阿部ブログ

日々思うこと

イランのイスラム革命防衛隊の対外工作機関クアト・アル・コドスの麻薬ビジネス

2017年04月14日 | 雑感
イランのイスラム革命防衛隊「クアト・アル-コドス( نیروی قدس:エルサレム部隊)」(以下、コドス)は、国外での特殊工作や暗殺作戦などを実施する組織。
コドス部隊の要員は、各国大使館に配置されている。今年1月に駐イラク大使は、コドス部隊の最高顧問が就任。

2010年に警視庁公安部外事三課から流出した資料には、公安部は、東京三菱銀行・虎ノ門支店からイラン大使館員の完全な口座情報を入手し、入出金を確認している。この調査で分かったことは、イラン軍武官の口座が存在せず確認できなかったことだ。前回調査同様に確認できなかったと書いてあるので、定期的に東京三菱銀行から口座情報を入手し分析していることを伺わせる。イラン情報省職員と思われる人物は特定されているが、イスラム革命防衛隊や軍関係者の口座情報は調査できていない。
外事三課の流出資料には、武官を除く全権特命大使以下、日本人職員も含む口座情報のリストがあり、これを観ると、全権特命大使より入金額が多い、参事官などが存在している。このリストは半年分が掲載されており、半年に1回に調査していると推測されるが、イラン人コニュニティを含む対象者の調査は網羅的に行われている。

イスラム革命防衛隊は、海外での活動を行う上で、活動資金の移送に工夫が必要で、例えば、中国国有石油会社の子会社である「崑崙銀行」が、コドスの活動資金の移送に関与していると報じられている。イラン中央銀行は崑崙銀行に口座を開設し、コドスが管理するイラン企業から崑崙銀行の口座を経由して複数の中国企業に資金を送金している。また、中国深圳藍昊天有限公司が、イラン企業Bamdad社から181万ドルが振り込まれているなど中国企業や銀行経由で活動資金のやり取りをしている。流石に公安も中国企業を含めた調査は難しいだろう。

さて、イランのお隣アフガニスタンは、今や世界最大の麻薬生産地となっており、ケシ栽培から、約400ヶ所とも云われる阿片精製工場でヘロインを生産する完全国内生産可能なインフラを構築・維持している。ヘロイン生産には大量の無水酢酸、アセトン、塩酸が必要だが、これらは外国企業がアフガニスタンに持ち込んでいる。例えば、アフガニスタンに駐留するNATO軍向けに洗濯やゴミ処理サービスを提供するドイツのエコログ社が摘発されている。
イランでは麻薬常習者の増加が社会問題となっており、アフガニスタン国境を厳しく監視している。2010年には、アフガニスタンからイラン国内を通過しトルコに至る麻薬密輸組織がイラン当局に摘発されている。密輸組織は、スィースターン・バルーチェスターン州に集積した麻薬をテヘランに陸路運んでいた。これら組織は、欧州への中継組織で、トルコの麻薬組織にヘロインなどを渡すのが任務。イランは事態を重視し、イランの国境は全線5メートルの堀と壁&フェンスを設置し、国境警備隊の他、イラン軍が約60%の領域を警備する体制を構築。300m毎に絞首刑台を用意されている徹底さだ。このような稀に見る国境警備体制を維持するイラン国境を超えるのはリスクが高い。なので、パキスタンの族長支配地域を経て海路、欧州に送り出している。またタジキスタンからウズベキスタン、キルギスタンやアゼルバイジャンを経由して、ロシアや欧州に配送している。

イランは被害者のように見えるが、イスラム革命防衛隊は、麻薬ビジネスを手がけ海外での活動資金を捻出している。これは、中国に進出した関東軍や支那派遣軍と一緒。イスラム革命防衛隊で麻薬ビジネスを展開するのはコドスである。コドスは、麻薬ビジネスで得られた資金でヒズボラや、海外における工作資金に充当している。ヒズボラの活動資金30%は麻薬関連と言われる。イラン国内、トルコで生産された麻薬を欧州に流入させマフィアとの取引をしている。今年1月はドイツがトルコからの麻薬密輸を摘発し、イラン人運転者を逮捕しており、イタリアにおいても、イランからイラク経由でトルコに麻薬密輸する、コドス要員9名を逮捕している。コドスの要員は、ヒズボラとの関係がある麻薬マフィアを経由して南米に麻薬を密輸していた。麻薬はイラン外交官などイラン政府組織を挙げて行われており、全容把握と摘発は極めて難しいのが現実。