コラム(186):テロを生み出したのは軍事大国
大統領候補のトランプ氏は、先日の党大会で「アメリカはロシアとの関係を改善し、共にテロ組織、ダーイシュ(IS)を倒すべきだ」と述べました。
しかし、この被害者の立場に立った発言は、正直納得できるものではありません。なぜなら、テロ組織はそもそもアメリカとロシアの国家エゴによって生み出されたからです。
米ソの冷戦期、アメリカはイラク、イラン、アフガニスタンを支援し、軍事援助を行いました。
一方、ソ連はイラク、イラン、シリア、リビアにテロリスト集団を作り、資金援助と軍事訓練を行いました。軍事政権樹立に奔走したアメリカとテロリストを育成したソ連とは、形の上での違いはありますが、結果的には、様々な地域にテロリストを乱立させる結果をもたらせたのです。
軍事援助国が危険に晒される
アメリカ外交の最大の特徴は、反ソ国家に徹底的な物量援助を行うことでした。
過剰な軍事援助は、被援助国のビジョン、資源、エネルギーを軍事目的へと向けさせ、軍事独裁政権を生み出しました。イラクのサダム・フセイン政権や南米諸国の独裁政権がその実例です。
しかし、サダム・フセインをはじめ多くの独裁者は受け取った軍事援助を利用して、テロ国家を作り上げたのです。湾岸戦争、9.11後のイラク戦争は、もともとアメリカの軍事援助が原因です。これらの戦争を契機として、アルカイダやISなどの様々なテロリスト集団が派生しました。
当然、テロリストたちが手にしている武器は援助してくれた国の武器です。アルカイダの武器はアメリカ製であり、ISの武器はロシア製や中国製なのです。
つまり、自らが援助した武器で自分たちが危険に晒されているのです。
テロをなくすために
ここ数年、テロの被害がフランスに集中している理由は、フランスが武器輸出大国だからです。
テロの脅威を取り除くためには、国内の警戒や取締りだけでは意味がありません。武器の輸出や軍事援助をやめることが、解決への道にほかなりません。
ISテロに怯えるアメリカやフランス、チェチェン人テロに怯えるロシア、イスラム系民族のテロに怯える中国、難民の流入で苦悩するドイツ、いずれも、武器輸出の5大大国です。自ら蒔いたテロの種を自ら刈り取らねばならない現実を直視すべきときだと思います。
テロ撲滅にはいかなる国も、武器援助や軍事援助をしない国際的な取り決めが必要です。軍事的な援助が軍備競争を拡大させたことはあっても、地域を安定させた例などはありません。
最大のテロ対策とは、実は、大国がエゴを捨て軍事援助や武器輸出をやめる確固たる意思を持つことにあると思います。
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