米国の世界戦略にとって日本は「要石」:230213情報
以前、地政学の観点から国際情勢を分析したことがありましたが(「地政学の視点で国際情勢を見る」)、今回はその応用として、極東の地図を南北さかさまにして、中国、北朝鮮、ロシアから日本を見るとどう見えるのかというお話をしました。
日本を激しく敵視する中国、北朝鮮、ロシアの三国からすれば、日本という国家だけでなく、「日本列島そのもの」が邪魔で邪魔でしょうがないということがよくわかると思います。
一方、視点を変えて、米国の立場から見ると、米国による世界秩序にとって日本は必要不可欠の存在になると、自衛隊元陸将の福山隆さんは語ります。具体的にどういうことかと言えば・・・。
日本はアメリカを支える上で極めて重要な地点である。
日本は米国が太平洋を超えてアジアに、さらにインド洋を超えて中東に軍事力を投影する際の戦略拠点の役割を担う。このような意味合いを込めて、米国防衛省は、日本の戦略的価値の重要性を説明する際によく「『キーストーン(要石)』に相当する」という言葉を使った。
また、冷戦時代は米国がソ連を封じ込める上で「不沈空母【※1】」と呼ばれることもあった。
【※1】1983年、レーガン大統領との初めての日米首脳会談で中曽根総理大臣は、日米両国は太平洋を挟む運命共同体という認識を表明。また米紙との会見で日本列島を不沈空母に見立てる発言をし、国会で論議を呼んだ。
いずれにせよ日本は、アジア太平洋地域から中東にわたる戦域に米軍戦力を投影する際のプラットフォームの役割を担った。
中国が台頭しつつある今日では、米国にとっての日本国・日本列島は、中国の太平洋進出を封じ込める「防波堤」ないしは「消波ブロック」の役割が期待できる。
日本列島は、中国が設定する
・第一列島線
(日本列島〜南西諸島〜
台湾〜フィリピンに至るライン)、
・第二列島線
(小笠原諸島〜グアム・サイパン〜
パプアニューギニアに至るライン)
の起点に当たり、米中にとって軍事戦略状の至高の要点となる。
もし、中国が第一列島線を突破することができても、日本が日米同盟を堅持する限りは、太平洋に進出する中国海空軍はその脇腹と背中を脅かされる体制となる。
すなわち、中国にとっては、日米関係が分断され、日本が中国サイドに寝返らない限り、アジア太平洋における完全な覇権は確立できないことになる。
このように、米国にとっての日本の価値は、日本人が思っている以上に高い。
日本人の中には、日米安保条約という片務条約で、一方的に米国から守ってもらっていると思い、卑屈になっている向きもあるが、日本人が考えている以上の利益を米国に与えていることを十分に理解すべきである。
日本から在日米軍基地を提供してもらっているおかげで、米国は地球の半分の地域に軍隊を投射できる態勢を与えられ、世界の覇者としてパクス・アメリカーナを維持し、ひいては米国の国益を維持・確保できるのだ。
もし米国が日本を失うことになれば、米国の世界戦略、特に対中戦略の基盤を失い、台湾の独立や韓国の存立も極めて困難になることだろう。
特にアジア正面においては、第一列島線はもとより、第二列島線の防衛・確保も困難となり、最悪の場合は、米国の最前線をハワイやグアムにまで後退させざるを得ないかもしれない。
地政学的に見て、アジア太平洋正面において日本は、米国の覇権を維持する上で不可欠の戦略的拠点である。
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