■蓮如は天皇という峠を越えるために豹変する。仏法の領域に閉じこもり、生き仏への道を進む。国家と離れた世界で本願寺法主の権威を樹立するためだ。国家の外部における擬似天皇として生きるために
天皇の権威は政治側に属するか、それとも宗教側に属するか、蓮如には判然としていなかった。なぜならそれは蓮如の二重基準の枠を踏み越えた存在だったからである
だから、蓮如は生き仏になることで、その圧倒的な権威に対抗しようとした。蓮如は天皇のように、法主の地位を確立したかった
■信長は自己神化へ進む。その欲望で安土城を作り、その近くに總見寺を移築する。その信長も天皇は権威の高峰だった。鎌倉将軍も、室町将軍もついに手をつけることができなかったものを、信長もまた手をかけて抹殺することはかなわなかった。利用することはできても、その地位に代わることはできなかった
■蓮如と信長の宗教革命は、15世紀の応仁の乱と、16世紀の戦国争乱がそれを可能にした
にも関わらず、13世紀の鎌倉仏教が宗教改革を実現したという常識が、これまでまかり通ってきた【法然、親鸞、道元、日蓮、の宗教運動】
蓮如は、国家を手放すことで、生き仏になることを模索し、ついに民衆宗教の基盤を築くことに成功した
信長は宗教を排除した国家の内部で、自らを生き神に祀りあげる野心をあらわした。が、信長はついに生きて神にならず、死んで神に祀られることもなかった。傲慢の罪ゆえに日本教徒の根本倫理を突き崩す罪を犯したからである
完