赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

②習近平独裁の風景

2023-09-02 00:00:00 | 政治見解



②習近平独裁の風景 :230902情報

昨日からの続きです。許可を得て転載しています。


■3.人口14億の中国で34億人分の住宅を作ってしまったバブル経済

「鬼城(ゴーストタウン)」は「雄安新区」だけではありません。中国のあちこちの大都市には、超高層のタワーマンションが何本も建ち並んでいますが、それらがみな建築途中で放棄されている光景をよく見ます。なぜこんな事になっているのでしょうか?

これは中国の住宅バブルが実体的には破裂しているのに、中国政府を護るために、その被害を一般消費者や労働者に押しつけているからです。ちょうど、北京や雄安新区を洪水から護るために、啄州の100万の住民が犠牲にされたように。

海外の資本市場では、中国の不動産バブルの実態が垣間見えるようになりました。不動産大手の中国恒大集団(エバーグランデ)は8月17日、米ニューヨークの裁判所に連邦破産法15条(日本の民事再生法に相当)の
適用(破産)を申請しました。

恒大は2021年にドル建て債の債務支払い不履行(デフォルト)に陥り、負債総額は推定3千億ドル超(約43兆5千億円)に達し、過去2年間の純損失が計5819億元(約11兆2千億円)だったと発表しています。

現在、日本で最大の赤字を出しているのは楽天グループで、負債が約4兆円、昨年の赤字が約3700億円ですから、さすがに中国は1桁大きいですね。

他の不動産業者も似たような状況のようです。いまや中国全体で34億人分の住宅ができていると言われています。中国の人口は約14億人ですから20億人分ものムダな住宅を作ってしまったのです。こんな状態で、不動産業者が巨額の損失を出しながらも、まだ生きながらえているのが不思議ですが、そこに中国の独裁政権による統制経済の本質が窺えるのです。


■4.34億人分の住宅を作ってしまったバブルの仕組み

なぜ34億人分もの住宅ができあがってしまったのか。そのバブルの仕組みを見ておきましょう。

中国の土地はすべて国有ですが、地方政府が土地の使用権を販売します。基本的に革命時に地主たちから取り上げて国有化した土地で、元手はただですので、地方政府としては棚ぼたでお金が入ります。不動産業者は使用権を購入して、そこに住宅をつくって消費者に売ります。一方、消費者は銀行にローンを組んでもらって、住宅を買います。

これが実際に住むための住宅を買っているうちは正常なプロセスですが、住んでいる家はもうあるのに、値上がりを見越して、もう一軒買おうとするとバブルが始まります。

2000万円の家で、1年後には2500万円になるという見込みがあれば、投資目的でそれを買おうという人々がたくさん現れます。とすると、投資目的の見かけの需要が膨らんで、実際に価格も2500万円に上がったりするのです。

こうして実需を超えて、投資目的で見かけの需要が膨らみ、それで価格が上がり、その値上がりがさらに投資を呼ぶ、という膨張過程がバブルの正体です。このバブルは銀行の資金供給が続く限り、そして、人々が住宅の値上がりはまだまだ続く、と考えている限りは続きます。

日本のバブルを崩壊させたのは、財務省による不動産向け融資の総量規制や、日本銀行の金利(公定歩合)引き上げなどで、資金供給を絞ったことでした。


■5.「国有銀行がずっと貸し続ければバブルは維持できます」

日本のバブルは財務省や日本銀行がストップをかけましたが、中国ではどうでしょうか? 

元財務官僚で経済学者の高橋洋一氏は次のように断言します。
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しかし不動産バブルを維持することは可能なのです。銀行のほうで不動産開発業者にずっとお金を貸し続ければいい。中国では銀行は国有です。だから国有銀行がずっと貸し続ければバブルは維持できます。[高橋他、p52]
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もう絶対に売れない「不良債権」となっても、それは国有銀行と、さらに銀行を監督する中国政府が「いつか売れるはず」と言い張れば、不良債権ではなくなってしまいます。日本の銀行がこんなことをしたら、背任罪で刑事罰を受けます。こういう事を平気でできるところが、中国の特殊性です。

こうして34億人分ものムダな住宅が積み上がっても、不動産企業は知らんぷりをして、銀行から金を借り続けて、経営を続けていけるのです。恒大のように2年間で約11兆2千億円もの赤字を出していても。


(つづく)


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