阿部ブログ

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トルコに配備されているパトリオット・ミサイル部隊が撤収を開始

2015年10月10日 | 雑感
トルコに配備されているパトリオット・ミサイルが撤去され始めている。
トルコのパトリオットは、過去ブログでも書いた通り、シリア情勢の危機深化を受けて配置されたものだった。
シリア情勢:トルコにパトリオットを配備

トルコに配備されているパトリオットは、米、独、スペインの3カ国の部隊で、シリアとの南部国境に接する地域にパトリオットを配備している。今年8月、米・独は、シリアからの脅威は無くなったとの事で部隊の撤収を発表。米軍のパトリオットはアップグレード回収にまわされる。しかし、現状はロシアのシリア空爆が始まり、非正規のロシア陸軍部隊が戦闘に参加するなど情勢は深刻さをましており、トルコ政府は、パトリオットの撤去を見合わせるよう要請していたが、米独両国は、予定通り部隊を撤収させる方針で、米軍部隊は、10月9日に撤収を開始した。パトリオット・ミサイルは、ミサイル防衛用のシステムであり、防空ミサイルシステムとしては少々場違い。NATOは、トルコ政府の要請とフランスとイタリアの防空部隊を展開する事を検討しているようだが、実際にトルコに部隊展開するかは判然としない。何れにせよトルコには旧式のナイキ・ハーキュリーズ部隊の防空システム?があるだけで、甚だ心もとないのは確か。
因みにスペインのパトリオット2部隊は、インチェリック空港に展開しており、撤収云々については情報がない。

トルコは悩ましい問題に直面している。ロシアの戦闘機がトルコ国境近くで作戦行動を展開し、トルコ領空も2度にわたり侵犯している。最初は10月3日12:08にロシア機が、トルコの南のハタイ県でトルコの領空を侵犯。トルコのF16戦闘機がスクランブルし、ロシア機を国境外に誘導。10月5日には、ロシアのSu-30がトルコ南部のYayladagi/Hatay地区で領空を侵犯したため、F-16 戦闘機をスクランブル発進させた、とトルコ外務省が発表。米メディアによると、このロシア機はトルコ領内5マイルまで侵入したと報じている。この事件について、トルコ外務省はロシア大使に対し厳重な抗議をしたほか、トルコ外相もロシア外相に電話で抗議をして、再発防止を申し入れている。これら領空侵犯以外にも10月2日、ロシア機がトルコ国境に隣接したシリアのal-Yamdiyyah村を爆撃した際、ロシア機に対しトルコ軍のレーダーが射撃照準を合わせる事件があった。またアンカラでは100人近い死亡者を出すトルコ史上最大のテロが発生。クルド労働者党(PKK)はトルコ国内での活動を取りやめるとしているが、両者の確執はトルコ国内で表面化し国内治安を益々不安定にするだろう。この時期に米独のパトリオット部隊の撤収の背景には、何があるのか?

米軍部隊の撤収は、ロシア戦闘機との不要なイザコザに巻き込まれるのを避ける為との報道もあるが、それは違う。パトリオット部隊の撤収は8月には決定済みで予定通り。8月とは状況が違うだろうとの意見はあるだろうが、問題はトルコにある。今年3月に、トルコは中国製ミサイル防衛システム「紅旗9」を導入する事を決定。これは2年前の2013年に紅旗9の購入を発表していたが、北大西洋条約機構(NATO)の反発を受け一旦見直しをする風な、曖昧な態度に終始したが、ほとぼりを見据えて中国製の防空システムの導入を決定した。NATO加盟国であるトルコが中国製の武器システムを導入するとの意思決定は、今後のトルコに対するNATO加盟国や米国との関係を確実に悪化させた。トルコは、EU加盟を心底望んでいるが、これも潰えた。トルコはヨーロッパではなく奴らはアジアだ、と言うことだ。やっている事がアホだな。トルコは。
トルコが導入する「紅旗9」は、最大射程が90~120kmで、元となったロシアの防空システムの技術水準に匹敵すると北京は報道しているが、実力の程は定かでない。