斎藤秀俊の眼

科学技術分野と水難救助、あるいは社会全般に関する様々な事象を一個人の眼で吟味していきます。

地球環境と技術その6

2015年12月16日 18時23分07秒 | 講義記録
エンジン用水素フリーDLCバルブリフターに関するPDFはこちらです。

製造装置として、アークイオンプレーティング法が記載されています。この方法の難しいところは、グラファイトターゲットが水分を吸いやすく、そこに水が含まれていると、アークを当てた時に、水分が蒸発して出てきます。これがプラズマ中で分解すると水素となり、膜中に混入します。水素が入ると、DLC膜の硬さがいっきに落ちます。さらに、水分は真空炉の壁面からも出てきます。そのため、メンテナンスで真空炉を大気暴露するときには、空気中の水分が真空炉の壁面にこびりつかないように細心の注意を払います。


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地球環境と技術その5

2015年12月16日 18時04分03秒 | 講義記録
本日の講義、160人の学生が朝の1限から集まり、ほとんど寝る学生がおらず、かなりの熱気をもって聴講する姿に、たいへんうれしく感じました。

朝いちばんの奈良東大寺盧舎那仏像について。建立開始は745年でした。本体鋳造は747年、開眼供養は752年5月26日です。金メッキは752年4月2日に開始となっていました。

金アマルガム法による水銀中毒については、こちらに書かれています。

また、日本の金メッキの発祥は福井県だと主張するページがこちらにあります。盧舎那仏の150年くらい前にすでに金メッキが施されていたとしています。これはこれで、なかなか面白い読み物です。ぜひ読んでみてください。

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DLC/SWCNTsコンポジット

2015年12月14日 06時56分25秒 | 斎藤秀俊の着眼
"Conditions for forming composite carbon nanotube-diamond like carbon material that retain the good properties of both materials" J. Appl. Phys. 118, 194306 (2015)
フィンランドのUniversity of HelsinkiとAalto Universityの共著論文。

カーボンナノチューブとダイヤモンドライクカーボン(DLC)のコンポジットを作る研究。
ナノチューブはシングルウオールで、高温触媒CVDで形成。一方DLCはカソーディックアークで形成。PVDによるDLCの合成だから、ナノチューブの上に形成可能といえばそれまでの話。

ナノチューブ上にDLCが堆積できるか分子動力学シミュレーションと実験で確認していて、高sp3-DLCが特定の状況の下でナノチューブ上で形成されるとしている。温度600K以上では形成しないし、高sp3を得るためにはナノチューブ側にも少し工夫が必要で、このあたりの最適化は必要だ。

ただ、高sp3-DLCのsp3比率の決定にXPSを使っているところに不満が残る。XPSによるsp3比率の決定方法は世界的に認められているわけではなく、やはりNEXAFSやNMRによるクロスチェックがなくてはならない。ただ、この論文の意図するところは、高sp3であるところが必至というわけでもないので、公表にこぎつけたというところか?

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東京海洋大学明治丸

2015年12月13日 06時34分46秒 | 学校.学会訪問記
東京海洋大学越中島キャンパスにある明治丸。
平成25年12月より、東京海洋大学と文化庁により大規模修復工事が行われ、平成27年3月に竣工しました。
今回は、改修後初めての訪問となりまして、昼と夜の姿を写真に収めました。
 

同船は、明治政府が英国ネピア造船所に燈台巡廻業務用に発注し、明治7年に竣工した鉄船です。単に燈台業務ばかりでなく、ロイヤルシップの役目も兼ねていました。明治天皇はじめ多くの高官が乗船し、わが国近代の重要な場面で活躍しました。

明治9年、明治天皇が東北・北海道巡幸の際、青森から乗船され函館を経由し7月20日に横浜に安着されました。この日を記念して昭和16年に「海の記念日」が制定され、平成8年に国民の祝日「海の日」となりました。わが国に現存する唯一隻の鉄船であり、鉄船時代の造船技術を今に伝える貴重な遺産として、昭和53年には、国の重要文化財に指定されました。

このように由緒正しい船を陸置している大学は、やはり由緒正しいと思います。

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ういてまて教室

2015年12月12日 09時00分56秒 | 水難・ういてまて
先日、仙台のある会社を訪問しました。大学の実務訓練で私の研究室の学生が4か月間お世話になっているので、ご挨拶と実務訓練の進行状況の確認をするためです。
社員の方が、「うちのこどもが学校でういてまて教室で浮いて救助を待つ訓練を受けました」と報告してくれました。宮城県では全県を挙げて、小学校を中心にういてまて教室の拡大に取り組んでいます。災害から身を守るために、誰かが守ってくれるのではなく、自分が自分で守ることがまず基本だという考え方をこうやって共有することが重要です。もちろん、自分で守り切るということではなく、救助がくるまで命をつなぐということなのです。

社員の方は長岡技術科学大学のご出身ですが、ご自分のお子さんから「今日、ういてまて教室があったよ、うまく浮けたよ」と話があって、「その技術はお父さんの大学のプールから世界に広まったんだよ」と会話が弾んだのかな?などと勝手に想像していました。命の会話がこうやってそれぞれの家庭で弾んでいることを期待しています。

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