(初回弁論を終え、支援の仲間・弁護団と)
東部労組HTS支部は昨年11月25日、時給制への変更による労働条件の不利益変更の撤廃を求め、日当が8時間分の労働の対価であることを前提として「事業場外みなし労働」を否定した最高裁の判断によって示された「あるべき賃金」との差額請求の裁判を提起しました。
詳細
HTS支部 時給制による不利益変更撤回求め裁判を提起
http://blog.goo.ne.jp/19681226_001/e/00d359af9e22b7883eac9a0e395d6c64
大島組合員・境組合員の2名が原告となっているこの裁判。1月21日、第1回の弁論が東京地裁で行われました。東部労組各支部の仲間が傍聴する中、原告の1人である大島組合員が意見陳述を行いました。
HTS支部の結成、そして前回の裁判、会社による労働条件の不利益変更・・・。大島さんは力強くそして切々と自らの闘いとHTS添乗員の実態を裁判所に訴えました。
次回の弁論は4月14日(木)午前10時30分より東京地裁527号法廷で行われます。
HTS支部の第二次裁判闘争にみなさんのご支援をお願いいたします。
以下、大島さんの意見陳述の内容を掲載します。
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原告の一人であります私は、旅行添乗員として丸20年、うち、被告であります株式会社阪急トラベルサポートにおいては、15年間に渡り、その業務に従事してまいりました。
過酷な労働環境に疑問を感じ、2007年1月に仲間と共に全国一般労働組合全国協議会東京東部労働組合の力を借りて支部を立ち上げ、添乗員の処遇改善、生活と地位の向上を目指し活動を続けてきました。
立ち上げ当初は休日勤務手当や有給休暇もなく、残業代も一切支払われておらず、深夜早朝にかかる手当すらありませんでした。
会社との団体交渉では業務等に関する要望はいくつか叶ったものもありましたが、待遇に関しては常に拒否の姿勢だったので、労働基準監督署をはじめ、雇用保険はハローワークに、厚生年金に入れてもらえるためには社会保険事務所へと、それぞれの関係機関に膨大な資料を持って訪ねてゆきました。言葉にしてしまうとほんの一言や一行ですが、添乗の合間に集まって行うのには随分と時間と労力を費やしたと思います。その甲斐あり、登録型派遣という分類であるものの、実態を評価していただくことができ、ライフラインである社会保険への加入も実現することができました。
また、価格破壊、価格競争が加速したしわ寄せで、ツアーの末端にいる添乗員への負担は年々増すばかりとなっていました。業務の幅や量に際限もなく、時間の長さにも考慮がされず、あれもこれもと何でも屋状態となりパンク寸前でした。
せめて添乗員にも残業代という経費(人件費)がかかるのだということを確認し、これ以上は価格競争の戦力にはなり得ないことを理解してもらい労働状況の改善を図っていこうとしたのが2008年に提訴し、2014年1月に判決をいただいた前訴訟でした。
それにより、会社側の主張する事業場外みなし労働ははっきりと否定され、残業代の存在が確認された判決内容でしたので、今後は徐々に長時間労働も緩和され、また、多少長くなってしまうスケジュールの日は頑張った分、増収につながるであろうことを期待しておりました。添乗員はワーキングプアの代表選手のようなものですから。
ところが、判決から8か月余りたってようやく時間管理が開始されたのですが、なぜか日当制から時給制へと変更され、しかもその時給額が低く設定されたので、今度は長時間働かなければこれまでの収入すら維持できないという状態に陥りました。更には前後計2時間しか労働時間として判定されなかった長い航空機移動の日も、それでもそれまでは日当が保障されていたところ、たった2時間分のみの時給しか支払われなくなるなど、私たちにとっては大きな不利益変更となってしまいました。
私はヨーロッパ方面への添乗がほとんどなのですが、直行便でも片道平均約12時間も搭乗します。間違いなくそのツアーのためだけに否応なく費やす時間です。乗継便を利用する時の飛行はさらに長時間となり、私たちは航空会社を選ぶこともできません。日本到着の日は確かに午前中に帰着できることもありますが、それは時刻表であっても確約されたものではなく、遅延も大いに想定され常にそれに対応する構えでいなければなりません。夕方や深夜の帰着も勿論あり、それで1日がほぼ終わっているのにその日2時間分の収入にしかならないというのはどうにも納得がいきません。私は、飛行時間は日当の範囲であると理解しています。
時給額についても、前訴訟の判決に従い、それまでの日当額を8時間で割って算出するべきだと思います。
