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「小倉末子女史ピアノ独奏会」 帝国劇場 (1926.6)

2012年09月07日 | ピアニスト 2 小倉末子

   

 上左の写真: 『歴史写真』 大正十五年 〔一九二六年〕 八月号 第百五十七号 に掲載されたものである。〔なお、この写真と下の説明文は、すでに『西美濃わが街』 No.252 の中で「一枚の写真から覗く「日本洋楽事始」」で紹介されている。〕

 一万円のピヤノを弾ずる小倉末子女史 

 女流ピヤニストとして其名高き小倉末子女史は久しく楽壇から遠ざかり専心研究に没頭すると共に門下生の教養に余念なかったが、東京音楽学校教授ネトケ・レーヴェ夫人の賛助の下に、今回新にアメリカから買ひ入れたメーゾン、エンド、ハモクンのグランドピヤノ価格一万円といふのを以て独奏会を開催することとなり、六月二十日午後一時から帝国劇場に於て満場立錐の余地なき聴衆の前に天稟の妙技を発揮した。写真は即ちピヤノに対へる小倉女史とネトケ夫人である

 上右の写真: 『写真通信』 大正十五年 八月号 第百五十号 に掲載されたものである。下は、その説明文。 

 一万円のピアノの音色小倉女史の妙技

 久しく楽壇から遠ざかつて専心研究に没頭してゐた洋琴家小倉末子女史は今度一万円の巨費を投じて米国から買ひ入れた世界最高級のグランドピアノを以つて去六月二十日帝国劇場に華やかな独奏会を催した。が当日集つた紳士淑女が何如に女史の芸術に陶酔した果か改めて云ふがものはなからう。写真は花環に埋つた小倉女史と賛助者音楽学校教授ネトケ女史

 なお、当日の演奏は、写真では分りにくいが、和服ではなく洋服での演奏のようである。

 

 上は、当日のプログラムの裏表紙、下は、記載の日文のプログラムである。

 大正十五年六月二十日(日曜日)午后一時
 丸の内 帝国劇場 に於て

  小倉末子女史ピアノ独奏会

    賛助出演 ネトケ、レーヴェ夫人

         主催 葵会
 
    演奏曲目
 
  一、ピアノ独奏
      プレリュードとフューゲ(オルガン フューゲ) … バツハ作 リスト編
  二、独唱
      あゝ無情(コンセルト アリア)        … ベートーヴェン作
  三、ピアノ独奏
   (イ)練習曲 作品第二十五番の一          … ショパン作
   (ニ)練習曲 作品第十番の五            …   〃
   (ハ)ファンタジー アンプロムテュー        …   〃
   (ニ)子守歌                    …   〃
   (ホ)バラーデ 作品第二十三番           …   〃
  四、ピアノ独奏
      ヴァリェーション 作品第二十一番       … ブラームス作
  五、独唱
   (イ)思ひ出                    … ブラームス作
   (ロ)消え行く我がうたゝねの夢           …   〃
   (ハ)太鼓の小唄                  …   〃
   (ニ)薔薇に似たる我が恋人の唇           …   〃
  六、ピアノ独奏
   (イ)夜の曲                    … スガムバッティ作
   (ロ)泉のほとり                  … リスト作
   (ハ)トッカッタ                  … デビュッシィ作

 また、この独奏会については、『帝劇』 大正十五年 八月号 第四十五号 (一九二六年七月)の消息日記に次の記録がある。

  六月 □二十日

   マチネー、小倉末子女史ピアノ独奏会、開演午後一時(劇場貸切)。久邇宮朝融王殿下、同妃知子女王殿下、閑院宮華子女王殿下台臨


 なお、上の『歴史写真』の同じ八月号には、次の写真と紹介もある。

 

 天才ピヤニスト井上園子嬢(九ツ)

 六月二十二日日比谷公園音楽堂に於ける大演奏会にモツアルトの難曲を弾いて大喝采を博した天才ピヤニスト井上園子嬢(九ツ)である

 さらに、『音楽グラフ』 七月号 第四巻 第七号 大正十五年七月一日発行 に、次の写真及び 演奏会 欄に下の記事がある。

 

 東京音楽学校教授
  洋琴家 小倉末子女史(右)
 六月二十日帝劇で久振に独奏会を催す、声楽家ネトケレーヴェ夫人の賛助出演もあった。

 小倉女史の独奏会

 久しく研究に没頭して公開演奏をしなかつた洋琴家小倉末子女史は葵会主催の下に六月二十日日曜日午後帝国劇場でリサイタルを開き声楽家レーヴェ夫人の賛助出演もある演奏曲は一、独奏バッハ作リスト編プレルードとフーガ(オルガンフーガ曲)二、独唱ベートーベン作あゝ不忠実者よ、三、独奏ショパン作エツード作品二十五の第一、同十の第五、同ファンタジェ・インプロンプツ、同ベルセース、同二十三バラッド、四、独奏ブラームス作品二十一変奏曲、五、独唱思ひ出、我が眠は静まり行く、太鼓の歌、吾が乙女は薔薇の如き唇、六、独奏、スガンパチー作ノクターン、リスト作泉のほとり、デビュッシー作トッカッターであるが女史の使用するピアノは米国のメーソン・エンド・ハムリン会社製で随分高価なものだと。



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