コラム(310):
ラグビー・ワールドカップに見る日本人観の変化
朝日新聞の本音は「外国出身者に対する差別意識」
チェリーブロッサムズの愛称で親しまれるラグビーの日本代表は初戦を突破し、念願のベスト8にむけて快進撃を始めました。ところが、翌日の朝日新聞は「多国籍ジャパン 先発8人が外国出身」との見出しで記事を掲載し非難が殺到しました。記事の内容は日本応援を装っているのですが、編集者の本心は日本代表の活躍に我慢がならなかったようです。
編集者には、朝日新聞特有の日本への嫌悪感情があるのはもちろんなのですが、同時に、「多国籍ジャパン」の見出しで、無意識に外国人への排他的な感情が強いことを露呈させています。
ふだん外国人への差別を指弾している朝日新聞が、実はそれは建前であって本当は社内に差別意識が蔓延していることを示しています。朝日新聞の価値観には偏狭な人種差別的傾向が内在しているのです。
日本人の日本人観に変化
多くの日本人にとっては、人種としての日本人に対する考え方が変わろうとしています。これは外国人と日本人の間に生まれたハーフの選手や、日本国籍を取得したスポーツマンの活躍に負うことが大きいと思います。
かつての時代、広島カープで活躍した鉄人の故衣笠祥雄氏は黒人の血が混じっているとして偏見の目で見られたこともありました。
筆者が小学生時代、混血児を「合いの子」として蔑む風潮があったくらいです。
しかし、現在は、多くのハーフの選手の大活躍が状況を一変させました。かれらは尊敬と賞賛の対象と変化したのです。これは日本人の日本人観に大きく変化をもたらせた革命的なできごととなりました。
人種的優越性の考え方はヒトラーと同じ
未だに人種としての日本人論を説き、他人種や他民族と比較して日本人の優越性を強調する意見を見ることがありますが、この考えは、アーリア人の優越を説きユダヤ人を虐殺してきたヒトラーとナチス・ドイツと同様の考え方です。
これは、劣等感が強い人が陥りがちな考え方で、優越感にひたることで満足を得ようとする歪んだ精神性向です。
しかし、日本人が世界の人から評価されるのは日本人の精神性の高さであって、決して人種的な要素ではないことを私たちは改めて確認すべきだと思います。
桜の戦士が物語るもの
これまでの人種的日本人観は、徳川幕府の鎖国政策によって外国人と日本人を分け隔てたことによるものだと思います。しかし、大和国家が成立したころは人種的には多様であったと見られ、また飛鳥時代にはペルシャ人が官僚であったという記録があるほど、日本人は人種的には寛容であったと思われます。古代の日本は、意外と人種の坩堝であったのかもしれません。
今回のラグビー・ワールドカップでは、リーチ・マイケル主将に代表される海外出身の桜の戦士たちが、日本人以上に日本人の心を持っているように感じられます。「君が代」の意味をよく理解しているのもその一つの事例です。
他国籍ではあっても、心を通わせ互いの文化伝統をよく理解することによって、人種というわけ隔てる考え方が自然になくなることをラグビーのワールドカップは教えてくれているように思います。
ラブビー・ワールドカップはまさに「美しい調和」を意味する令和元年の幕開けにふさわしいイベントだと感じます。
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