添乗員の長時間労働を温存させる不当判決糾弾!
「偽装みなし労働」をめぐる裁判で出された最高裁の判断をねじ曲げる時給制導入の撤回を求めて東部労組HTS(阪急トラベルサポート)支部が2015年11月に提起した裁判。今年3月、東京地裁は添乗員の長時間労働の実態に目を背ける不当判決を出しました。
【参考】「HTS支部 時給制への不利益変更撤廃を求める裁判 不当判決糾弾!」
https://blog.goo.ne.jp/19681226_001/e/73a548f96696934af4878a737a6b7e94
これをうけ、HTS支部は東京高裁に控訴。その控訴審(第2民事部 白石史子裁判長)の判決が11月15日に出されました。
東京高裁は会社側の附帯控訴を容れ、一審で認定された原告2名分の「不払い残業代」(固定残業代の時間<1日4時間>分を超える労働に対する残業代不払い分)80万円余りから会社が任意に支払った金額を差し引いた18万円余りと遅延損害金の支払いを会社に命じました。
内容(裁判所の判断)に関しては、実態に反した会社側の主張に沿って時給制への変更を「合理的」と一方的に断じるなど、不当判決であった一審の判断を基本的に支持する基調となっており、HTS支部が容認できるものではありません。
HTS支部は添乗員に長時間労働を強いる要因となっていた「偽装みなし労働」(「事業場外みなし労働」を「理由」とした残業代の不払い」)につき、その撤廃を求めて闘ってきました。
2014年1月、最高裁は「添乗員の労働は『事業場外みなし労働』には当たらない」との趣旨の判断を示し、これが確定しました。
最高裁の判断をうけ、HTS支部は会社に対し「8時間分の賃金は確保しつつ、8時間超の時間について残業代を支払え」と求めました。それが最高裁判断の趣旨であり、「あるべき賃金体系」であるはずです。これにより、これまで支払われていなかった残業代を会社に支払わせることで添乗員の長時間労働が抑制されることが期待されました。
しかし会社が行ってきたのは時給制への変更でした。時給は従来の日当を13で割って算出されました。また、飛行機に乗っている時間も実態に反し一部のみが労働時間=大部分は「非労働時間」とされ、時給支払の対象外とされました。これにより、従来の日当制での賃金水準を維持・上回るためには長時間労働が必至となりました。
HTS支部の反対にもかかわらず強行された時給制導入により、添乗員の長時間労働の実態は変っていません。その実態は原告のひとりである大島組合員が訴えている通りです。
【参考】「HTS支部 時給制への不利益変更撤廃を求める裁判 控訴審判決を迎えるにあたって」
https://blog.goo.ne.jp/19681226_001/e/62b85335d0c8942c522b201bab21e8c1
今回の東京高裁判決では、このような添乗員の実態がまったく考慮されていません。
時給制への変更について東京高裁は、「前訴最高裁判決等により不払とされた割増賃金の支払をしないとの目的でされたということはできず」と一方的に判断し、時給制導入が「前訴最高裁判決等を踏まえた賃金体系の改正案として、一つの合理的な選択肢であるということができる」と会社側に立った判断を行いました。
まったくもって容認できるものではありません。
東京高裁の判断は、前回の訴訟の結果、最高裁の判断によって求められるべき「あるべき賃金体系」を否定するものです。司法自身が司法判断の趣旨を否定することがあっていいはずがありません。
また、東京高裁の判断は添乗員の労働実態をまったく無視するものです。長時間労働が継続することにより添乗員の命・健康が脅かされることの不利益をまったく考慮していません。添乗員の命と健康をまったく無視するものです。
HTS支部はこのような不当極まりない判決に屈することなく、添乗員の待遇改善の運動続けていきます!