赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

ご参考:変化するイスラエル・サウジアラビア・トルコの関係

2023-10-12 00:00:00 | 政治見解




ご参考:変化するイスラエル・サウジアラビア・トルコの関係
:231012 参考情報




『モサドはハマスの動きを知らなかったのか?』の関連記事です。国際政治学者の解説です。

9月20日にサウジアラビアのムハンマド皇太子がFOXニュースのインタビューを受けていました。外国のメディアの取材を直接受けるというのは珍しいことですが、その中でイスラエルとの国交樹立が日々近づいていると語ったのです。

それから9月21日にイスラエルのコーヘン外相が、2024年にもサウジアラビアと国交正常化の目処が立つ可能性について言及しました。彼がラジオ番組に出てきて、2024年の1月から3月にはサウジアラビアとの国交正常化に向けた細かなことが決定される可能性があると言ったのです。イスラエルとサウジアラビア双方で正式な国交樹立ということに向かって動いているということを認めました。このことに関してはイスラエルのネタニヤフ首相とバイデン大統領の間でも既に話し合われています。

もちろん難しい問題も沢山あって、第一にパレスチナ問題をどうするかということです。ムハンマド皇太子もパレスチナ人の生活を楽にして、イスラエルが中東での役割を果たせる合意に到達することを望むと言いながら、パレスチナ問題は非常に重要で、この点は解決が必要だと釘を刺しているということです。

サウジアラビアはイスラエルと国交を結ぶ代わりに、アメリカに対していろんな要求を言えるというところですが、その中でアメリカ政府とサウジアラビアの防衛条約をしっかりと締結してくれないかというところがあります。更に原子力発電所をサウジアラビアは作りたいので、それをアメリカの技術供与で作ってくれないかということを条件にして出しているということです。

しかし、極右政党が連立の中にいるから、イスラエルがやることばかりならネタニヤフ首相も良いのですが、パレスチナ問題において妥協してほしいサウジアラビアが言ってくるところをどうするのかいう問題があります。

今の全体の流れから言うと、ウクライナ戦争も終結に向かってきており、ウクライナ戦争を支援してきた無国籍的なグローバル勢力の力が弱まっているのです。いわゆる英国守旧派を中心とするタックスヘイブンネットワークの力も徐々に弱まってきているということで、一つの良い方向に流れてきています。

そうすると、中東において戦争を挑発しようという人たちの力が弱まってきているということも言えるわけです。ネタニヤフというタカ派の人物がサバイバルするためには、こういったことを認めていかないといけないという側面もあります。

逆に言うと、タカ派の人が首相のときだからこそ、こういう思い切った和平案が通るチャンスがあるのです。こういう人たちが野党にいると、いわゆる拒否権行使グループになってハト派の人がサウジアラビアと和平しようとして労働党主流の内閣をやると、これは右派のLikud(リクード)を中心とする人たちが足元を揺さぶって、それをやらせないということになります。

今はネタニヤフが首相だから、野党の人たちはサウジアラビアとの国交関係の樹立をやって、イスラエルは妥協しても良いと思っている人たちです。一番タカ派で首を縦に振らない人物がいるときにこそ、こういった政策ができやすいと思います。要するに拒否権行使グループが野党におらず与党に入っているので、与党としてこれをやらざるを得ないということを飲んだときに、野党は元々賛成ですからスムーズに通るという図式になるわけです。

ネタニヤフは個人的にスキャンダルをいっぱい抱えています。しかし、これが大きなチャンスであり、個人的に政治家としてサバイバルするためには、サウジアラビアとの国交樹立をやったら人気が出て支持率も上がるでしょう。彼が政治家としてのサバイバルを選べば、今まで言っていた政策を大転換して、サウジアラビアと手を握るということも十分にあり得ます。

そのためにはサウジアラビアに原子炉を作って将来、もしかしたら核武装するかもしれないという可能性も出てくるでしょう。それからパレスチナ問題の妥協をどうするのかということや、連立の中には大きな極右もいるということで、この辺りがどのようになっていくのかはわかりません。

しかし、今までイスラエルに過激な路線をとらせて、サウジアラビアやその他のアラブの国と握手をさせなかったイギリスの守旧派の力は確実に弱まっています。彼らは常に両方を操って戦争させるような政策をとってきました。その人たちの力が弱まっているということは事実です。

