住む側・・つまり、施主側の目指すものは価値のある住まいづくり。
価値は人それぞれに求めるものは違ってくるが、簡単に表現すれば、納得できる住まいを作る事にあり、身の丈に中で、精一杯の住家を作る事なんだろうが、それはまだ確立されず、選択肢は絞り込めず、迷いの中で決めかねているのが現実なのかもしれない。
中には、悔いを残し後悔で終わってしまった人もいるだろうし、こんなものだと自分に言い聞かせ、出来上がった事に満足感を感じている人もいるだろうが、私が住まいづくりに長い間関わって来て思うことは、あまりにも簡単に事を進め、家作りの中で最も大切なものを見逃してしまい、家作りの過程を大事に考えず、人を信じることを優先し、信じた人に任せてしまう風潮が日本人の人の良さではあるが、それが結果として良い住まいづくりに繋がらない結果となっている。
私たちから見て、決して安くない金額なのに、使っている仕上げ材は、クロスと集成材とで作られ、自然素材は何処にも見られず、安っぽい色と木に似せたシートを貼った建材で作られ、坪単価を聞けば80万円だと聞かされ、かかった費用だけは高額で、内容は信じられない程のお粗末な建物がいま尚建てられており、それを買った人も高いとは思っていない。
つまり、高いのか安いのか、妥当な金額なのかも判断できないのが現実なのだろう。
高い費用で立てたから、良い家なんだろうと思ってるようで、私に出来栄えを聞かれても「立派な家が出来ましたね!」・・・としか言いようがなく、
もっと慎重に家作りを考えれば、この金額なら、もっと良い家が出来るだろうに!・・と思っても、出来上がってしまってからでは、何も言えず、「何でこんなクロスだらけの家が、こんなに高いんだ?」と思わないのだろうかと不思議に思えてならない。
永い住宅ローンを組み、長い年月積み立てたお金を使い果たし、夢を託し住家を作るのだが、その最善の方法を見つけられず、担当の営業マンが正直そうだからとか、真面目そうだからとか、そんな些細な理由で決断してしまう人が多いように思える。
大金を注ぎ込み建てる家なのに、もっとしっかり見極め、内容をしっかり理解し、高い買い物をしないよう個々の単価を知った上で買うべきなのに、それをジャッジできるだけの単価も分からず、信じてるから裏切らないだろうと思うしか手立てが無いのが現実なのかも知れない。
素人だから 私には分からない、だから安心する業者に任せるのが最善の策だろうと、大手ハウスメーカーに依存し高い経費を余儀なくされ、その経費の高額さも分からず「信頼できる業者だから」との理由で、ラベルに資金を注ぎ、品質や居住性や、健康に対し踏み込まず任せてしまう。
今後、日本のリホーム工事においても、もっと慎重に事を動かさないと、
施工業者の都合のいいペースで動かされてしまい、結果的に高い金額を支払うことになってしまう。
専門知識を持っていない人が、プロとの交渉は不可能だと考え、出来れば
業者と同等か、或いはそれ以上の知識を持って交渉に臨まないと、プロが説明する言い訳を見抜事は出来ず、結果的には業者のペースで進められることになり、業者の都合のいい予算組みを認める事になる。
N邸新築工事の予算組みにおいても、もしジャッジできる知識が無ければ、予算は出された金額を受け入れるしか方法はなく、もしその金額が不可能なら、建物を縮小し、設計変更を考えなければならなくなっていただろう。
今回のN邸予算は、初回見積もり金額が3、050万円で、その根拠である見積もり明細項目は約700項目におよび拾い出された数量と単価を一つ一つ検証し、過去に収められた金額も参考にし、業者の無理の無いところで金額を調整し、その内容を業者に説明し、第二回見積もり修正金額は2,800万円、このやり取りを4回繰り返し、設計者と業者はお互いの信頼の中で、お互いの技術や知識を認め合った関係で交渉が進むため、業者に対する押し付けもなく、値切りも無く、進める。
最終的に施工業者と折り合いのついた金額は、2500万円で決着がついた。
施工業者の 工務店経費は総工費(原価)の10%とすること。
お施主さまにお願いした項目は、食卓テーブル、テレビ台、等の家具は今回我慢して頂き、契約金額に含まず、工事が進む段階で、予算を再査定しながら、家具工事を復活させる方向に同意をいただいた。
このように。住まいづくりは、業者が作るのでも、設計者の意思で動かされるのでもなく、三者が同じ方向を向き、無駄の無い三者が認め合う家を造らなければならない。