AIチップ戦争 :230608情報
昨日は『AIの軍事転用』を掲載しましたが、今日は、軍事だけでなくあらゆる分野で使うために開発と争奪戦が起きている現状を、元経済893の猫組長さんの『猫組長TIMES』から許可を転載させていただきます。
米半導体大手エヌビディアは時価総額1兆ドルを超えてGAFAと同じ「兆ドルクラブ」に名前を連ねました。先週から引き続き話題は米大手半導体エヌビディアで持ちきりといえましょう。30日には初めて時価総額1兆ドルを超え、大手テック企業GAFAMなどと肩を並べます。(テスラとメタの時価総額はおよそ7000億ドルで1兆ドルを下回っています。)
エヌビディアはAIブームの波に乗り、今年に入ってからその株価は170%以上伸長しています。決算発表の度に10%以上の上昇を見せており、市場の熱狂ぶりが伺えます。また、テック企業各社も昨年末にかけてのダウントレンドから復活をしており、アップル・アマゾン・マイクロソフト・メタ・テスラの株価は年初来25%以上上昇しています。AIが牽引する市場はこれからどう動いていくのでしょうか。
AIブームのゆくえ
CNBCベテラン記者Carl Quintanilla氏は自身のTwitterでモルガン・スタンレー社のレポートを引き合いに、AIブームを考える際に、モバイルインターネットブームがどのように進んで行ったかが参考になると言います。半導体市場の盛り上がりは、デバイス・インフラ市場につながっていく。そして、最後にソフトウェア・サービスの最大の波がやってくるというのです。
現在はエヌビディアが半導体市場を牽引しており、第一のフェーズに入ったといえましょう。程なくしてやってくるのはデバイスとインフラの波です。すなわち、半導体を搭載した製品・機器について考えていくことになります。なお、半導体には様々な種類があり、様々な用途で利用されています。
(『やはりあった半導体バブル Ⅰ Ⅱ ご参照)
半導体バブルへ――エヌビディア高騰から考える日本市場
米電気自動車大手テスラは同社製品の自動運転技術確立への投資を続けています。自動運転の前提にはあらゆる交通情報を処理するための"頭脳"が必要です。この実装ができれば同社電気自動車の付加価値が高まります。そして、テスラ車のニーズが高まり売上があがっていくのです。技術力の高い半導体があってこそ、製品が確立し、運転アシストするサービスが成立していくのです。
ChatGPTなどの生成AIについても考えてみましょう。ChatGPTを私たちはボットサービスのように利用しているかもしれません。しかしながら、これは次世代のインフラと考えた方がよいでしょう。大量のデータをもとに、適切な回答を作り上げていく、あるいは画像を生成するためには、膨大な機械学習が必要です。そして、その裏側には高性能なAIチップが必要なのです。すなわち、AIをひとつとってみても、半導体市場における技術革新と新製品の登場が前提にあり、そこから環境が生み出されていき、サービスへと応用されていくのです。
チップ開発競争勃発
AIブームの根幹はエヌビディアのような半導体企業となります。大量データを処理し、高速で判断を下していくには高い演算能力をもつ半導体が必要です。半導体開発はメーカだけではなく、各テック企業も独自に取り組みを進めています。
Googleは2023年4月に自社製のAIチップを発表しています。CNBCは「最新型のAIスーパーコンピュター」と報道しています。これによりGoogleサービス上で最先端の機械学習モデルを実行する環境が整ったといいます。(参考)
アップルにおいては、Macに搭載するチップの開発が続いており、業界関係者によるとさらにパワフルなチップが発表されるといいます。(GIZMODO)
また、Facebookを運営するメタ社も初のAIチップを発表しており、真相学習を用いたレコメンデーションモデルを提供します。(ZDNET)
そして、アマゾンにおいては、同社クラウド事業(AWS:アマゾンウェブサービス)においてかねてより独自のチップ開発を続けています。同社製品の性能を評価し、日本理化学研究所はスーパーコンピューター富岳にAWS製品を採用しています。(日経クロステック)
クラウドからエッジへーAIチップの大量ニーズ
頭脳としての半導体・AIチップのニーズはどこまで広がるのでしょうか。技術の応用範囲、利用範囲が広がればたしかに半導体の生産は広がることでしょう。この広がりを下支えしているのが「エッジAI」という考え方です。"中央集権型の頭脳(クラウドAI)"と"分散型の頭脳(エッジAI)"をうまく使い分けていくということです。
クラウドAIはクラウド上のコンピューターでAI処理を行います。AI処理に必要なデータはデータ元(の端末)からクラウドコンピューターに送信され、システム上で処理されます。そして処理が完了すると、データ元に対して結果を返します。
一方で、エッジAIはエッジデバイス(データ元の端末)上でAI処理を実行します。そして、それぞれのエッジデバイスの処理結果はクラウド上で次の処理に活かすためにも保存されます。親玉のようなAIと子分のようなAIがいるイメージですね。
こう考えると、これまで投資されているような親玉AIだけではなく、子分AIにもより多くのチップが組み込まれていく世界がくることでしょう。
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