斎藤秀俊の眼

科学技術分野と水難救助、あるいは社会全般に関する様々な事象を一個人の眼で吟味していきます。

なんでいまさらZnO?

2015年12月09日 07時31分22秒 | 斎藤秀俊の着眼
A comprehensive review of ZnO materials and devices (J. Appl. Phys. 98, 041301 (2005))のレビュー論文がホットな様相だ。
Virginia Commonwealth UniversityのH. Morkoçのグループの論文で、酸化亜鉛の技術的問題(例えば成長、欠陥、p型ドーピング、バンドギャップ、ナノ構造)に加えて、ZnOの機械、化学、電気、光学特性を徹底的に議論している。

だれがそんなに引用しているのか現段階では不明であるが、だいぶ前に流行ったZnOが復活の兆しにあることは間違いない。われわれの研究グループでも、久々にZnOウイスカー群の研究を再開することにした。優れた(欠陥の少ない)ZnO結晶から、紫外線エキシトン発光が得られるZnOウイスカー群である。

なお、今月の話題として、Field evaporation of ZnO: A first-principles study (J. Appl. Phys. 118, 025901 (2015))がある。カナダのDalhousie Universityの研究グループの論文だ。原子プローブトポグラフィーの最中に、電界印加によるZnOの蒸発現象を扱っているのだが、これってわれわれの研究室で15年くらい前にやっていたZnOウイスカーの電界放射実験を詳細に検討したバージョンのように感じる。

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今朝の新潟日報一面

2015年12月08日 01時21分40秒 | 斎藤秀俊の着眼
今朝の新潟日報の一面の記事

びっくりしたのは、何で今頃になってこのような話題が提供されるのだろうと。米軍から大学等に対して研究費が支給されているという事実はだいぶ前から五月雨的に扱われていて、かなりしっかりと解説されているものもあります。
昨年は、東大独自ルール「軍事忌避」に反旗というタイトルで東大の例が報道されており、「そうか、東大が研究費を受け入れていたんだ」と思い込みを叩かれたようなショックを受けたものでした。研究している立場からすると、しょっちゅうこのような内容がマスメディアに取り上げられてるので、「なぜ今朝の朝刊に?」とびっくりだったわけです。

米軍と一言でくくるけれども、
合衆国陸軍(US Army)
合衆国海軍(US Navy)
合衆国空軍(US Air Force)
合衆国海兵隊(US Marine Corps)
合衆国沿岸警備隊(US Coast Guard)
からなっており、それぞれ次の研究所を抱えています。

US Army Research Laboratory (ARLと呼んでいます)
U.S. Naval Research Laboratory (NRL)
Air Force Research Laboratory  (AFRL)
Marine Corps Warfighting Laboratory
Navy and Marine Corps Corporate Laboratory
Coast Guard Research and Development Center

アメリカの大学などの研究機関では、こういった研究所から共同研究の申し込みもあるし、研究所がコンソシアムを組んでオブジェクトオリエンテッドで軍事応用研究を進めています。

私が勤務していたPennsylvania State University (PSU) でも軍研究所との共同研究が盛んでした。Materials Research Laboratory (PSUの材料研究所)は特にNRLとの共同研究が古くから盛んで、たとえば超音波ソナーの音響素子などの分野で大きな成果を得ています。日本の大学にもそれなりの金額が準備されてきているようですが、20年前に私がPSUに勤務していたころでさえ、金額が桁で違いました。

米軍研究所の研究者は、先日のMRSにもたくさん来ていました。世界中の研究者の研究情報を集めて、応用展開が期待できそうな研究を行っている研究者に接触をします。別に軍関係者じゃなくても、当たり前にみんな興味のある分野の研究者に接触しますが。共同研究でさらに発展させようというときには、軍研究所が準備する研究予算に予算申請をしてもらい、当たれば研究が始められます。もちろん、日本の科研費と同じで、採択されなければ研究費はもらえません。

日本の大学の場合には、私が知っている限りで、米国本国の研究所から在日米軍の事務所を通じて声がかかり、まず、コーディネータが調査にきます。コーディネータの調査結果と本国の要望がマッチすれば、研究予算の申請という手続きになります。

因みに、私がPSUに勤務していたときに、ある大きなプロジェクトが走っていました。私にも声がかかり、「プロジェクトに参加するなら、研究費と給料をそこから出す」といわれましたが、断りました。テーマがもろに大量破壊兵器に関することだったからです。

アメリカにいたころは、プロジェクト名からそれがすぐにわかるようにしてあるテーマが目立ちました。ある意味、その研究の意味を知ったうえで参加する、しないの意思を明確にできるようにしてあると感じていました。ここが重要だと思います。軍事関係研究といっても、平和を維持するための研究から、大量破壊兵器に関する研究まで千差万別です。自分のかかわる研究の意味を理解してから参加することが重要です。単に「研究費がほしいから」とか、「生活のためにやむを得ず」は言語道断で、軍事研究に従事するからには、その結果を想像する力が必要です。アメリカで研究生活を送り、人生の指針を作った中に、軍事研究に関する一貫した考え方を形成できたことは本当によかったと思います。

帰国してから、在日米軍のコーディネータと話をする機会が何度かありましたが、「重要な研究テーマは日本に出すわけないよ。だって日本の大学の先生は何でもペラペラしゃべちゃうから。」だと。私もペラペラしゃべってしまったほうで、米軍の研究費はいただいていません。昔の企業の方々も同じ事を申しておりました。最近だいぶ口の堅い先生が多くなってきているとは思いますが。。。





