Ⅱ.中国に迫りくる食糧危機 :230602情報
昨日は、日テレニュースから、自由に栽培したい農民と作付けを強制する政府の対立を見てもらいましたが、今日は、台湾独立運動家に今回の習近平氏による農政政策がどのように見えているのかを解説していただきます。
■「城管」「農管」の独裁システム
中国は独裁政権ですが、「息が詰まりそう…自由がほとんどない」と感じているのは、実は中国の知識人ばかりで、一般庶民の感覚としてはそれほど自由が制限されているようには感じていないかもしれません。
ですが、それも習近平政権になる前の話であって、習近平が政権をとってからは様々な政策の変更があり、独裁ということを忘れないようにしているようです。
一番有名な例が、「城管」というシステムです。
城管とは、「城市管理執法」の略称で、警察以外に都市部の秩序を管理する人間のことを指します。一番の職務内容は、露天商(屋台)の取り締まりです。
中国の都会では基本的に露天商は禁止されています。しかし、店を構える資金もない貧しい人たちは、やはり露天で売るしかないのです。一番多いのは、自分の畑で作った野菜などを持ってきている農民たちです。
城管がそれを取り締まるのですが、それら露天商の商品を没収し、さらには没収したものを私物化するのです。つまり城管と言えば、非常に権限が大きく、制服を着た強盗のようなものなのです。
■「農管」の誕生…
この城管は2017年から導入されたのですが、今回新しく、この農村版ができました。名前はそのまま「農管」(農業総合行政執法)です。1年前から一部の地域で試験的に導入され始め先日4月14日に正式に発表されました。
その実態を見てみると、都市部に比べて農村地は人目の付かないところが多いため城管よりもやりたい放題をやっているのです。
■「農家の免許」が必要に
中国政府の発表によると、主に目的は3点あります。
1.農業指導
2.農産品の安全指導
3.農村の環境管理・環境指導
①農業指導に関しては、農作業をするのに農家という免許が必要になりました。それを農管が発行するのです。何十年も農作業をやってきた人間でも、農作業をするには農民免許を取らないといけないようになりました。
農民免許は試験形式で確実に合格できるとは限りません。その場合、どのように農民免許をとれば良いのか?
賄賂を渡したり、農管が運営する教習所に通って勉強して取得するしかありません。これだけでも農管にとっては利益になるのです。
20代30代の農業知識のほとんどない人が農民を指導する状況で、素人が玄人を指導するというおかしなことになった上に、賄賂が横行するのです。
②農産品の安全指導とは、トラクターやコンバイン、田植え機を運転する際にも免許が必要となったのです。あとは偽の種や偽農薬の取り締まりも行うと言います。
実際、中国には偽の種と偽農薬が結構出回っています。ですが、よく考えると本来、偽の種や偽農薬は製造や販売元を取り締まるのが正しい対応ではないでしょうか。
騙されてそれを使用する農民を取り締まるのはなぜなのか。彼らも被害者のはずです。なので、これも本質的には農管導入の口実にすぎないのです。
③農村の環境管理・環境指導とは、どんな地方都市でも古い建物を立て壊し、新しいものを建てようとしているのです。
習近平は「農村の環境管理」という言葉が好きでよく口にしているのですが、どんな街も現代的に見えるよう整備を進めてきました。
これ自体悪いことではありませんが、歴史のある街、下町といった人情味のあるところはこれまでの古いものも混在しているのが一般的です。ですが、習近平政権になってからはその古いものを一掃しようとしているのです。
都市部ではこれをやりきったようで、これから農村部で行おうとしているのです。これは、どのレベルかと言うと、農村で家畜を放し飼いにしていると、「見栄えが良くない、景観を害する、文明的ではない」という理由で取り上げるのです。
このように非常に乱暴なやり方で農村の環境管理を進めようとしています。実は、習近平がここまで徹底的にやるのにはある理由があります。
(つづく)
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