病気が原因で写真の道をあきらめたが、考えたら建築写真はできたかもしれない
私が師匠とあおいだのは、高井潔という建築カメラマンだ。
建築写真というのは、苦労して普通に見せるということが多いと思う。
今夜景がブームらしいが、人間が見ている夜景と同じに写すとしたら、実はかなり骨が折れるのだ
もっとも最近はデジカメでいろいろと便利になったのだが、厳密に言えばどこかの色を
犠牲にしているはずである。私が写していた頃は基本的にはシノゴである。
今キャノンのレンズで少しだけ補正できるものがあるが、補正は基本的にレンズ側と
フィルム側をライズやシフト、フォール、チルトなどしなければしっかりとしたものが
写せないのではないかとも考えている。建築写真で言うところのあおりの事である。
ただ、本当に撮影距離がないビルなどは、パースがあべこべになることもある。
いわゆる頭でっかちの写真だ。
無理にあおる必要はないが、私はジナーやホースマンなどどちらかといえば室内の
商品撮影に使うことが多い蛇腹がついたものを好んで使った。
引きが無いビルなどは広角蛇腹でイメージサークルぎりぎりのところまであおりを使ったが
ともかく建築は面白いの一言に尽きる。
屋内といっても、外光もあれば、タングステン、蛍光灯などさまざまな発色をするものが
混在している。蛍光灯などは、白色、昼光色、三波長などがあり、それを確かめて
補正フィルターをかえる。人間の目では白くしか見えないがポジフィルムを使うと
緑色に発色するのが蛍光管である。
ミノルタの色温度計を何度か使ってみたが、余りにも値がアバウトなので実用性には欠けた
ちなみに、タングステンフィルムを使い、全ての色に対して補正フィルターを決めて、
露光時間、相反則不規等によるカラーバランスの崩れなども織り込み。
何をどれだけ露光するか、計算機で計算して時間を決めていた。
だから4×5をもちいて、同じフィルムに6回露光などをするのが私の常識であった。
ただ、新築の場合は例えば最上階をといわるとそこまでエレベーターなんて動かないから、
全ての機材を持ち上げるだけで骨が折れた。というわけで、アシスタントにやらせておいたけど
当然ながら撮り直しはできない。けれどクライアントが喜んでくれるのが楽しみだ。
いろいろな物を写したが、なかには国宝級の建物などもあり、内部は当然三脚の足にカバーを
ぐるぐる巻いた。機材はすべてたたみのうえに並べておく(落ちて傷をつけたら大変なので)
ただ、電源がすくなくて難儀した。
土門拳が仏像を撮影する際に一日中その部屋にこもり太陽の光のまわりをみて
ベストなショットを写したという話がある。
しかし私はそんな大物ではないので、しかも僧侶などは写真はパシャで終わりだと思っている
ので結構プレッシャーになった。
長くなるので今回はここまで。