1月13日、今年の自然のみかた研究会の最初の活動。
このところ、いろいろな水系を歩いてみることにしていますが、今までトンボセンサスやカモのカウントなど調査しながらでした。しかし、少し調査をやめて水系全体を「鑑賞」してみたいと思い直しました。昔現代国語の授業で、今の現国にかけているのは全体の「鑑賞」だというのを聞かされたことがありましたっけ。
さて、今回は表記のとおりJR京田辺駅を出発し、県境の甘南備山を越えて枚方市に入り、船橋川源流部から船橋川沿いに下って長尾大池を見て、JR長尾駅までという行程です。
順にいろいろ見ていきますが、これは学術論文ではないんでいつものとおり、いろんなことを妄想しながら歩きます。
JR京田辺駅の西口を出て、一休寺として有名な薪集落の酬恩庵の前を通過。写真の奥の森の前に酬恩庵はあります。酬恩庵は見ごたえのあるお寺なんですが、今回はスルー。
薪神社のあるあたりから集落のはずれにある谷を川沿いに上がっていきます。奥に見えるのが甘南備山です。谷周辺では本場の山城筍を作っているきれいな竹林があります。ここなら国産竹林も商売になるんでしょうか?なお、この谷ではファブリーダムで配水しています。
甘南備山は全体がアカマツーコナラの林です。京都自然200選にも選ばれ、自然公園という感じです。地元の人がウオーキングでたくさんやってきます。山中には大きなタマミズキが多数あり、赤い実が鈴なりになって美しい。ウオーキングの人が有名ですよと教えてくれました。
枚方の人の話では、タマミズキは大住側(京都側)にしか見ないそうです。ふつうのアカマツ林と思っていましたが、あなどれないところありますね。
甘南備山は京都周辺の神様が降りてくる山ということですが、平安京造営のときに船岡山とここを結ぶラインが南北の中心ラインになったとか。
甘南備山の山頂神社から野鳥の森にゾーニングされているところを下り、大阪枚方側の扇ケ池というところに降ります。ここからが本番です。最初の写真は池岸から西方向、2枚目は池の東側つまり甘南備山のほうを撮ったもの。
右側の草が枯れたところは昔は雑木林でしたが、ナラ枯れの影響か木が伐採され明るくなっています。水は透明度があります。2枚目の写真の奥手から甘南備山からの水が入ってきます。地図上では扇ケ池と多数の池が並んでいますが、扇ケ池以外すべて甘南備川水系で京都側に流れています。地図をご覧ください。つまり、扇ケ池だけが甘南備山の水を大阪側に送っているらしいのです。上の写真の2枚目の右手側に小さな分水嶺があるのです。
さて、船橋川の源流部にある扇ケ池は山中の湖水という感じですが、ここを出た途端、こんな感じの水路になります。すこしだけ山間の流れらしいところもあるらしいですが・・・。
もう少し下ったところはこんな感じ。左手の大きな石積みに囲まれた枯草の積み重なりはかつてため池だったようです。
もうすこし川沿いに降りてくると農地も広くなり、ケリも見られるようになります。ケリは農地の広さの目安になりますね。
このあたりまで307号線沿いに歩いていますが、霊園のあるところでこれを離れます。
川はこんな感じになっています。
河底にどろがかぶっているのが気になります。ただ、写真はないんですが、この下では棚田の小川らしい感じのところも残っていて親子連れが網でなにか採っていました。魚か水生生物がいるのかもしれません。
しかし、第2京阪が近付くにつれ住宅地も増えてきて、住宅地の水路からは排水が流れ込んでいます。川底はバクテリアのためかまっしろです。
第二京阪道をくぐり、船橋川は完全に住宅地の中を流れる川になりました。まだ河底が白い状態は続きます。次の写真は長尾大池の取水口付近ですが、ここでも同じ状態です。
さて、船橋川が並行する長尾大池につきました。大きな池です。あくまでも個人的な印象ですが、私には船橋川の規模にしては大きすぎる池のように思えます。どんなもんでしょうか?
大池では水鳥が観察できました。これはミコアイサ
こちらはハシビロガモ。餌をもとめてくちばしを水中に入れて群れでぐるぐる回っています。
カウントはしませんでしたが、おおおそのレベルは
ハシビロガモ100
カルガモ50
マガモ50
カワウ20
コガモ10
ミコアイサ5
カンムリカイツブリ
カイツブリ
アオサギ
といったところでしょうか?カワウは水際に上がっているものが多かったですが、ほとんどのカモは水面に出動してなにやら活動していました。
ホシハジロやオカヨシ、ヒドリガモは見かけませんでした。思うに水生植物や貝類はあまりないいんではないか?
さて、大池と並行している船橋川ですが、この区間は高低差があり、写真のような落差工が作られています。これによる曝気のためか、これまでみなかったアオミドロが川底に見られます。
すぐ下がJR長尾駅で、きょうの行程はここで終わりですが、ここから先は昨年の6月1日のブログに書きました。この下流にも新大池(写真)、中ノ池と大きなため池が続きます。
農地は市街地化により少なくなっていますが、かつて広い農地があった時代の名残なんでしょうか?一方肝心の船橋川は京阪電車と中ノ池の間船橋本町あたりで完全に干上がっていました。
どうも地図からは判断しにくいのですが、このあたり天井川ではないかという気がします。しかし、こういう枯れ川状態で淀川から魚が上がってこないのにふしぎなことに途中に魚道があるのです。
船橋川はこのように利水や排水など人間による影響が大きく、自然性が残る場所はごく限られています。しかし、その中で本来の自然ではないですが、大池などのため池の存在は今の船橋川独自の生物多様性を形作っていると思います。
さて、大池にハシビロガモが大池にいつもいるかは十分観察したわけではありませんが、記録や地元のブログを見るとここ数年はたくさん見られているようです。
ケリのすむ農地-農地からの水が流れ込むハシビロガモのすむため池、さらに宅地からの排水が横から絡んでくる・・これらのつながりを解き明かし、それぞれの生き物の生態系サービスにおける役割を物語り、都市における緑地の必要性を物語れないかなんて妄想します。もちろん、上流に農地のないところで現れるハシビロガモもいますね。それは宿題。