私はサウジアラビアとイスラエルが正式に国交を樹立する可能性は十分にあると思います。サウジアラビアとしてもイランと対抗上、ここでイスラエルと正式な国交を樹立して、その関係を固めてイランを孤立化させる戦略をとった方が良いでしょう。そういう中で自分たちの力伸ばしていくという合理的な戦略です。

いつまでもイスラエルを承認せず、存在すら認めないというのはあまりに非現実的すぎます。中東において一番力のある国はイスラエルです。そこと仲良くしていくということは、サウジとしてもいつまでも拒否をしつづけられない政策だと思います。これは中東全体の和平のためにも大変良いことです。今、そういうポジティブな変化も起きています。



9月20日に国連総会に行ったトルコのエルドアン大統領とイスラエルのネタニヤフ首相が会談をして、イスラエルからトルコへエネルギー(天然ガス)をパイプラインで輸出し、それをトルコ経由で欧州へ輸出することで合意し、2カ国が閣僚レベルで恒常的に協力体制を作ることで合意しました。これも画期的なことです。

ノルドストリーム2は駄目になってしまったのですが、地中海のイスラエルの領海の経済権益のある海底で、大量の天然ガスが取れており、これの開発が進んでいます。この天然ガスをパイプラインでトルコに輸出して、トルコ経由でヨーロッパに輸出するという道が開けてきました。これはトルコも国内で天然ガスをイスラエルから買うだろうし、ヨーロッパに輸出することにより欧州エネルギー事情も安定します。

ロシアもトルコを経由してパイプラインで、天然ガスをヨーロッパ輸出するというラインも持っているのですが、ロシアからはパイプラインでやっているなら使わないという方針にEUではなっています。しかし、イスラエルからであれば喜んで買うということで、これはヨーロッパの経済にとって大変良いことです。

イスラエルにもトルコにも大変良いことであり、両国の緊張関係も緩和するということになってきます。それからイスラエルとサウジアラビアの関係改善に関して、イスラエルの観光大臣に率いられた外交使節団が9月26日、サウジアラビアの首都リヤドで開催される国連世界観光会議に参加するために、サウジアラビアを訪問しました。イスラエルの大臣級の人物がサウジアラビアを公式訪問するのは初めてのことであり、確実に両国の距離が縮まっているということを表しています。



付随的に言っておきますと、アラブ首長国連邦(UAE)の中央銀行やドバイの国際金融センターの金融サービス庁やアブダビグローバルマーケットの金融サービス監督庁が集まって身元不明の法人に対しても規制をかけて、いろんな情報を開示してもらいましょうという動きがあります。

どういう情報を開示してもらって、どういうふうに具体的にやるのかということに関しての協議を9月26日に開始しました。タックスヘイブンでやりたい放題で、違法な税金逃れをやっている身元不明の会社が沢山あると言って世界中から非難されていたのです。そういうことではなく、ある程度の規制は入れていきましょうという良い動きになってきました。

ただし、このドバイ・アブダビを抱えるアラブ首長国連邦が去年の2月に発表していたのですが、今までなかったけどこれから法人税9%を取るようにしたのです。これは世界的に見ても非常に安い設定ですが、規制を今後やっていくということで、初めての会議を9月26日に開きました。中東の金融も正常化していくということで、タックスヘイブンでやりたい放題というのも徐々にできなくなってきています。

いずれにしても、イスラエルとトルコの天然ガス輸出を経由して、友好関係が深まるということが9月20日にあり、9月26日にイスラエルの観光大臣が使節団を率いてサウジアラビアを公式訪問したということで、着々と周辺関係国の関係改善は進んでいるのです。

特にサウジアラビアとの関係は非常に大きいと思います。イスラエルが天然ガス(エネルギー)を輸出して儲けるということで、経済の寄って立つスタンスがアラブの国と一緒になるということです。エネルギー価格が安定して高ければ、それが一番良いという立場になっていくわけですから、経済的な連携がしやすくなります。

今まで中東も周りの国では石油がどんどん出るのに対して、イスラエルだけエネルギーが出ませんでした。しかし、世界有数とも言われる大きな天然ガス田が地中海沖で見つかったことから、神はイスラエルを見捨てなかったということです。

そもそもハイテク国ですから、エネルギーがあれば怖いものはないので、イスラエルの経済もますます順調になるのではないでしょうか。他にも南部のネゲヴ砂漠には大量のシェールオイルがあるという話もあるので、これは今後のお楽しみにしておきましょう。



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