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高級ハンバーガーその2

2015年12月07日 07時06分56秒 | 斎藤秀俊の着眼
朝日新聞デジタルにも記事で扱われている高級ハンバーガー

1個1千円を超えるようなハンバーガーで、ハンバーグの良さにポイントがあるという。そうかなあ。ボストンで味わってきた感想は、ハンバーグが良いものかもしれないけれども、味はどうかというと、個人的には「既存店の大きさくらい以上では、同じ味が続き食べ飽きしてしまう。」


ボストンのお店でもそうだが、ハンバーガーにアボカドが大量に入っている。いま流行りのオー・ボン・パンの店(中村さんがそういうから、こう表記)のサンドイッチにもアボカドがふんだんに使われていて、旨いんだか、なんだかわからない状態。とにかくアボカドが流行っている。

私の眼で見る限り、アメリカの高級ハンバーガーのお店は、ハンバーガーが高級ではなくて、レストラン風のお店が高級っぽいというところなので、値段だけを見て「ハンバーガー」そのものに期待しないようにしたい。なお、ハンバーガーとカリフォルニア赤ワインのコンビネーションはよかった。ワインがおいしく感じた。

それにしても、ボストンのオイスターバーでカキといっしょに飲んだカリフォルニア白ワインはめちゃくちゃ甘くて、でもカキと一緒だととてもおいしく感じた。そのお店の自慢の食材にあったワインを準備できているところが高級レストランといわれる最低条件だろう。

高級ハンバーガーではなくて、「ハンバーガーを売る高級レストランはハンバーガーにあうワインが出せるお店だから、ワインと一緒にいただかなければ、金を出す意味がない」というところだろう。


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ポルシェEV

2015年12月06日 22時38分22秒 | 斎藤秀俊の着眼
ドイツのフォルクスワーゲン傘下の高級車メーカーと、最近なにかとフォルクスワーゲン傘下と形容詞がくっつくポルシェ。
2020年までに電気自動車(EV)の新型スポーツカーを発売するそうだ。

ディーゼル車の排ガス不正問題は、なんで今さら?という感じだったが、要するにEVやFCVへの転換を加速させるための爆弾記事の様相だったので、これはその通りだろう。

発表されたコンセプトと感想。
1回の充電で500km以上走行でき・・・これくらい走れるとありがたい。
スタートから3・5秒で時速100kmまで加速できる・・・スポーツカーだからという理由はわかるが、公道で必要か?
高速充電できる仕組みを開発し、15分間で80%の充電が可能・・・電流はどれくらいだろう?小さな変電所なみの設備が必要になる。

充電時間が短ければ、200km走れれば十分だけれども、高速道路を走行しているときに160kmごとに30分の充電では、80km/hで走ったとしても実質時速が160km/2.5hになってしまう。確かに2時間走ったら休憩といわれてしまえばそれまでだが、休憩の間隔の感覚は個人の裁量だから。

電気自動車の加速については、たいへんよいことはすでに述べたが、自動車を安全に運転して社会全体の利益が増える方向にもっていこうとしたとき、3・5秒で時速100kmまで加速できる性能が公道で果たして必要なのか?「買わなければいいじゃないか」といわれればそれまでだが、なんの落ち度もない人が交通事故の被害にあってバカをみるのも社会。

今の高速充電装置でも、80Aとか120Aの電流で充電している。15分間で80%の充電というと、ざっくり600Aくらい流さなければならず、これに耐えられる電線(充電器からクルマまで)はいまより太く、重くなる。装置そのものも現在の50kWタイプが250kWタイプくらいにならないとダメ。

いま、あなたのおうちの電気の契約電流が50Aだとすれば、5kWの充電装置と等価と思ってよい。50kWは10軒分、250kWは50軒分。15分間で80%の充電が可能で、500km走行というと、あの充電器に50軒分の電気を集中させるということに。

なお、技術的にいえば、製品の最高性能を常に目指すのも流れなので、それを否定する気はさらさらありません。




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「セブン銀行より大切なお知らせです」、懲りもせずにまた不正誘導

2015年12月05日 21時10分19秒 | 斎藤秀俊の着眼

「こんにちは!

(2015年12月1日更新)
「セブン銀行」のシステムが安全性の更新がされたため、お客様はアカウントが凍結?休眠されないように、直ちにアカウントをご認証ください。
以下のページより登録を続けてください。

https://ib.sevenbank.co.jp/IB/IB_U_CO_002/XXXXXXXXX  (XXXXX部分は省略した)

Copyright (c) Seven Bank,Ltd. All Rights Reserved.」

先日の住信SBIネット銀行に続いて、またまた不正誘導のメールが届きました。
未だに低能なレベルの日本語でメールが書かれており、てにをはの訓練を受けるところからやり直しレベルであることに全く気が付かないのか、それともそんな事重々承知で、100万人のうちの一人でもひっかかって自分のログイン・パスワードを入力させればめっけものとおもっているのか。

なお今回のメールには次のようなものが埋め込まれているので、要注意。もちろん、上のURLはクリックしないように。
kTcVVivVoWe8890491077211085471939VMiPZZUBnIYWwdVtndeKbjDxrX(途中略)YnxEIjxyIwnXRXzzjAZpawTfJhPNZvVlBYvwBkBAjxdxxNlCzUVNtnMGWnbMOQtQWRtMUBzQlMWqGsUvMfQwrUSkbEVXWKitDRwmPOVUobhYMuuIocTqXunaHMpqgGqbiwETEzSremKGGmsrJziuirPGkvQJUfjfwvlxLzDXTTSQLAJydnuucAmmqTlVSZuGdHVLkilyPduVXiviwZwIpnmAZBNLSQdkZR


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