簡単？！

『ゴルフネットワーク』と言うテレビ番組を見ていると、あるプロが、「アマチュアへのレッスンは、簡単。教科書通りのことを言っておけば良いんだから…。だけど、プロへのレッスンの場合は、そうはいかない。」というようなことを言っていた。
私は、それを聞いて、「ハァ～！？カンタン！？（怒！！）」と思った。
こんな発言をしたら、現在、アマチュアの方々へのレッスンをしている全てのプロを敵にまわすんじゃないか？と思ったくらいだった。

「簡単じゃないよぉ～、よく言うよ～」って思い、じゃぁ、アマチュアの方々に対するレッスンと、プロへのレッスンは、どう違うか…なんて考えてみた。
私自身が、師匠から教わったことと、今現在、アマチュアの方々に行っているレッスンの比較もしながら…。

アマチュアの方々へのレッスンは…絵画に例えてみれば、真っ白いキャンパスを真ったいらにならすことからはじまる。
絵の具を用意して、取り出す色を決め、最初は、手を添えて、キャンパスへの色の付け方を教える。
ここには、水色を塗って、ここには、緑色を塗って…と、どんどんキャンパスに色を付けて行く作業を行い、”作品”を仕上げて行く。
時には、私が、ここには黄色をと思っていたところに、黒い色がベタッとはみ出して付いてしまい、ギャッと思う時も有る感じ。
教える側としては、根気と忍耐の作業が要求される。

対して、プロへのレッスンは…。
出来上がった”作品”を、じっくり見て、どこをどう変えれば、もっと引き締まった良い作品になるかを考える作業からはじまる。
ここには、白い色を、これくらい入れてみればどうだろう？
ここの色の濃淡を、もっと付けてみればどうだろう？
ここに、もう少し赤い色が有っても良い。
など、教える側としては、結構慎重で細かい作業と感性が要求されると思う。

アマチュアの方々にも、腕が上がって来られ、良い”作品”を仕上げている方には、プロへのレッスンと同様のことが要求される。

アマチュアの方々へのレッスンと、プロへのレッスン…私の感覚からすれば、これくらいの違いが有ると思う。
どちらが難しくて、どちらがやさしいかなど、比較すること自体がおかしい。
どちらも、どちらなりの難しさが有る。

…昨年のＷＢＣの時、イチロー選手が王監督に、「監督は、バッティングを簡単だと思ったことは有りますか？」と質問し、王監督は、「一度も無い」と答えたらしい。
それを聞いて、イチロー選手は、「良かった。あの偉大なるバッターの王監督でも簡単と思ったことはなかったんだ。僕も、これまでにバッティングを簡単だと思ったことは一度も無かったから…」と言っていたのを、これまた、テレビで見た。
「簡単だと思ったことは一度も無い」…。
簡単と思ってしまえば、そこから何の試行錯誤も、工夫もしなくなるから、技術力が伸びなくなる。

イチロー選手のようにカッコ良く言えば、私も、これまでにレッスンを簡単だと思ったことは一度も無い。