皆一様に「笑って笑って」と言うんだろうと言うんだが、誤解もはなはだしいのだ。
プロのモデルや芸能人の多くは決め顔やポージングをプロゆえに持っている。そういう意味では、
ど素人が写真を写しても一定のものは撮影できると思う。
ただ私個人としては、そういった時にはシャッターを押さない主義で、もちろん笑った顔が必要な時は
プロは笑顔に見える顔をするのだが、それでは誰でも写せるので本当の顔を引き出す為にいろいろと
策を弄した。スタジオ撮影ではモデルの決め顔のときは、赤外線のシンクロ装置だけを使ってから発光を
繰り返していて実際は何も撮影しない。ただストロボが光る時はシャッターが押されていると言う感覚は
撮影に慣れた人ならみなそう思うのである。最初のうちは、この空発光でテンポを作っていく。
しばらくして、「あ、フィルムが空だ」などというと「うそー」みたな反応がありその後の顔というのが自然な感じで
よいのだが、それは本当に一瞬01秒とかの世界になるので、ストロボは大容量の電源をできるだけ
最小限で発光させる必要がある。1秒チャージでは遅いのである。他にもいろんなことを試したが、
撮影拘束時間が決まっているとか、クライアントの意向もあるのではあるが、その「素」の顔をみせてあげると
よろこんでくれる人が多かった。
撮影なんて大体同じものだという想っている人が多いので「どの顔がいい?」とポジを見せると、その
素の顔を選ぶことが多い。
アイドルと言えば昔は、篠山紀信、或いは山岸伸、加納典明などが有名だけれど、後者の二人は
それぞれ武勇伝があり、加納典明はカメラを投げる、山岸伸は早撮りで5分で撮影終了なんてこともあった
そうだ。ただ、後者の二人はなぜだか、病などの経験があり今は全く別の写真を撮っている。
ちなみに、山岸伸のアシスタントをしていたのが大学の同期で、私の撮影などをみていて、或る日電話で
写真をやりたいと相談されて、麻布十番スタジオを紹介してアシスタントを経験した後山岸伸の専属
アシスタントになったのだ。ただ、独立したはずなのだが、検索しても名前がヒットしないのでどうなったのか
気にはなっている。