オカンとワンコ

過去と他人は変えられない 自分と未来は変えられる

「天国はまだ遠く」

2021年11月03日 07時52分44秒 | 読書

随分と昔のことだけどね。
深夜放送で読まれた葉書に腹がたった。
「自分の性格が暗いのは日本海の暗い海を見て育ったから」
という内容だった。
そんなふうに自分を可哀想がっとるでないわいな。
アンタの住んでる所に夏は無かっただかえ?
そりゃぁ冬の海は暗いで。
荒れた日の海は波しぶきも荒く家に襲いかかってくる。
裏の物干しなんぞ、板の隙間から波が上がり、
台風の風で畳が浮いたコトも有る。
だけどね、夏の海をご覧よ!
穏やかに透きとおっていてカニや小魚の群れが見えたもんだわ。
海は遊び場だったわ。
岩場で巻き貝を採り母親に茹でてもらいオヤツにしたもんだ。
父親はそれをアテにして酒を呑んだものだ。
上草(じょうぐさ)でイギスを作り、
浜で拾った天草(てんぐさ)で心太を作ったものだ。
母親がね🤭

葉書が読まれるのを聞きながら、そんな事を腹ん中で思ってたアオハルの頃の、
まだ海べりの実家の自室に寝起きしていたオカンです。
幸せな子供時代を送ってたんだわね。
ゴメンよ、よく知らんのに勝手に腹を立ててと、
今なら思える郷土愛の強いオカンでした。


前置きが長くなりましたが、何故こんな事を書いたのか?
それはねぇ、5頁目のヒロインの言葉に触発されたですよ。

「鳥取砂丘に行った時も、(中略)天の橋立に行った時も、私は日本海がもたらす暗い海と暗い空に度肝を抜かれた

中学の臨海学校は夏じゃないのかな。
大学のサークルで行ったにしても夏休み当たりでは。
なんてやな事をプリプリしながら読み始めたのでした。

自殺を決意した主人公が向かったのは、その暗い日本海側。
あの辺りなら実行できると思い電車に乗り、
なんとなく降りた駅からタクシーに乗り込む。
「行けるだけ端に行ってください」
押し問答の末に人里離れた集落の民宿に着いた。
他に客は居らず
「長く使っていないから湿っているので…」と
布団乾燥機を置いていく宿主。

宿主の話し言葉から丹後地方と見当がついたオカンです。

飲まずに貯めておいた睡眠薬を飲みかけて、
遺書のつもりで彼氏にメールを送る。
その後、睡眠薬14錠を飲んで布団に入る。
ところが、というか、14錠だもんね。
爽やかな朝に目覚めてしまう。
実は翌日ではなく二日目の朝だった。
よく眠ったので死にたいという気持ちはすっかり失せた。
しばらくここで気ままな日々を過ごすことにする主人公。
午前と午後の2回の散歩が日課になり、畑仕事のばあちゃんに挨拶をする。
夜は星空を眺めたり、
宿主と船釣りに行き、
鶏舎の掃除を手伝い、
締めるのを見て吐いたりと、
初めての事共を体験する。
集落の集会にも参加するけど、
それなりに楽しいけれど、
この土地は気に入ったけど、
ここに自分の居場所は無い。
前に進まなければという気持ちがわいてくる。
そして民宿を出で元のアパートに戻っていく(のでしょう)。

自分で思っているほど繊細ではなく、
「えらい率直で、適当にわがまやし、ほんま気楽な人やで」
と宿主に言われる主人公。
オカンも読んでいてそう思ったわ。

生活が行き詰まって夜も眠れなくなると、
他の選択肢もあるという事に気が付かないよね。
睡眠不足は鬱になりやすいもの。
主人公もそんな具合だったのね。

どんなふうに生活を立て直すのかなぁ。
ほどほどにがんばれー。


暗い日本海は演歌だけにしてほしわー!