イタリアといえば、風情のある石畳も特徴のひとつです。
雨にぬれると滑りやすくなったり、
ピンヒールが挟まったり、
スーツケースを引くには
ぼこぼこで歩きにくかったりもするのですが
この石畳が建物と調和して、特に歴史的地区では
イタリアらしい雰囲気を醸し出しているのです。
この石畳も馬車で走っていた頃に比べると
磨耗が激しくなり、
現在では定期的に修理が必要になっています。
街中の特に車の通行量の多い場所では、
石畳を諦めて
アスファルト化しているところも多くなっていますが、
市民からはかなり不評だったりします。
フィレンツェのドゥオーモの裏側はバス通りですが、
ここはかろうじて石畳健在。
しかし、ちょうどドゥオーモ付属博物館前の石畳部分で
幅3メートル、長さ約8メートルにわたって
深さ約30センチほどの陥没を起こしており、
早急に手当てが必要となっています。
もちろんフィレンツェ歴史地区の一部で、
しかもドゥオーモの裏側ですから
これはきちんと石畳で修復されるべき部分なのですが、
ここでも経済的な理由で、
最悪の場合にはアスファルトで穴を塞ぐ
応急処置が取られる可能性が高くなってきました。
石畳要の石材を購入するだけの資金が
現在フィレンツェ市にないからというのが理由です。
フィレンツェの美術監督局も
そうした事情はよく理解しているとした上で、
やはり、場所が場所だけに、
石畳の改敷作業を行うように要請をしています。
美術監督局自体にも十分な資金がないので、
どちらが工事費用を負担するかという点でもまだ揉めています。
美術監督局によると
フィレンツェ市は緊急時のために
石畳用の石材をキープしているそうで
今回こそ、その石材を利用するときだと主張していますが、
フィレンツェ市は現在進めているオルトラルノ地区の
道路工事のために利用する分しか
残っていないと明らかにしており、
これもどちらを優先するのかで揉めているところです。
もちろんこれまでもサン・マルコ広場やカステッラーニ広場など
石畳での修復が望ましかった部分を
アスファルト舗装にした前例はあり
それについても市民からも嘆きの声が上がっているため
ドゥオーモ周辺でアスファルト舗装ということになった場合には
反対勢力の抵抗が予想されます。
経済的な問題だけでなく、石畳の敷きなおしとなると
その工事に要する時間は
アスファルト舗装の工事よりもはるかに長くなり
約50日間と見込まれています。
この工事期間、バス通りでもある問題の通りを
封鎖すること自体も考えられ
市民の足にも大きな影響を与えることなども懸念されています。
もともとドゥオーモ周辺の道路の修復を含めた整備というのは
かねてからのフィレンツェ市の議題となっており、
ドゥオーモ周辺からヴェッキオ宮殿、ウフィツィ美術館の裏を抜けて
アルノ川までの道路整備に必要な費用は
約70万ユーロと見積もられています。
残念ながら予算案ではこうした道路整備の予算が
大きく削られ(400万ユーロ減)、
また半分以上は現在フィレンツェで計画されている
トラム路線の整備に使われてしまうために
石畳を購入することができないという結果になっています。
文化遺産として保護する意味も含め、
この先10年近くかかるであろう
トラム計画にかける予算を削ってでも
ドゥオーモ周辺にきちんと石畳を敷きなおしたほうが
よいと思うのですが。
こんなところにも不景気の影響がひとつ。