った手紙を前に泣いていたが、始発を葵と待つあかりはバス停のベンチでうとうととしていた。自分の肩に何度か寄り掛かりそうになるあかりの頭を手で肩に預けさせた葵はあかりにキスをした。あかりはまだ起きていたが、身を預けたまま、目を閉じた。
・・・冴木と父の件、回収! 早っ。手紙もほぼ回収だしなぁ。公平が翔太に理解を示し、あかりもこれまでの感謝はするんだろうが、微妙だなぁ。浄化した翔太ルート、有りなのか?