プーチンの神頼み :230619情報
(昨日からの続きです)
▼プーチンに逆らった大司祭の末路
5月15日、興味深いできごとがありました。テレ朝ニュース6月1日。
<プーチン大統領は5月15日、ロシアでもっとも有名なイコンの一つ、アンドレイ・ルブリョフの「聖三位一体」を現在、保管されているトレチャコフ美術館から救世主キリスト大聖堂に移す決定をしました。>
ロシア人は、イコンといわれる聖像画をとても大切にしています。その中でも特に有名なのが、15世紀の聖像画家アンドレイ・ルブリョフさんの「三位一体」なのです。
「三位一体」は、とても古く美術的価値が高いものなので、教会ではなく美術館で保管されていました。ところがプーチンが、「イコンを美術館から教会に移せ!」と命令した。
移されたのは、「救世主キリスト大聖堂」です。これは、ロシア正教の「メイン教会」といえるでしょう。ところが、思わぬことが起こりました。ロシア正教会の美術品や修復の専門家会議の代表を務めていたカリーニン大司祭や専門家たちが、プーチンの決定に反対したのです。
<これに対し、美術品の専門家らはトレチャコフ美術館では温度や湿度などが厳重に管理された状態で保管されていて、移動すべきではないなどと反対しました。美術品の管理などを担当する立場にあるカリーニン氏もイコンが劣化するため反対の立場を表明しました。>
「イコンが劣化するから」という理由で、カリーニン大司祭は、移動に反対した。プーチン側はどういう反応をしたのでしょうか?
<が、直後の5月27日、ロシア正教会はカリーニン氏の解任を発表しました。>
カリーニンさんは、首になった。なんというか「予想通り」の展開です。カリーニンさんは、こんなコメントをしていました。
<カリーニン氏は当時タス通信の取材に対して、「私は間違いを犯したようだ」とコメントしていました。
>
「私は間違いを犯したようだ」というのは、「プーチンに逆らったのはまずかった」という意味なのでしょう。しかし、時すでに遅し。カリーニンさんは、3日後に【 心臓発作 】を起こして入院したのです。
<ロシアのプーチン大統領の意向に反したロシア正教会大司祭が入院したと報じられています。ロシア正教会の美術品や修復の専門家会議の代表を務めていたカリーニン大司祭が心臓発作で入院したと国営ロシア通信が先月30日に報じました。>
これ、偶然でしょうか? もちろん偶然ですよね・・・・。
(ちなみに、プーチンを批判した教育省次官クチェレンコさんは5月20日、キューバからモスクワに戻る飛行機の中で急死しました。)
▼プーチンの神頼み
ところで、プーチンは、なぜイコン「三位一体」をロシア正教のメイン教会移すよう命じたのでしょうか?
ロシアは、過去に「神頼み」で勝利したという「伝説」があるのです。何でしょうか? 皆さんご存知のように、ソ連は「共産主義国家」でした。そして、共産主義国家は、「無神論国家」なのです。
たとえば、共産中国では「チベット人」「ウイグル人」が一番迫害されている。あれは、チベット人が仏教徒、ウイグル人がイスラム教徒だからです。共産国家では、神様を信じる人は迫害される。
ソ連の独裁者スターリンも、当然「無神論者」でした。しかし・・・。1941年、独ソ戦がはじまりました。そして、初めのうちはドイツが圧倒的に優勢だったのです。「このままでは負ける!」と恐怖したスターリンは、どうしたか?
なんと、「閉鎖されていたロシア正教会を開け!」と命令したのです。(1943年) いわゆる「苦しい時の神頼み」ですね。そのせいかどうかわかりませんが、とにかくソ連軍はナチスドイツ軍に勝ちました。そして、ロシア正教徒は皆、「スターリンが悔い改めてロシア正教を復活させたから、神の力でドイツに勝った」と思っているのです。
この話とプーチンの今回の決定は、関係あるのでしょうか?
あります。「三位一体」は、「奇跡を起こすイコン」といわれています。つまりプーチンは、「三位一体」を美術館から教会に移すことで、「神様が味方してくれて、ウクライナに勝つことができるかも!」と考えたのでしょう。
もちろん、「イコンを移すことで、ロシア正教徒の支持を得たい」という動機もあるでしょう。いずれにしても、プーチンは「神頼りせざるを得ないほど」追い詰められているのです。
(了)
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