高校生・晩秋
差し込む陽ざしに包まれて
丘の上の校舎が茜色に染まっていた
下足に履き替えて 校舎を出ると
「さよなら」と甲高い叫び声がした
振り返ると
陽ざしの中に身を乗り出して
二階の窓から
二年生が手を振っている
車のキーを高く振りかざして
「さよなら」と叫び返した
夕陽を映した窓ガラスが
ひどく眩しかった
車に乗り込んで 校舎を見上げる
「See you~, Teacher!」
生徒が微笑んでいる
「See you, また明日」
アクセルを踏み込むと
とたんに
小春日和が 木枯らしに変わった
まだ黄色いままの イチョウの葉が
競い合って 散り始めた
木枯らしに急かされて舞い落ちてくる
金色の葉を搔い潜って 車を走らせる
『ひゅう~』
木枯らしが鳴った
『See you~』
生徒が叫んだ
甲高い声が
木枯らしに同化して
いつまでも聞こえていた
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