阿部ブログ

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インパクト投資(Impact Investing)の新たな潮流〜Theory of change からmainstream approachへ

2018年10月15日 | 雑感

インパクト投資(impact investing)は、2007年、ロックフェラー財団が初めて使った新機軸の投資に関する概念で、世界最大のインパクト投資家団体である「Global Impact Investing Network(GIIN)」によれば、「企業、組織、ファンドへの投資であり、金銭的なリターンをもたらすとともに、社会的及び環境的なインパクトを生み出す投資」(Investments made into companies, organisations, and funds with the intention to generate social and environmental impact alongside a financial return.)と定義している。このインパクト投資が、世界的に浸透するきっかけは、2013年のG8サミットに於いて英国のキャメロン首相が、インパクト投資をグローバルに展開することを目的として「Global Social Impact Investment Steering Group:GSG)」の設立を提案したことによる。
国連の責任投資原則(Principles for Responsible Investment:PRI)によると、2016年には450以上の機関投資家がインパクト投資を実施し、その運用資産は約143兆円に達し、日本におけるインパクト投資の市場規模も、2017年で約718億円と2016年度の337億円から倍増している。
(※PRIは、投資判断にESG(Environment、Social、Governance)を組込むことや、投資先企業にESGに関する情報の開示を求めるなど6つの原則を示したもの)。

このPRIが、8月20日に、「IMPACT INVESTING MARKET MAP」と言う報告書を公表した。この報告書では国連の持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)とPRIの報告フレームワークを融合させた手法を提示し、10の投資分野を提示している。

10の投資分野は、①Energy efficiency、②Water、③Green Buildings、④Affordable housing、⑤Renewable energy、⑥Education、⑦Sustainable agriculture、⑧Health、⑨Sustainable forestry、⑩Inclusive financeである。
報告書には、この10分野それぞれに、①Definition、②Criteria、③BUSINESS TYPE、④THEMATIC CONDITIONS、⑤FINANCIAL CONDITIONS、そして⑥KPIが分かり易く図示されている。

このインパクト投資には、従来のTheory of changeに準拠した企業へのインパクト投資も堅調だが、新たな動きとして、企業の製品やサービスが環境・社会に対し好ましい影響・効果をもたらしている非上場を含む中堅から大企業に対し投資するメインストリーム型(mainstream approach)のインパクト投資が注目されており、今後の拡大が期待されている。

○主要参考文献(含むURL):
★Global Impact Investing Network(GIIN)
https://thegiin.org/ 

★国連責任投資原則(Principles for Responsible Investment:PRI)
https://www.unpri.org/pri 

★Impact investing market map
https://www.unpri.org/download?ac=5292 

★2018年PRI報告フレームワーク
https://www.unpri.org/Uploads/t/o/v/PRI_Reporting-Framework_2018_full_Japanese.pdf 

★G8インパクト投資タスクフォース国内諮問委員会http://impactinvestment.jp/about/ 

★社会的インパクト評価ツールセット 実践マニュアル
http://impactinvestment.jp/images/sharedmeasurement_manual_160614rev.pdf 

★社会的インパクト投資(social impact investing)の定義
社会的インパクト投資とは、支援を必要とする受益者を対象とした、社会的分野における投資家と投資先との間の取引のことである。対象とする受益者はリスクを抱えた人々であるべきであり、提供される財は、公共と民間の良い点をミックスしたものであるべきである。これらの取引は、多くの場合、仲介者を使って行われる。投資先は、少なくとも、社会的インパクトに関する公式な評価を提供するとともに、社会的活動の義務的報告条項を記載すべきである。同時に、投資家は、少なくとも社会的インパクト投資のための義務的報告条項を有し、ゼロ以上の期待収益率を有するべきであるが、市場収益率を上回らないべきである(実際の収益率はそれ以上の可能性もある)。
Social Impact Investment is a transaction between an investor and investee in a social area, targeting beneficiaries in need.
Beneficiaries targeted should be at risk populations and the good provided should have a mix of public and private good characteristics. These transactions are often made using intermediaries. The investee in the transaction should, at least, inscribe a compulsory reporting clause of its social activity in the statutes, as well as provide a formal evaluation of social impact. In parallel,the investor should, at least, have a compulsory reporting clause for social impact investments and have return expectations aboveor equal to zero, but not above the market rate of return (actual return may be higher).