残業代の計算に当たり、まさにそのことについて争っている最中に、労働基準監督署の是正勧告が出されるやその直後、会社は半ば強引に、かつ一方的に真っ向から反する就業規則を作成し強行したのです。納得のできない内容の就業条件明示書に印は押せないと当時の課長に私は申しましたが、押してもらわないとお仕事をしていただくことができなくなるとおっしゃられたので、やむなく納得はできないけれど生活確保のためであると告げて捺印し、以降、毎ツアーごとでは角が立つと思い、年に1~2回ある査定の時にはそのように意思を表しておりました。また団体交渉でもその旨告げております。
現在も続く長い争いのうちに、会社の強引な主張が常態化したような形になっていましたが、ようやく最高裁においてみなし労働が否定された今、その文言が盛り込まれた就業規則はもはや無効であり、時間給は8で割り出すべきと考えます。
それ以前に、ツアー中の始業から終業までの全てが労働時間であると認定されているので、日当分(8時間)を下回る労働日は帰国日を除いてはほとんどないのだから、最低限日当は確保され、日当を減額したり、ましてや時給制にしなければならない理由すら見当たりません。
会社は、2012年春、深夜手当の支給や社会保険への加入による負担と業績赤字を理由とし、添乗員の日当額の大幅改定を行いました。
新しい賃金テーブルが作成され、ランクを分ける線引きを変更したため、実質
多くの添乗員が減給されるという状況になりました。平均で2千円前後、中には5,6千円の日当額ダウンとなった人もいて、私も3千円ほど一気に下がりました。日当3千円の減額というのは、その頃年間170日前後の添乗日数でしたから、年収にして50万円以上ものダウンです。
あまりの減収に愕然としましたが、会社の負担もある程度は理解していましたので、やがて残業代が支払われるようになれば何とか・・・と、悔しさが残りつつも未来に期待していたのです。
けれど、適正な残業代を得るために、最高裁まで闘ってもなおまだ、こんなにも難しい・・・というのが現実です。
そして長時間労働もこれにより正当化されてしまっているかのようです。
経験を積んでも、ミスをしなくても、良い顧客評価をいただいていても、外的要因がなくても、会社の都合と一存で簡単に下がるし、頂けるツアー本数もコントロールされる。この数年間、めまぐるしく変わる年収額に翻弄され、将来どころか現在の生活設計もままならないのが現状です。
数か月前、会社から突然、今後ツアーの受注を減らすので私たちへの仕事の供給も減る、もしくはなくなると伝えられました。会社は株式会社阪急交通社の完全子会社であり阪急阪神ホールディングスの傘下にあります。グループ内での派遣を8割に抑え、グループ外を2割以上にしなければならない、派遣法による、いわゆる「専ら派遣」の問題が解消できずに、労働局から是正勧告が出されたのだそうです。グループ外への派遣先を増やすことができないから、分母を減らし率を上げるのだという説明でした。仕事の供給ができなくなると社会保険加入の要件も満たさなくなるので該当者から徐々に喪失の手続きに入るとのことでした。
実際私は、先月12月は1ツアーも仕事が頂けず、今月も無く、不安な思いで年を越しました。苦労して加入を実現した社保も、やがて失うことになるのでしょう。本当に、涙が出ます。
それでも、たとえ私が今後添乗の仕事ができなくなってしまっても、前訴訟からのそれを機とする不利益変更を、このままにしておきたくはないと思い、再びの訴訟を決意いたしました。
裁判所におかれましては、どうか再度、適切な判断をお願い申し上げます。
以上
10年前からこのブログを読み、投稿もしてきました。
私の派遣先も4月から時給制となりました。
早朝夜間の業務や、夜中に何度もお客様から起こされることに対して、少しは対価が払われるようになったのは進歩でしょうか?
しかしながら、航空機内での勤務は2時間というのは納得できません。一般企業の勤務者は出張時、労働時間外とはされません。反対に出張手当が支給されます。
お客様のいる中、閉じこめられた機内で、消灯時間もあり、自由はありません。読書程度はできるので、すべての時間とは言いませんが、2時間はあまりにも実態から乖離しすぎです。
機内、ホテルチェックイン1時間後、夕食後は業務外ならば、パンフレットにも「添乗員の勤務時間」と大きく提示し、参加者に周知させるる義務があります。
今回のツアー参加者に元労働基準局の方がいました。できるかぎり多くの添乗員が、各労働基準局、厚生労働省などへ訴える、相談するという行動をとるようにとのご指導をいただきました。
水面下で動いているようなこともおっしゃていました。とにかく、添乗員が諦めることなく声をあげていくことです。
5月31日発信のYahoo!ニュース編集部/AERA編集部
にも、添乗員の実態が紹介されています。こちらにも、メールを送りました。
皆さんも、声をあげ続けていきましょう!!